店に並ぶやいなや、たいてい夕方には売り切れてしまうというこのご当地牛乳の正体は

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スイーツの主な材料といえば生クリーム、チーズ…。そう、牛乳が大きな役割を果たしています。

「ふらの牛乳はホモジナイズしていないので、牛乳本来の脂肪分やカルシウムがそのまま味わえます。」と話す、ふらの農産公社・代表取締役専務の山内孝夫さん

味で評判の富良野のスイーツに欠かせないのが「ふらの牛乳」。富良野だけで作られている、いわばご当地牛乳です。富良野でそのおいしさを知られるチーズもスイーツもほぼ100%、この「ふらの牛乳」が使われています。中には「富良野は牛乳が良いからスイーツがうまい」と断言する人がいるほど。あまり一般には知られていない「ふらの牛乳」のおいしさの秘密を探るべく、「ふらの農産公社」を訪ねました。

「ふらの牛乳」の特徴は「季節で変わる風味」と言われています。毎朝畜産農家から納入される生乳を、じっくり手間をかけて低温殺菌をすることで、牛乳が本来持っている味わいをキープ。夏は脂肪分が少なく、サッパリとした味わいに、冬は脂肪分が多く、濃厚で甘みのある風味を感じることができるといいます。まさに子牛が味わっている牛の母乳に近いものを飲んでいるというわけです。

ふらの農産公社・工場長の七宮恭一郎さんは「牛乳は母乳と同じ状態で飲んだ方が自然でおいしいし、栄養価も高い、という考え方なんですね。ウチでは65℃30分でゆっくり殺菌しています。高温で大量に一気に殺菌しすぎると悪い菌と一緒によい菌もタンパク質も脂肪も変質させて壊してしまうんです」と、低温殺菌が美味しさの理由の一つと語ります。

また、代表取締役専務の山内孝夫さんは「市販の牛乳の多くは、機械的に圧力をかけて牛乳をホモジナイズ(均質化)しますが、これによって牛乳の持つ本来の旨みや風味が失われてしまいます。ふらの牛乳はホモジナイズしていない(ノンホモジナイズ)ので、牛乳本来の脂肪分やカルシウムがそのまま味わえます。お腹がゴロゴロしにくいのも特徴なんですよ」と、その製法を明かしてくれました。

また、富良野は畜産農家のレベルが高い土地、とも言われ、牛の品評会などでは常に高い評価を得ることでも知られています。その理由の一つが、畜産農家が25軒ほどしかないからだ、とか。なぜ畜産農家が少ないといい生乳ができるのでしょう。山内さんはこのように説明します。「生産農家が少ないということはお互い助け合う習慣があるといいますか、よいノウハウを見つけたらすぐに全戸で共有するんです。牛がナイーブで生産がストレスに左右されることや、乳脂肪は平均的でもバランスを重視すべきこと、などは早くから情報が行き渡っていました」。

そんな「ふらの牛乳」を作っている唯一の拠点が、富良野市郊外の平屋の小さな会社「ふらの農産公社」。屋内には小さな工場があり、そこで瓶詰めまでほとんど手作業で牛乳を生産しています。品質にこだわる小規模生産のため、夏場の最盛期でも1日2トン程度が精一杯なのだといいます。でも、その手作りの少数生産こそが「ふらの牛乳」の質の高さをキープさせている理由なんですね。

「ふらの牛乳」は180mlで124円、900mlで432円。すべてビン売りです。富良野市内の富良野チーズ工房やフラノマルシェ、JAなどで買うことができます。でも、たいてい夕方には売り切れてしまいますので購入はお早めに。

隣接する富良野チーズ工房では他にも「ふらの牛乳」で作った加工品が売られています。牛乳をじっくり煮詰めた「ミルクジャム」(110g550円)はパンに塗ってもコーヒーや紅茶に入れてもおいしい一品。「バター」(70g370円)はまさに本物の味わい。その深いコクはトーストやパンケーキ、お菓子作りでもひと味違います。「フラノバターキャンディ」(150g432円)はちょっと懐かしいバター風味のキャンディ。一粒ほおばると豊かな甘味とバターの風味が口いっぱいに広がります。

富良野だからこそうまれた、ご当地牛乳「ふらの牛乳」。正直にまじめに作られた牛乳の旨さが、今やプレミアム感いっぱいの富良野のチーズやスイーツのおいしさを支えているんですね。

■住所:富良野市中五区 ■電話:0167・23・1156 ■時間:9:00 〜17:00、11〜3月は〜 16:00 ■料金:入場無料 ■休み:なし(年末年始、施設整備の休みあり) ※データは「富良野チーズ工房」のもの

【北海道Walker編集部】