お笑いの世界に入って20年経つ牧野ステテコさん。女性芸人としての苦労や時代の変化も感じるところがあるそうです。(全3回中の3回)

【写真】「見つめ合って数センチ!」牧野ステテコさんとこよなく愛する相手とのツーショット(全14枚)

「売れている」と言われるのはインパクトが強いから

愛猫・ポテ太郎とのツーショット

── 最近、『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)などで、よく拝見しています。

ステテコさん:ありがたいことに、最近はゴールデンタイムのテレビ番組に出演させていただくようになりましたが、実際にはそんなには出てないんです。テレビのお話は不定期なので、出演が続くときがあれば、3~4か月空くときもあります。決して「売れてる」とは言いきれないんです。インパクトが大きいので、テレビによく出ている印象を持たれやすいんだと思います。

── たしかに3~4か月空いていても「またステテコさんが出てる」と思ってしまいますね。ちなみに、テレビの収録の際に気をつけていることはありますか?

ステテコさん:できるかどうかは横に置いといて、何個かギャグを持っていくようにはしています。あと、うまくいかなかったときは、帰りのタクシーでマネージャーと反省会をします。このときに「ここがダメだったよね」「こうしたらよかったよね」と、思ってることを全部吐き出して、吹っきるように。ただ、前の収録を忘れたぐらいに呼ばれるので、まだうまく感覚がつかめてないというのが実際のところです。テレビのお仕事に早く慣れたいですね。

男性芸人、女性芸人…ないものねだりかもしれません

──『水曜日のダウンタウン』では、男性芸人がたくさんいるなかで、爪痕をしっかり残されていて、本当にすごいと思いました。

ステテコさん:自分ではあまり意識していませんが、お笑いの世界は男性が圧倒的に多いので、基準が男性になっているところがあるかもしれません。たとえば、男女別の衣装室がないので、女性芸人は女子トイレで着替えるのが当たり前ですし、人によっては黒いハーフパンツをはいておいて、どこでも着替えられるようにしています。

何年も昔になりますが、半分ドッキリみたいなテレビの企画があって、ロケ中に急にレオタードを着ることになったことがありました。ハイレグのきわどいやつだったんで、そのときに「もし私が生理だったら、どうするつもりだったんだろう?」と思いました。たぶん、男性が企画しているから、そのへんのことまで考えが及ばないんだろうなとは思いますが。とはいえ、最近はお笑い業界もテレビ業界も、多様化や男女平等が進んでいる気がします。バラエティ番組の現場でも、女性のディレクターさんを見かけるようになりました。

登山歴は10年以上。女性向け登山専門誌『ランドネ』に登場したことも

── 少しずつ女性が活躍しやすい環境に変わりつつあるんですね。女性芸人でよかったと思うことはありますか?

ステテコさん:女性芸人は分母が少ないんで、この点はメリットだと思います。一方の男性芸人は、とにかく人数が多いので。その中で売れるのは本当に大変ですが、仲間意識が強くて、ネタも協力して作っている感じがするので、羨ましいなと思うことはあります。女性芸人は、プライベートでご飯を食べに行くくらい仲はいいのですが、ネタ相談をすることはほぼありません。男性芸人の結束感の強さが羨ましい反面、ちょうどいい距離感を保ちながら、ゆるくつながっている女性芸人のつき合い方も心地いいので、ないものねだりなのかもしれませんね。

40代オーバー芸人で「ババア流星群」を結成

── 女性芸人といえば、ステテコさんはこれまでずっと仲のいい女性芸人とルームシェアしてきたと聞きました。

ステテコさん:はい。いまは他事務所の若手の女性芸人とルームシェアしています。その前も別の女性芸人とルームシェアしていたんですが、彼女が結婚することになったんで、ルームシェアを解消しました。仲のいい女性芸人の結婚なので、嬉しい反面、寂しさもありましたね。前回のルームシェア解消では、彼女が飼っていた猫も一緒に出て行ったので喪失感が大きくて、ひとりで暮らしていくことが不安になりました。

毎回、彼氏との同棲や結婚が決まって出ていくことになり、そのたびに別の女芸人に引っ越して来てもらうというのを繰り返してるんですが、これがいつまで続くんだろうって…。ルームシェアしているときは楽しくていいんですが、最終的にはいなくなってしまうから、毎回寂しい思いをするんですよね。その気持ちを埋めようと思って、前回のルームシェア解消後に、私も猫を飼いはじめました。ポテ太郎という名前で、よく一緒にYouTubeにも出ています。この子がいるから、毎日頑張ろうと思えるのかもしれません。

── 素敵な相棒が日々の活力になっているのですね。最後に、今後の目標はありますか?

ステテコさん:直近でいうと、いま後輩のピン芸人のリクさん(リクロジー)と「ステゴンダ」というユニットを組んでいて、これから始まる『キングオブコント』と『M-1グランプリ』にエントリーする予定です。予選に向けて、ライブにもたくさん出ています。本当は、賞レースは苦手なんですが、賞レースがあることで生活にメリハリがつきます。最近は、賞レースに出ずにのんびり芸人をするよりも、賞レースに出て集中して芸人をする人生もいいかもしれないと思うようになりました。できれば、このコンビで、準々決勝・準々決勝までいきたいです。

後輩のピン芸人リクロジーとのユニット「ステゴンダ」

── では、長い目で見た場合の目標は?

ステテコさん:正直なところ、めちゃくちゃ売れたいとは思ってなくて、できればずっと楽しくお仕事を続けていきたいなと思っています。それが、仲のいい芸人さんと一緒の仕事だったら、いうことなしです。子どものころから体を動かすことが好きで、なおかつ、みんなでワイワイするのが好きなので、自転車、登山、フットサル、野球などを趣味でやっているのですが、こういったものから仕事に発展していったら嬉しいですね。最近は、「ババア流星群」という40オーバーの女芸人だけを集めたお笑いライブもしています。こういう楽しい仕事を大好きな仲間たちと、ずーっと続けていきたいと思っています。

PROFILE 牧野ステテコさん

まきの・すててこ。富山県出身。大学卒業後に、テレビ番組の制作会社へ入社。ADを経て芸人に転身。一度見たら忘れられない圧倒的なビジュアルが武器。アクティブな性格でアウトドア派、登山とロードバイクが一番の趣味かもめんたる槙尾さんが経営する「三軒茶屋カリガリ マキオカリー」でアルバイト中。

取材・文/安倍川モチ子 写真提供/牧野ステテコ(浅井企画)