異国情緒たっぷり。星野リゾートの温泉旅館【界 雲仙】でひたる歴史と文化と温泉の旅

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2022年11月にオープンした星野リゾートの温泉旅館【界 雲仙】。長崎といえば、鎖国時代から中国やオランダとの交易で花開いたエキゾチックな“和華蘭”文化と、大量の噴気を上げる荒涼とした火山性地帯“雲仙地獄”の温泉が知られます。東洋と西欧の文化が混じりあう異国情緒と温泉を、心行くまで満喫できるお宿です。

 

館内にちりばめられた“和華蘭”文化にひたる宿


その土地に息づく独特の文化やユニークな体験を用意する星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」。島原半島にある界 雲仙では“和華蘭”文化をはじめ、戦国時代から続くキリスト文化との結びつきをステンドグラスで表現するなど、長崎ならではの滞在を楽しめます。



▲標高700mにある雲仙温泉までは、長崎空港からクルマで90分ほど



▲ロビーに入った瞬間目にする雲仙地獄と和華蘭文化

館内に入ると目に飛び込むのが、窓の外にもうもうと立ち昇る雲仙地獄の水蒸気と、和華蘭を表す3つの照明。左から中国の広州柄(中国格子)、中央が日本の着物柄、右にオランダのチューリップや風車が描かれます。



▲ラウンジの窓辺に置かれたテーブル席からは池と地獄を眺望



▲トラベルライブラリーは雲仙ゆかりの書籍がそろい、フリードリンクを飲みながらくつろげる空間です

ラウンジやライブラリーにはベロア素材の赤や赤紫のソファが置かれ、レトロかつ異国情緒満点。一方壁の藍色は、お隣の島原市で生産される「島原木綿」。伝統の縦縞と深い青が印象に残ります。



▲スタッフのユニフォームの襟と袖は、ステンドグラスがモチーフ。館内いたるところで、ステンドグラスも目にします

界のユニフォームは全国共通ですが、襟と袖の折り返しは旅館ごとにその地の伝統やシンボルをデザイン。生地の断ち方で、スタッフ一人ひとりの模様がちがいます。



▲「湯小屋」の中にある大浴場でも、ステンドグラスに魅了されます <画像提供:界 雲仙>

雲仙地獄から引く温泉の湯面に、ステンドグラスがリフレクション。長崎ならではのお風呂を楽しめます。



▲客室の鍵も、ひとつひとつ手作りのステンドグラスがキーホルダー

 

温泉三昧を満喫できる「客室付き露天風呂」


51室ある客室は、全て地域の伝統や文化に触れられるご当地部屋「和華蘭の間」。洋室や露天風呂付き洋室のほか、客室付き露天風呂や広い特別室があり、ペットと泊まれる愛犬ルームも備えます。



▲廊下の照明は「長崎ハタ」の図案がモチーフ

長崎では凧上げをハタ上げと言い、その独特な絵柄が照明の傘を飾ります。さらに廊下に掲げられたルームナンバーは、活版印刷機で使われる活字がモチーフ。1590年に天正遣欧少年使節によって長崎にもたらされた日本初となる活版印刷術へのオマージュです。



▲あえて“露天風呂についた客室”という意味を込めた、お風呂が主人公の部屋「客室付き露天風呂」

42平米の「客室付き露天風呂」は窓の外が2人同時に入れるほどの露天風呂になっていて、八万地獄に向き合うテラスのような湯船と、ソファを置いた湯上がり処を広くとった定員2名の客室です。滞在中は湯浴みを存分に楽しめました。



▲温泉を引いた露天風呂と湯上がりスペース <画像提供:界 雲仙>

湯上がり処の床とソファは防水で、お風呂から出たままバスローブでごろっと寝転がるのんびり気ままなスペース。火照った身体のクールダウンにも最適です。ガーゼ生地のバスローブは、肌に触れる裏面がタオル生地になっていて、とても着心地がよかったです。



▲「長崎びいどろ」の照明も印象的

17世紀、ポルトガル人によって長崎にもたらされたガラスの製造技術。「客室付き露天風呂」のみ長崎びいどろ(ポルトガル語でガラスの意味)の照明が飾られ、いにしえの異国文化を感じられます。



▲「客室付き露天風呂」のパウダールームと、レインシャワーを備えたシャワーブース

 

もっとも広い「特別室」


界 雲仙の客室の中でもっとも広い85平米の和華蘭の間「特別室」。最大4名までの宿泊が可能です。



▲「特別室」に入ると、「波佐見焼」の器が飾られた廊下が目を惹きます

波佐見焼は、豊臣秀吉の朝鮮出兵から連れ帰った技術力の高い朝鮮人陶工たちが、大名の庇護で現在の波佐見町に開いた窯がそのルーツ。美しい白磁に藍色の絵付けが特徴で、近年は色使いも多様化。「特別室」に飾られたお皿は、長崎の凧「長崎ハタ」のシンプルモダンな絵柄が印象的です。



▲「特別室」には小上がりになったベッドとゆったりとしたソファスペースを用意



▲島原染めのアクセントウォールやソファのクッションなど青い色がコンセプト <写真提供:界 雲仙>

「島原木綿」のアクセントウォールがあるのは特別室だけ。クッションなども西洋風の風合いで、長崎らしい異文化交流を感じられる客室です。



▲広々としたテラスも「特別室」だからこそのしつらえ。外に向いたカウンター席は掘りごたつのように座り、噴気が上がる八万地獄を望めます



▲露天風呂からも八万地獄を一望



▲ダブルベイシンの洗面にはシャワーブースを併設。その奥が露天風呂です

ダブルベイシンの洗面は、最大4名まで泊まれる「角部屋洋室」と「特別室」の双方に備えます。

 

各客室で触れられる長崎文化


客室のしつらえや眺望、備品などにも、長崎の文化や世界との交流が感じられます。



▲すべての客室が八万地獄ビュー



▲ステンドグラスがモチーフの照明は和紙の優しい光。客室までアテンドしていただいたスタッフが和紅茶を注いでくれました。ウェルカムスイーツのカステラは、もちろん長崎の味



▲京都、仙台と並ぶ日本三大土人形のひとつ「古賀人形」

1592年から旧古賀村(現長崎市中里町)で作られている土人形は、赤や黄など鮮やかな原色が特徴。19代目となる小川憲一氏が1人で作る長崎県指定の伝統工芸品です。



▲アメニティが包まれた界オリジナルの風呂敷

施設ごとに色が異なる風呂敷は、湯小屋や食事処へ行くときの物入れなどに使えます。施設ごとに色が異なり、界 雲仙では地獄の湯けむりを思わせるようなグレーと青。しっかりした生地で色褪せもせず、普段使いができる逸品です。



▲界 雲仙では作務衣と浴衣が用意されます

 

活版印刷体験で旅の想い出作り


土地の文化を体験する界の「ご当地楽」では、火薬、羅針盤とならぶ世界三大発明のひとつ「活版印刷術」を体験します。長崎や島原のキリシタン大名たちによって派遣された天正遣欧少年使節が1590年に長崎に帰港し、ヨーロッパの活版印刷機をもたらした、いわば印刷技術伝来の地。好きな言葉をポストカードに印刷する人気のアクティビティです。



▲旅館へのチェックイン時、活版印刷を体験する方は受講時間を選び、銅板でできた素敵な予約札を受け取ります



▲活版印刷ゾーンの壁には、活字がずらりと並びます



▲宿のスタッフが、イラストを使って印刷の歴史を説明


▲金属製の“活字”と呼ばれる一種のハンコを選んで枠組みに並べ、文章を作ります。ご当地楽では20文字ほどの文章を作れます



▲組み合わせた活字を印刷機に取り付け、インクを付けて、力強くレバーを押し下げて印刷します <画像提供:界 雲仙>

宿には「っ」や「ぁ」といった小文字がないので、「とりつぷ」や「じやああにいい」となってしまいますが、それも味。お気に入りのお土産ができました



▲活版印刷のポストカードが完成。使った活字を元に戻して体験は終了です

 

戦国時代から世界に窓を開いていた長崎。開国後は外国人の保養地として発展した雲仙温泉。そんな異文化の交差点にある星野リゾートの温泉旅館【界 雲仙】では、日本はもとより、オランダ、ポルトガル、中国の文化が混じりあった、ユニークな歴史と体験が待っています。まさにグローバルな旅体験、刺激を受けてみてくださいね。<text&photo:湯川カオル子 予約・問:界 雲仙 https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiunzen/>