「ちょっとでもグラウンドに立てたんだからいいじゃない?」というところで話が終わらないといいなぁ。

心の奥底に澱のように溜まるもやもやを、上から目線でセラピっていく「女のもやもやセラピー」。今回のテーマは「女のレジスタンス」です。

大分県の夏の甲子園代表校の女子マネが、開幕前の甲子園球場練習中にグラウンドに立ち入り、大会関係者から退場を告げられたということが話題になっています。

もともと、高校野球は女子に排他的で、これまでも女子野球部員は公式戦に出られないとか、スコアボード担当の女子マネがベンチにすら入れてもらえないとかニュースになっていたこともあってか、大会関係者の「危険だから」という説明も女性差別! 時代錯誤! と大いに盛り上がっています。

とはいえ、高校野球のときの甲子園のグラウンドは、相撲の土俵や歌舞伎の舞台のようにむかーしから女人禁制っぽい位置付けにありました。だから、ヘンなのー、と思いながらも高校野球は「そういう文化でこれまでずっとやってきたもの」という認識でいました。

しかし、それが受け入れられる人がやればいいし、嫌な人は関わらなければいいんでは?  というのは、高校野球に『熱闘甲子園』は楽しみだけど特にどのチームにという思い入れはなく、たまたまテレビをつけたときにやっている場合は負けている方を応援する、という程度の温度しか持ち合わせていない私のような者の気持ちでしかないんですよね。このニュースが話題になったことで、当事者の方々におかれましては「高校野球が大好きだからこそ、“女子ダメ”ルールはおかしいと思う」と、常日頃もやもやしている人は多かったのではと、しみじみ思いました。そこで起こったこのレジスタンス。

大分の、その学校の監督だって、高校野球の“女子が甲子園のグラウンドに入ってはいけないという雰囲気”は少なくとも感じ取っていたはずです。「試合中じゃなくて練習だし」とか「規約には男女の明記はないし」とかいう自己判断は、かなりご自身の中で強引に納得しているように思えてなりません。

保身と確実性をとるなら高野連に確認、という行動になったはずです。でも、聞いたらダメって言われちゃうに決まっているから、あえてしなかったのではと勘ぐってしまいます。
高校野球の知識ゼロの素人だって高野連がいいって言うとは思えない、ってくらい高野連は「お堅い」印象ですから。

3年間、自分のクラシックバレエの道を断念してまで部を支え、甲子園に導いてくれた彼女を、他の部員たちと同じくグラウンドに立たせてあげたかったという言葉は情熱的です。グラウンドに入るにはユニフォーム着用が必要(規約に書いてあるんだそう)だからと、わざわざこの日のために新調してあげたというのもドラマです。これを下敷きに青春映画か連ドラが1本作れるんじゃないかと思うほどです。女子マネに甲子園の土を踏んでもらうために、野球部員(←ここに監督が入っていない方がドラマ的にはいいかも)が起こした奇跡のレジスタンス、的な。

退場を促されたマネージャーの女の子も「やっぱりダメでした」と発言されているとのことですから、本人も“ダメもと”で臨んだのでしょう。ガッツあります。さすが、中学卒業時の答辞で「私が部員を甲子園に連れていきます!」と宣言したというだけのことはある。人気者なんだろうなぁ。代表で答辞を読むくらいだから学業も優秀なんだろうし、かわいらしいし、スタイルもいいし。しかも、女子マネができるマインド。最強ーー。

もとい。

そして、これだけ話題にもなりました。

話題になったことは本人にとってはいい迷惑かもしれません。ですから、親世代のこちら側としては、彼女には、ぜひとも高校生活のいい思い出のひとつとしてだけ残りますようにと願うことしきりですが、俯瞰でこの一件を眺めるに、不当な女子排他制度に異を唱えるひとつの入口になるんじゃないかしらと期待せずにはいられません。

 確かに「神聖な場所」とされるところで、女性、あるいは男性の立ち入りが禁止されているところはありますし、女性トイレとか女性用お風呂とか、男性が(その逆も)しれっと入ってきたら絶叫しそうな区分もあります。それはそれでよし。でも、前例がないとか、規則だからとかで、え、それも? っていう「女子だからダメ」も多いように思うのです。

そういうときには、レジスタンス的な行為も必要なのかなって。変えたいと思っているのに突破口を開かず、もやもやしながら現状に甘んじているのは、精神衛生上もよくないと思うし。でも、ルールを変えるための行動を起こすのって、年が上がれば上がるほど、めんどくさくなったり、勇気がでなかったりするんですよね…。

だからこそ、「やっぱりダメでした」と笑顔で答えたという彼女がまぶしく思えるだよなー。

あ、でも監督はこの件を「私の完全なる認識違いでした」と平謝りされていらっしゃったとのことで、レジスタンスっていうのは完全なる個人的な思い込みなのでどうぞご容赦を。

さて、独身OLも日々社会の「女子だからダメ。」現象にもやもやしています。あずき総研のリアル独身OLインタビューはその2で公開

■プロフィール

 白玉あずき

東京都出身。清泉女子大学卒。学生時代より活字メディアに携わり、四半世紀にわたり女性のおしゃれと恋愛とダイエットについて考察、記事にする。現在は雑誌や単行本の編集、制作に加え、女性コンテンツのプロデュースやディレクションなど多分野で活動。最近の生きるテーマは社会貢献と女性支援。