「鶏白湯らぁめん」(860円)。スープは泡状に仕上げていて口当たりが軽やか。中央に盛られたクルミの食感とザクロの酸味がアクセントに

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2018年の東京ラーメン界のトレンドキーワードの一つが“逆輸入”。海外で成功を収めた店が続々凱旋を果たしている。そんな中、ついに真打ち登場。2016年に東京を飛び立ち、サンフラシスコで大成功を収めた「MENSHO SAN FRANCISCO」が7月13日に新宿にオープン。2年連続で「ミシュランUSA」に掲載され、デビッド・ベッカムをはじめ、多くのセレブも魅了している“REAL RAMEN”だ。

【写真を見る】国産の丸鶏とモミジ、さらには鶏ムネ肉を丸2日間かけて炊き、旨味を凝縮。丁寧にこして油や不純物を取り除いているので濁りは一切ない

■ アメリカ人をとりこにした濃厚クリーミーな「鶏白湯らぁめん」

「MENSHO SAN FRANCISCO」は、「麵や 庄の」(市ヶ谷)など都内で8店舗を展開する人気店「MENSHO」グループの海外1号店。同グループの代表の庄野智治さんが、自らサンフランシスコに渡り、2016年2月にオープンさせた。するとアメリカ人には馴染みがなかった鶏白湯(パイタン)ラーメンで人気が爆発。現在も終日行列が途絶えることはない。

その逆上陸店となる新宿ミロード店は、基本的にはサンフランシスコと同じメニューをラインアップ。現地で39ドル(+税15%)というハイプライスながら、連日早々に売れ切れてしまう「A5黒毛和牛醬油らぁめん」(1,950円)をはじめ、魅惑のメニューがそろう。なかでも一押しはもちろん「鶏白湯らぁめん」(860円)。

スープは丸鶏とモミジ(鶏の足)がベースで、水1リットルに対して同量(1kg)を合わせ、トータル2日間かけて炊き上げている。また、途中から鶏ムネ肉を加えるのもポイント。そうすることで肉自体の旨味も溶け出し、より厚みのあるスープに。それでいてスープを仕込む過程で出る余計な油を取り除いているので、くどさはまったくない。仕上げに豆乳クリームをブレンドすることでコクを出している。まろやかな塩ダレは、塩麹の自然な甘みが特徴。濃厚な旨味とスッキリとした後味のバランスが絶妙なスープを引き立てる。

これだけでもかなりの完成度だが、さらなる仕掛けが。それがスープの表面に振りかけられた粉醬油だ。香川・小豆島産の「かめびし醬油」の3年熟成もので、醬油ならではの深い風味が特徴。クリーミーなスープをキリっと引き締め、和のテイストも感じさせてくれる。

【ラーメンデータ】<麺>中太/平打/ストレート+手もみ <スープ>タレ:塩 仕上油:なし 種類:丸鶏

■ “地産地消”をコンセプトに、日本仕様にチューンアップ

そしてスープとともにもう一つのこだわりが、“キヌア麺”と名付けられた自家製麺。石臼で挽いた岩手産のブランド小麦「ユキチカラ」に、特別な穀物を合わせている。それが“キヌア”。必須アミノ酸をバランスよく含み、栄養価が高い。それでいてローカロリーで、近年はスーパーフードとして日本でも注目されている。

形状は中太平打ちで、加水率はやや高め。スープとより絡むよう、茹でる直前に手でもみこんでいるのもポイント。プルプルとした食感が心地よく、噛むと石臼挽きならではの小麦の豊かな風味が広がっていく。

“ラーメンクリエーター”の肩書きを持つ庄野さんが、店のコンセプトとして掲げているのが“地産地消”。「キヌアはインカ帝国(15〜16世紀)の頃から、アメリカ西海岸で栽培されていたという文献も残っていて、サンフランシスコの“地産地消”を表現するために採用しました」。

その一方でここ新宿ミロード店では日本の“地産地消”も散りばめ、厳密にはサンフランシスコ本店とは異なるラーメンに仕上げている。その一例が丸鶏やチャーシュー、塩ダレなど。本店はそれぞれ北米産だが、こちらはすべて厳選した国産を用いている。

さらに味付けや細部のパーツなども巧みに変えて、サンフランシスコからの逆上陸店でありながら、その味をそのまま提供するのではなく、日本仕様にチューンアップ。それこそが「商品のコピーペーストはしない」という庄野さんのポリシーでもある。そんな“ラーメンクリエーター”のこだわりが詰まった一杯をぜひ堪能してほしい。(東京ウォーカー・取材・文=河合哲治郎/撮影=岩堀和彦)