糖尿病専門医に聞く。生活注意!? コレステロールのウソ・ホント

つい先日、健康診断で「コレステロール値が高めですね。生活に注意を……」と言われ、がく然としている32歳の男性ですが、そういえばこの頃、「アラサー世代のコレステロール値注意者は急増している」という情報をよく耳にします。

コレステロールにまつわる疑問について、糖尿病専門医で、『「腹やせ」が糖尿病に効く!』などの著書で動脈硬化について分かりやすく説明されている福田正博先生に、詳しいお話を伺いました。

■魚、オリーブオイル、エゴマ油がコレステロールを下げる

コレステロールと言えば、「血管にたまって動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞(こうそく)など命に関わる病気の原因になる」とのことですが、善玉・悪玉の話や、コレステロール値を下げる食品の話など、さまざまな情報があふれています。それに、「生活注意」とは一体どうすればいいのでしょうか。

疑問1 コレステロールには善玉と悪玉があるって本当ですか?

福田先生 本当です。コレステロールとは「脂質」のことで、脳や神経・血管壁の細胞膜を作ったり、ホルモンの材料となる成分を言います。体にとって不可欠なものですが、コレステロールが多すぎると血管の内壁に沈着し動脈硬化を起こします。

善玉と呼ばれるのは、「HDLコレステロール」のこと。血管の壁に沈着したコレステロールを肝臓に持ち帰る働きがあり、動脈硬化の進行を食い止めます。

他方で、悪玉と呼ばれる「LDLコレステロール」は、コレステロールを肝臓からからだの隅々へ運ぶ役割をしています。血管の壁に沈着して動脈硬化を起こすように働くため、「悪玉コレステロール」とも呼ばれています。正常値は、HDLコレステロールは40mg/dl以上、LDLコレステロールは139mg/dl以下です。

疑問2 コレステロールの高い人は卵を控えた方がいいって本当ですか?

福田先生 本当です。食べ過ぎないようにしましょう。卵はコレステロールが多い食品の代表で、卵1個(Mサイズ約60g)にコレステロールが約260mg含まれます。

日本の治療ガイドラインでは、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が多くなり過ぎている状態、または善玉コレステロールが少ない状態が続く脂質異常症の患者さんには、コレステロールを多く含む食品を「1日300mg以下」に控えるように勧められています。

卵以外にも、魚卵やマヨネーズ、レバー、イカ、タコ、エビにもコレステロールが多く含まれています。

すでに「コレステロール値が高い」と言われている人は、多く含む食品を控えめにするようにしましょう。

疑問3 ポテトチップスやマーガリンはコレステロールを増やす可能性があるって本当ですか?

福田先生 本当です。例えば、ポテトチップスは食品としてはコレステロールそのものは含んでいません。ですが、ポテトチップスには、体内でコレステロールを増やす働きがあるトランス脂肪酸を含む種類もあることを知っておきましょう。マーガリンや生クリームにもトランス脂肪酸を多く含むタイプがあります。食べ過ぎには気を付けてください。

コレステロールを多く含む食品ばかりを気にしがちですが、「体内のコレステロールを増やしやすい食品」もあるので、それを避けることが最も重要です。

血中のコレステロールを増やす食品として明らかになっているのが、飽和脂肪酸です。脂身の多い肉類や卵黄、バターやチーズなどの乳製品が代表例です。

反対に、体内のコレステロール値を下げる働きをするのは、不飽和脂肪酸を多く含む食品です。具体的には、魚、オリーブオイル、エゴマ油などです。

疑問4 ウォーキングがコレステロール値の改善に役立つって本当ですか?

福田先生 本当です。ウォーキングを継続すると、悪玉コレステロールが減少して善玉コレステロールが上昇することが報告されています。

運動をする時間がない場合でも、エレベーターではなく階段を使う、最寄りのバス停から一駅先まで歩く、車を使わずに駅まで歩くといった日常での工夫を積み重ねていくだけでOKです。

例え5分間のウォーキングでも、1日に数回実践すると脂肪は少しずつ燃えますし、コレステロール値の改善も期待できます。

最後に福田先生は「健診で要注意」と言われた場合、「体調は絶好調だから大丈夫と自己判断せずに、まずは健診結果をもって、かかりつけ医に相談しましょう。生活習慣病のほとんどは無症状です。これを放っておくと大きなツケが回ってきますよ」とアドバイスをします。

「おなかは出てきたけれど、30代だし動脈硬化やメタボなんて遠い話だ」と、根拠なく思っていました。これを機に、確かな情報を集めながら、生活習慣となにより自分の意識を改革しようと決意しました。

監修:福田正博氏。大阪府内科医会会長。医学博士。糖尿病専門医。ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。名医として数々のメディアで紹介され、著書に『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』、『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』(ともにアスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則 「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)、また最新刊の『専門医が考えた 糖尿病に効く「腹やせ」レシピ』(洋泉社)が、ヘルシーダイエットのための料理本として話題。

(白川一郎/ユンブル)