「またDMで連絡する」LINEを避け、インスタでやりとりしたがる彼。その理由とは…?
「彼って…私のこと、どう思っているんだろう」
連絡は取り合うし、ときにはデートだってする。
自分が、相手にとっての特別な存在だと感じることさえあるのに、“付き合おう”のひと言が出てこないのはどうして?
これは、片想い中の女性にとっては、少し残酷な物語。
イマイチ煮え切らない男性の実態を、暴いていこう。
▶前回:「怪しい…他の女といるの?」LINEは盛り上がるのに、電話には一切出ない彼の“事情”

本当は、彼のLINEを知りたいのだけれど…(真純・25歳の場合)
「じゃあ真純、またね!あとでさっきの写真送るね」
こちらに向かって手を振り去っていく美女は、大学時代からの親友・美那だ。
私たちは、月に1回はこうして顔を合わせて、近況報告をしあっている。といっても、最近は、お互いに仕事が忙しくて、グチに終始することも多いのだが―。
― 美那のハッキリ意見を言ってくれるところ、やっぱり好きだな。まだ、全然話し足りないよ。
彼女が送ってきた写真を眺めながら、余韻に浸る。秋晴れのテラス席での、2ショットが数枚。
― あ、この写真、インスタに載せよっと。
私は、早速美那のことをタグ付けして、お気に入りの1枚をストーリーズに投稿した。
そのわずか、数分後。
さっそく“いいね”をしてきたのは、瑛太。私が今、ちょっと気になっている相手だ。
知り合った日に、Instagramを相互フォローし合って以来、定期的にダイレクトメッセージのやり取りをしている。
― そろそろ、LINEを聞き出したいんだけどな…。今日、美那に相談すればよかった。
近頃、若者たちのあいだでは、LINEではなく、SNSのダイレクトメッセージがコミュニケーションのメインツールになりつつあるらしい。
ネットニュースで読んだのだけれど、私世代というか、私にはイマイチしっくりこない。
そもそも瑛太は、どっち派なのだろう。もし、私からLINEのIDを聞いたら、すんなりと教えてくれるのだろうか。
瑛太と出会ったのは、今から2ヶ月半ほど前のこと。
「えーっと、真純さんですよね?はじめまして。本日担当させてもらう瑛太です」
瑛太は、カットチェアをガラガラと移動させながらやってきた。
「あ、はい!美那からの紹介で。よろしくお願いします」
「美那ちゃんから連絡もらって、聞いてますよ!今日はカットとカラー、あとトリートメントですよね?」
実は、長らく担当してもらっていた美容師が地方で開業するらしく、退職してしまったのだ。それを美那に話したところ、紹介してくれたのが彼だった。
― 美那って、こんなイケメンに担当してもらってたの?ヤバい!タイプすぎて、おでこに汗かきそう…。
そう思って顔を上げると、ふと鏡越しに目が合ってドキッとした。
カットやカラーをするときの距離の近さにもいちいち緊張しながら、なんとか3時間をやり過ごす。
過去にも、イケメン美容師に担当してもらったことはある。けれど、瑛太はあまりにもド直球でタイプで、施術が終わるころには、妙に疲れていた。
そして、帰りしな―。

「仕上がりは、こんな感じだね。乾かすと自然に外ハネになるから、セットも簡単だよ」
「ありがとうございます。とっても気に入りました!」
「もしよかったら、写真撮らせてもらってもいいかな?インスタに投稿したいんだ。ダメだったら、全然気にしなくていいから」
「えっ、今ですか?…はい、大丈夫ですけど」
瑛太からの突然の申し出には、戸惑った。だが、彼と何かしらのつながりができることに嬉しい気持ちもあった私は、OKの返事をしたのだった。
「撮れたよ、すごくいい。この写真あとで投稿するから、見てみて。これが、僕のアカウント」
「はい!インスタ、フォローさせてもらってもいいですか?」
「もちろん。僕もフォローさせてもらうね」
こうして、Instagramをフォローし合った私たちは、お互いの投稿やストーリーズに“いいね”をしたり、DMでやりとりしたりするような仲になった。
◆
美那とのランチのあと、“いいね”をくれた瑛太のストーリーズを見る。
― あ、新しい投稿!今日は、ひとり映画からひとり焼肉って。ふふっ!
ヘアスタイルの投稿がメインの瑛太のInstagramだが、ふいに垣間見る私生活が微笑ましかった。
当然のように、翌月もサロンを予約。
Instagramでのやりとりのおかげが、初回よりもだいぶ緊張がほぐれて、会話もはずんだ。
その日の夜。
彼から、こんなメッセージが送られてきた。

瑛太:相談があるんだけど、真純ちゃんサロンモデルって興味ある?
真純:大学時代に、ちょっとだけやってました!最近は全然だけど、興味あります。
瑛太の相談とは、雑誌の“くびれヘア”特集の撮影が2週間後にあるから、モデルとして協力してほしいというものだった。
瑛太:ただ、仕込みと撮影で、丸2日予定を開けてもらわなくちゃいけないんだ。大丈夫?
真純:はい!でも、日にちや時間がわかったら、早めに教えてもらえると助かります。
こんなやり取りを、ダイレクトメッセージで何往復もしていると、ある考えが過った。
― DMって、わざわざインスタ開くの面倒…じゃない?LINEじゃダメなのかな。
次に彼と会うのは、1週間後の仕込みの日。
そのときに瑛太から、さりげなくLINEを聞き出そう。そう思ったのだが―。
瑛太と私のまわりには、いつもよりたくさんのアシスタントがついていて、さすがに今ではないなと察した。撮影当日なんて、なおさらだった。
しかし、すべての撮影が終了したあとに、チャンスがきた。少し早めの夕食を、瑛太とアシスタント、私の3人で食べることになったのだ。
夕食の席につくと、瑛太のアシスタントが、先ほどの撮影の様子を収めた写真を見せてくれた。
「このスタイルとか僕、すごく好きです。さすが、瑛太さん!」
「あー、これね!首もとのシースルー感がいいよね」
「この写真、LINEで送りますね」
アシスタントが言った「LINE」というワードに、とっさに反応する。
「あの、瑛太さん!その写真、私にもLINEしてもらうことってできますか?」
私は、ドキドキしながら、彼の返事を待った―。
「この写真…か。撮影の様子を撮ったものだから、難しいかな。ごめんね」
「…そうですか。残念」
「でも、雑誌が発売になったら、またDMで伝えるよ!」
― DM…ね。
LINEのことをうまく濁されたような気がした。
だがここで、アシスタントがいいフォローを入れてくれた。
「瑛太さんって、LINE全然しないんですよ!何日も既読にならないこともあるんですから」
すかさず、私も突っ込んだ質問をする。
「そうなんですか?でも、DMはわりと返信早いですよね?」
「いや、DMのほうが、相手の近況を知ったうえで連絡しやすかったりするから。LINEは、唐突感があって苦手なんだよ」
確かに、相手がよく投稿する人の場合、今・どこで何をしているかがわかると、メッセージを送るタイミングをはかりやすい。
どうやら、私が相手だからLINEを交換したくないというわけではなさそうだ。ほっととした私は、続ける。
「じゃあ、彼女ともLINEじゃなくて、DMなんですか?」
「さすがに、相手が彼女だったら考えるよ」
「まあ、瑛太さんはモテモテですからね!でも、僕が彼女だったら、心配になっちゃうな。インスタもキレイな人とばっかりつながってるし」
目の前で、指をパチンと鳴らされたような気がした。
― そう、それ!なにも私だけが特別扱いされているわけじゃないんだよね。キレイな人とばっかりつながっているし…。

1人で、とぼとぼと帰宅した後。
瑛太のInstagramを、改めて見てみる。
「フォロワー」にも「フォロー中」にも、華やかな女性がズラリと並んでいる。投稿に、意味深なコメントを書き残していく女性の面々もあった。
― やっぱりモテるんだな。これ以上、深入りしないほうがいいかも。早い段階で冷静になれてよかった…ってことにしよう。
◆
後日、美那に、瑛太をすこし気になっていたこと、しかし冷静になって身を引いたことを、一気に話した。
「ねえ、真純。それって、報告?それとも相談?」
「んー報告かな!いいなって思い始めてたけど、諦めることにしたって報告」
「それでよかったと思う。瑛太くんって、あの通りイケメンで人当たりもいいでしょ?お客さんにもファンが多いみたいだし。沼って、抜け出せてない女の人も多いと思うんだよね」
「確かにね」
こうして、私の片想いは、本格的に始まる前に終わった。
いつからか、ほんのちょっとしたことに引っかかって、恋を始めるのが難しくなってしまった気がする。
もしかしたら、このまま進んだ先には、私の悪い想像とは違った未来もあったかもしれないのに―。

LINEより、DMの“既読”のほうが重くないから(瑛太・29歳の場合)
近頃、若者たちのあいだでは、LINEではなく、SNSのダイレクトメッセージがコミュニケーションのメインツールになりつつある。
あるネット記事を読んで、激しく共感した。
― めちゃくちゃわかる!僕も、断然DM派だし。
僕にとってLINEというのは、緊急性や重要度の高い連絡をするためのツールだ。
それに仕事柄、SNSのDMのほうが都合がいい。
サロンに来てくれるお客さんと、打ち解けてきたとき。個人的なLINEの交換は考えものだが、Instagramでの相互フォローというつながり方なら、さして問題ないからだ。
こちら側としても、お客さんの普段のファッションやメイクの好みを知ることができるので、ヘアスタイルを考えるときの役に立つ。
…と、きれいごとを並べてみたが、正直に言おう。
連絡を取り合うことが主であるLINEの“既読”と、写真の投稿を楽しむツールであるInstagramの“既読”では、どうも重みが違うような気がするのだ。
LINEの既読からは、「どうして、読んだのに返信してこないの?」という圧を感じる。
一方で、SNSのダイレクトメッセージの既読は、心なしか少しカジュアルに取れるのだ。
前に、同じサロンの先輩が「Instagramの相互フォローは、女の子側の警戒心も強くないから、出会いのいいきっかけになる」だなんて言っていた。
僕も、女性の投稿を見て、鼻の下を伸ばすことはなくもないが…先輩と違って、そんなマッチングアプリのような使い方をするつもりはない。
ただ最近は、昔から僕を指名してくれている美那の友人・真純のInstagramの投稿を見るのを楽しみにしている。
僕より4つ年下で、金融系の仕事をしている彼女は、華やかな顔立ちではないのだが、そのおかげでどんなヘアスタイルもメイクも映える。美容師的にも、個人的にも好みなのだ。
真純となら、LINEでのやり取りもしてみたい。
しかし、彼女にLINEは苦手だと鼻息荒く言ってしまった手前、どうしたものかと物思いにふけっている。
▶前回:「怪しい…他の女といるの?」LINEは盛り上がるのに、電話には一切出ない彼の“事情”
▶1話目はこちら:既読スルーばかりのカレ。「熱がでた」と送ってみると、予想外の反応で…
▶NEXT:10月26日 水曜更新予定
次回、ついに最終話。キープのままじゃ、終われないっ!どうしても本命になりたい女が取った行動とは?

