「年齢を6歳サバ読みしていて…」真実を告白した瞬間、女が絶望した年下彼氏の反応とは
女は、いくつになっても若く見られたい。
特に自身の年齢にコンプレックスを持つ女たちは、エステやメイク、ファッションやヘアスタイル…。
誰よりも美容に気を使い、若く美しく見せることに必死になる。
おかげで、実年齢をうまくごまかすことはできるけど…。
―もう本当の年齢は、誰にも告げない。
そう決心したある女がいた。彼女は今日も鏡の前で、こうつぶやく。
「ねぇ。私、いくつに見えますか？」
サロンを経営している38歳の蘭子は、BARで33歳の純太と出会う。そして「年齢は32歳」と嘘をついたまま、交際を開始してしまった。
しかし罪悪感を持ったまま交際することに耐えられなくなった蘭子は、ついに自分の年齢を告白してしまい…？
▶前回：恋人と濃密な一夜を過ごした直後、部屋に突撃してきたヤバい女の正体とは
「私、32歳と言っていたけど実は38歳なの。もうすぐ39歳で…」
そう言って蘭子は、自宅の玄関前でうなだれた。
純太と共に、幸せな朝を迎えたはずだったのに。突如やって来た嵐のような来訪者が引き金となり、ついに本当のことを打ち明けたのだ。
「ちょっと、意味がよくわからないんだけど…」
突然の告白に、彼は混乱しているようだ。
「年齢をサバ読んでたの。ごめんなさい」
純太はその告白がにわかに信じられないようで、何度も「本当？」と繰り返している。蘭子は腹をくくって、自分の免許証を彼に差し出した。
『昭和57年3月9日』
彼は呆然と、書き込まれた生年月日を見つめている。
「でもなんで今、急にそんなこと…」
「急にじゃない。ずっと言おうと思ってた。だけどもう辛くて、我慢できなくて…」
以降の言葉が続かない蘭子を前に、純太は頭を抱えている。それからしばらく沈黙が続いた。時間にして1分ほど。だけど蘭子には、その時間が何十分にも思えた。
しかしその後、彼の口から聞こえてきたのは意外な言葉だったのだ。
「ありがとう…」
純太が蘭子に告げた「ありがとう」の意味とは
―えっ。ありがとう、ってどういうこと？
蘭子は不思議に思いながらも、真意を自ら尋ねる勇気は出ず、俯きながらその先を待つ。しかし、理由を説明するような言葉は返ってこなかった。
「もうすぐ仕事の時間だよね、失礼するよ」
気づくと純太は、帰り支度をしている。
「え、まだ少し時間あるけど…」
「また連絡する。今度、じっくり今後のことを話そう」
そうして引き留めようとする蘭子をよそに、彼は帰っていってしまった。
―仕方ないよね、突然こんなこと言われたら。でも、今後のことって…？
負い目もある蘭子は、逃げるように去った彼を責める気持ちにはなれなかった。しかしながら真綿で首を絞められているような、そんな気分だ。
「いっそ、噓つきだと責められたほうがラクだったのに…」
ずっと胸につかえていたことを告白したのに、さらに苦しくなるとは思いもよらなかった。
◆
「アリーナー！ノってる〜？」
「…なんのモノマネですか、それ」
翌日、蘭子は彩名を誘ってカラオケに来ていた。
部屋に入るなり、青春時代を彩った曲の数々を遠慮なく入れ、さながら自分のコンサートのように熱唱する。付き添ってくれた彼女は、その横で呆れた顔をしていた。
「アルコール無しでこれだけ盛り上がれるなんて、凄いです。全部知らない曲だけど…」
「もうヤケクソよ。思う存分歌わせて」
「やっぱり何かあったんですか？」
その言葉に蘭子は、待っていましたとばかりにマイクを置く。
予約していた曲もそのままに、箱根デートから桃香の来訪、そして年齢の告白とその反応まで、起きたこと全てを彩名に吐き出した。
「よかったですね、本当のことを言えて」
ひと通り話し終えた後、彼女は優しく微笑んでいた。その言葉に甘え、わかりやすく落ち込んで見せる。
「でも今後について話そうってことは、きっといい方向じゃないよね」
本当は彩名に「そんなことないよ」と勇気づけて欲しかったのだ。しかし彼女は、蘭子の意図を無視するかのようにバッサリと返答する。
「まあ、だったとしてもそんな男だってわかったんだから、いいじゃないですか。年齢で人を判断する奴なんて、こっちから願い下げですよ」
蘭子はその言葉の意味を理解しながらも、納得はできなかった。
「そうだけど…」
一理あるが、もし昨日の告白で気持ちが変化するのであれば、年齢以外の“別の理由”もあると思うのだ。…例えば“平気で嘘をつく人間である”と思われてしまったのではないか。
純太と出会って2か月。
たった2か月だが、互いに信頼を深めた間柄になれていたはずだ。それに彼は、純粋に自分を信じてくれていた。
―もう今後、何を言っても信頼してくれないだろうな。
ふと「蘭子からの手紙をいまだに持っている」というだけで、浮気を疑っていた桃香のことを思い出す。
彼女の言動から察するに、拓との結婚生活は、嘘や裏切りが当たり前なのかもしれない。
つまりもう桃香は、些細なことでも夫に不信感を抱くようになっているのだ。彼女も過去に嘘をついていたという負い目があるため、強く責めることもできないのだろう。
そんなことを考えながら沈んでいると、聞き覚えのある懐かしいイントロが流れてきた。
「蘭子さんに元気出して欲しいので、私も歌いますね！」
そう言うと、次は彩名がマイクを握ったのだった。
気分が晴れない蘭子に、純太から謎の連絡が…
彩名が歌いだしたのは、確か人気の若手女優が最近CMで口ずさんで話題になった、懐かしのJ-POPカバーソングだ。
その曲は蘭子が学生の頃に流行り、友人からCDを借りてMDに録音した記憶がある。
「懐かしいなあ。昔、よく聴いてたよ…」
彩名が歌い終わった途端、蘭子はボソッとつぶやいた。
「え、昔の曲なんですか？CMで知って、サブスクにあったからいい曲だなって何気なく聴いてただけなんで」
彼女の返答に改めてジェネレーションギャップを感じ、思わず笑いがこみあげてきた。
「ど、どうしたんですか」
「いや、もうトシだわ。ホンモノの若者にはかなわないなあ…」
「やっと、オバサンを自覚しましたね」
彩名のツッコミに、笑いながら「もー！！」と蘭子は声を上げる。今までずっと気を張っていたぶん、年齢イジリもどこか心地よかった。
「蘭子さん、カチューシャの唄ありますよ」
「それはさすがに世代が違いすぎるから！」
いつの間にか蘭子は声が枯れるほど歌い、思い切り笑っていた。そして年齢も、目じりのシワも気にせずはしゃげる友人の存在を、ありがたく感じるのだった。
カラオケを出ると、二人はカフェで軽く食事をとることにした。そこでおしゃべりを楽しんでいた時のこと。
蘭子のスマホがにわかに震えたのだ。その表示名に、思わず手が止まる。
「純太さんからLINEだ…」
メッセージを開けるか迷っていると、彩名が元気づけるように肩に手を置いてきた。
「大丈夫ですって。一度しか会ったことないですけど、印象としては蘭子さんをすぐに切り捨てるような人じゃないと思いますよ」
「そう見える？」
「はい。あの年齢の割に落ち着いてるし、蘭子さんを幸せにしてくれそうな包容力がある感じに見えました」
―まあ、そう言われればそうかも。
最初から純太を年下だと認識していたせいで、彼をそういうふうには見てこなかったが、言われると妙に納得してしまう。
純太だって、蘭子がずっとサバを読んでいたことに気づかなかった。だから年齢の感じ方は人それぞれで、実は印象づけたもの勝ちなのかもしれない。
そうして彩名に背中を押され、彼からのLINEを恐る恐る見てみることにした。
『もし近々時間があったら、僕の家に来てくれないかな。迎えに行くから』
表示されたのは、本来なら手放しで喜ぶほどのお誘いの言葉だ。しかし、蘭子はある言葉に引っかかった。
―どうして自宅に…？彼は確か、実家暮らしよね。
その言葉が意味するのは何なのか、まったく理解できない。
純太との関係の行方より、自分を家に誘うその真意に首をかしげたのだった。
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純太の家を訪れた蘭子は、秘められていた彼の人生を知ることになる…。
