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高級ブランドが並ぶモンテーニュ通りの裏手にも、重々しい建物が、息をひそめるように続いている。その一角にある、ジャン・グジョン8番地の建物は、外見からだけではその趣を感じ取るとこは難しい。
ファッションデザイナーのマルタン・マルジェが、初めてホテルのデザインを手がけたとは、道行く人は教えてくれないだろう。だから、そっと扉を開いてみよう。

写真:© Martine Houghton

19世紀から存在した建物には、歴史がある。少し時代を近年にまで持ってくると、フランスのエリート育成高等機関であるエコール・サントラル・パリの所有であり、OB会や会議を開催するために使用されている。某ホテルグループが経営していたホテル棟も残し、改装工事を経て、旧館側には、マルジェラがデザインをした「クチュール」17寝室が新規にオープンした。エントランス、受付、白のサロン、シガースペース、回廊、レストラン、そして寝室へと誘導される各所に、床、壁面、素材、色彩などの配慮が、繊細かつ大胆に演出されている。

写真:© Martine Houghton

マルジェラが基調色とする白は、素材や質感により、多面性を持ち合わせる。旅をすることは常に新たな発見をする。そうした体験を詩的かつ芸術的な空間で過ごすことで、より好奇心を与えてくれる。パリ市内に滞在しながら、喧騒感から離れ、伝統的アパートの天井高3mの部屋で数日間を過ごしたら、我家に戻れなくなりそうな予感がする。

(取材・文 Kaoru URATA)

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