「寝不足の朝。気分はドヨーン、身体もドヨヨ〜ンとしています。なんとか気持ちをアゲるためにコーヒーをガブガブ飲むのですが、目が覚めてくると、今度は甘いものが食べたくなります。チョコレートとかドーナツとか。あと、カップラーメンとかチップス類。ヤバイと思っているのですが、やめられません。睡眠不足が続くと太ると聞いたのですが、本当ですか?」(佐藤今日子さん・仮名・25歳)というご質問です。これは思い当たる方、多いのでは!?友野なおさんに聞いてみました。

寝不足が食欲を増やしている原因

女性にとってダイエットは常に気になるところ。実は、睡眠と食欲には深い関係があります。睡眠不足は肥満の原因になるということが、科学的にも明らかになっているのです。

アメリカのコロンビア大学の研究グループが追跡調査を行なった結果では、7〜9時間睡眠者の人と比べて、4時間以下の睡眠者の肥満度は73%も高く、5時間睡眠者の肥満度は50%も高いという結果が報告されています。

また、スタンフォード大学医学部が30〜60歳の男女1024名を対象に行なった疫学調査では、5時間睡眠者は8時間睡眠者と比べて血中グレリン(食欲増進ホルモン)が14.9%増加し、血中レプチン(食欲抑制ホルモン)が15.5%減少することが判明しました。

つまり、睡眠不足は「食べたい!」という食欲を強くし、「お腹いっぱい」というシグナルをホルモンレベルから弱めてしまう、ということになるのです。寝不足だと太ってしまうという事実も、どんなに気合で食事制限をして痩せようと思っても難しいという事実も、これなら容易に納得できますよね。

また、単純に食欲が上がるだけでなく、太りやすい糖質や脂質に対する欲求が強くなることも明らかになっています。お菓子やラーメン、ジャンクフードなど、寝不足だとついつい手が伸びてしまうという経験、みなさんにもあるのではないでしょうか? ダイエットのためには、まず睡眠時間を確保することが大切なのです。

睡眠時間をダイエット時間にするには?

睡眠時間が短かったり、質が悪かったりすると、基礎代謝が落ちて太りやすい体になってしまいます。さらに、糖質や脂質の代謝も悪くなるうえ、活動量が低くなる傾向があるため、余ったエネルギーはどんどん贅肉として体に蓄えられてしまうのです。逆にいうと、質の高い睡眠を十分に取ることがエネルギーの代謝を高めます。

まずは、適切な睡眠時間をとるように意識するところから始めましょう。その上で、質もしっかりと確保できるように、寝具環境を見直したり、お風呂に全身しっかりと浸かったり、就寝前にストレッチをしたりすること。睡眠時間をダイエット時間に切り替えることができれば、自然と暴飲暴食の習慣がなくなり、ストレスなく、そしてお金をかけることもなくスムーズに痩せることができるようになります。

最近太り気味だな、と気になっている人は、食事制限やサプリメント、ジムやエステ通いの前に、まず睡眠時間を見直してみてください。

仕事にプライベートになにかと忙しいと思いますが、睡眠は健康の基盤。きちんと眠って、肥満体質を解消し、ダイエットを繰り返す日々とはサヨナラしましょう。

疲れると甘いものが食べたくなります。睡眠不足でお疲れ気味の日も食べたくなりますね。



■賢人のまとめ
睡眠時間が少ないと太りやすくなることは、科学的に証明されています。寝不足が続くと食欲増進ホルモンが多く分泌され、食欲コントロールがしにくくなるからです。最近、太り気味……という方、まずしっかり眠ることをめざしましょう。

■プロフィール

睡眠の賢人 友野なお

睡眠を改善したことにより体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。
科学でわかるねむりの環境・空間ラボ主宰。著書に『やすみかたの教科書』(主婦の友社)など。