「美瑛放牧酪農場」/牧草地の斜面を行列をなして牛舎へ戻っていく牛

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午後2時半を過ぎた頃です。牛追いの合図に応えるようにして、牛たちがいっせいになだらかな牧草地の斜面を行列を為して横切って行きました。毎日、この時間になると放牧から搾乳室へ戻って来るのですが、牛たちもそれを心得ているとでもいうのでしょうか。一頭だけ列からはみ出したり、途中で立ち止まったりするような光景はまったくなし。一目散に搾乳室へ向かうその様に、迷いは感じられません。

「美瑛放牧酪農場」/いっせいに牛舎へ戻る牛

「美瑛放牧酪農場」は2008年から、大いなる理想を掲げてこの地で牧場経営を始めています。飼っている牛は、ジャージー、ブラウンスイス、ホルスタインの3種類で約100頭。目指しているのは自然の味で、それを実現するための第一歩が“放牧”です。1日2回の搾乳以外の時間帯は、夏でも冬でもずっと放牧。のびのびとした環境で飼っています。このスタイルを採用したのは自然の中で育った牛から乳を搾り、そして、それを素にして乳製品を製造したいと考えているから。目指すは酪農大国・フランスの乳製品に匹敵するような品質、という理想があります。

こうして育まれた牛の生乳は、季節によって味わいも異なります。青々とした草をはんでいることもあって、夏場は瑞々しくて香りが高いのが特徴。対して、干し草を食べている冬場は、その味わいも濃厚だといいます。

この生乳をベースに、この牧場ならではの乳製品が数々生まれています。その代表格が63℃で30分の時間をかけて殺菌を施した「低殺菌牛乳」180ml瓶(320円)、「飲むヨーグルト」(300円)、そして、「ソフトクリーム」(コーン400円・カップ360円・ミニ250円)です。

「ソフトクリーム」は、使用する原料が牛乳とビート糖のみというシンプルなもので、その分、牛乳の香りが味の決め手になっています。その味をより高めてくれるのがコーンで、こちらは美瑛産の小麦を使用して一枚一枚焼き上げた自家製のもの。クリームとの相性もバッチリです。それを目当てに訪れる来場者もいて、時間帯によっては売り切れ御免になってしまうほどの人気です。そのほか、生乳の特徴を生かして、卵不使用の「ミルクプリン」(350円)や有塩バター(140g・700円)などの製造、販売も手掛けています。

牧場の敷地は約24万平方メートル。敷地内に設けられた散策道を上ると、一面に広がる牧草地と美瑛ならではの丘景色が一望できます。晴れた日には牛の気分になって、緑の絨毯の上を歩いてみるのもいいかもしれません。

美瑛放牧酪農場 ■住所:美瑛町字新星平和5235 ■電話:0166・68・6777 ■時間:10:00〜17:00 ■休み:火曜(祝日の場合は翌日)、冬期休業 ■席数:10席(禁煙)

【北海道ウォーカー編集部】