大人が母乳を飲むと下痢になるってホント?

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以前、「上司がおなかを壊して病院に行ったら、医師に母乳を飲んだことがバレた」というようなツイートが投稿されて、巷で話題になりました。「そもそも、なぜ飲んだの?」という疑問は置いておいて、本当に大人が母乳を飲むと体調を崩すものなのでしょうか? むしろ大人が口にしてはいけないものを赤ちゃんが飲んでも大丈夫なものなの? そこで今回は、そんな母乳にまつわるウソ&ホントに迫りました!

■本日の「ソボクな疑問」

Q.大人が母乳を飲むと下痢になるってホント?

<読者の声>

・赤ちゃんが飲んで大丈夫なら大人も平気だと思う。(24歳/建設・土木/その他)
・栄養価が高すぎて体調を崩しそうだと思いました。(27歳/情報・IT/販売職・サービス系)
・聞いたことがない。むしろ大人が飲んで下痢になるものを赤ちゃんが飲んでも平気なんですか?(33歳/小売店/販売職・サービス系)

■尾西先生のアンサーは!?

答えは……
「ホント」です!

これは、牛乳や母乳に含まれる「乳糖(ラクトース)」と呼ばれる糖類の一種が関係しています。乳糖は、「ラクターゼ」という酵素が小腸で消化しているのですが、実は乳児を除く日本人の腸には、ラクターゼが少ないことがわかっています。

また、北欧の人などは年を取ってもラクターゼの活性が落ちないのですが、日本人はどんどん活性が落ちていきます。そのため、加齢とともに、消化不良や下痢などを起こす「乳糖不耐症」になりやすいのです。「子どものころは平気だったのに、大人になってから牛乳を飲むとおなかを壊すことが増えた」という人がいるのは、そのためです。

特に母乳は、牛乳の1.6倍ほど乳糖が含まれていますので、「牛乳は大丈夫でも、母乳を飲むと下痢になる」という可能性は十分にあります。また、ラクターゼがどのくらい活性しているかは人それぞれですので、少しだけなら問題なくても、その人が持つラクターゼが耐えられない量を越えれば、当然おなかを壊します。

ちなみに、市販のミルクも母乳に近く作られているので、乳糖も同じくらい含まれているはずです。一方で、ヨーグルトなど乳酸菌を含む乳製品は、作る段階で既に乳酸菌が乳糖を30%ほど分解してくれているので、乳糖不耐症の人が食べても大丈夫なことが多いですよ。

読者のコメントに「栄養価が高すぎて」とありますが、これは正しいともまちがっているとも言えません。というのも、牛乳と母乳を比べると、乳糖はたしかに母乳のほうが多いですが、脂肪分は同じですし、タンパク質は牛乳の半分、ミネラルは3分の1ほどです。ただ、赤ちゃんは最初に成長していくのが頭ですから、脳の働きを活発にして体を動かすエネルギーにもなる乳糖が多く含まれている母乳は、うまくできていると言えますね。

赤ちゃんがどんなものを口にしているのか、母としては気になりますから、母乳を一度は味見してみるのもいいかもしれません。ただ、以上のことを踏まえて、大人が飲むものではないことを頭に入れておきましょう。

(監修:尾西芳子、取材・文:ヨダヒロコ、撮影:masaco)

※次回の更新は10月1日(土)です。お楽しみに!