風力発電の騒音は本当に健康に悪いの?「いいえ ノーシーボ効果です」−ニュージーランド研究

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自然の力を利用した発電方法の需要が高まり、日本でも世界でも風力発電所が作られています。しかし、近隣住民からは「騒音で健康を害した」との声も。最新の研究で、これは「ノーシーボ効果」(プラシーボの逆、「病は気から」)らしいことが分かりました。

山や海岸沿いで、大きな風車を見かけることがあります。風力発電は、代表的なクリーンエネルギーの1つ。日本でも世界でも注目されている発電方法ですが、実は、近隣に住む人々からは「騒音で健康を害した」という声も上がっています。

風力発電は公害なのでしょうか?

風力発電の音と健康被害の関連については、これまでも多くの研究が行われてきました。その結論の大多数は「風車の音と健康に因果関係は認められない」というもの。2012年、Acoustics Australiaに発表された研究でも、風車の音は近隣海の波や交通、風の音よりも小さいという結論が出ています。

オークランド大学の最新の研究では、「風力発電による健康被害は、『ノーシーボ効果』らしい」という興味深い事実が明らかになりました。ノーシーボ効果とは、プラシーボ効果の逆バージョン。原因がないにも関わらず、思い込みで病気になってしまうというもの。

日本のことわざでも、「病は気から」なんて言ったりしますね。

研究チームは、60人を対象に、風車の音を聞かせる実験を行いました。被験者は2つのグループに分けられ、一方には騒音による健康被害を解説したDVDを、もう一方にはヒーリング効果を強調(風車の音は自然の風由来。

波の音に似ている、など)したDVDを見てもらいます。その後、7分間×2回、風車の音を聞いてもらい、心や体の状態についてのアンケートに答えてもらいました。

アンケートの内容は、24個の症状のうち、当てはまるものにチェックしてもらう、というもの。「耳鳴り」「頭痛」「疲れ」といったネガティブな項目が12個、「リラックス」「幸福」「元気」といったポジティブな項目が12個という内訳です。

この結果、健康被害のDVDを見た人にはネガティブな症状が、ヒーリング効果のDVDを見た日人には精神状態の向上がみられました。つまり、風力発電所の近くの住民の、「風力発電の騒音=健康被害」という思い込みが本人たちの病気や健康被害の原因なのではないか、というのです。

たしかに、可能性はありそうな話。しかし、24時間365日この音を聞き続けても同じ結論が出るのかというと、まだ疑問も残ります。少なくとも住民の不安や不満を取り除くケアは必要と言えそうです。

参考:How wind farms affect your health
http://www.nzherald.co.nz/lifestyle/news/article.cfm?c_id=6&objectid=11164625