若い女性に多い「バセドウ病」や「橋本病」に気がつくためには?

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季節の変わり目は、なにかと体に不調が出やすい時期。でも、「体が重くてだるい」「座っていても胸がドキドキして脈拍が早くなる」などの症状は甲状腺にトラブルが起きている可能性もあるそう。実は働く女性にも身近な甲状腺の病気について、甲状腺疾患専門病院として知られる伊藤病院の吉原愛先生に聞きました。

■皮膚科や婦人科の病気と間違われやすい甲状腺疾患の初期症状

「甲状腺はのど仏のすぐ下にあり、甲状腺ホルモンを体中に送り出す臓器です。甲状腺ホルモンは新陳代謝の維持・調節などを行い、その量が多すぎたり少なすぎたりすると体の調子が悪くなります。甲状腺疾患の患者数は女性が男性の約4倍を占めます。日本人女性の30人に1人が何らかの甲状腺トラブルを抱えていると言われ、不妊の原因になることもあります」(吉原先生)

甲状腺の病気の中でも患者数が多いのがバセドウ病と橋本病。バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰になることで不調をもたらします。一方、橋本病は甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモンが不足するのが特徴です。若い女性にも多く見られ、伊藤病院ではバセドウ病の50%弱、橋本病の40%近くを20代30代女性が占めているとか。

「バセドウ病は、甲状腺ホルモンの影響で体全体の代謝が高まります。『安静にしても胸がドキドキしたり、脈拍が早くなる』『食事量は変わらないのに体重が減っていく』などの症状で受診される方が多いですね。一方の橋本病は代謝が低下し、『体がだるく、気分が落ち込みやすい』『手足のむくみや首の腫れ』といった症状が見られます」(吉原先生)

上記のような症状の多くはほかの病気でも起こりうるため、皮膚科や一般内科、婦人科を最初に受診するケースが少なくないとか。

「特に橋本病は、うつ病などの精神疾患と間違われやすいですね。甲状腺ホルモンの異常を知るには血液検査が必須。なかなか症状がよくならないので血液検査を行った結果、甲状腺ホルモンが原因だとわかるケースもあります。うつ症状や体のだるさが改善されないなどと感じたら、甲状腺の病気を疑ってみることをおすすめします」(吉原先生)

■甲状腺疾患の治療中でも妊娠・出産は可能

甲状腺ホルモンは女性ホルモンと密接な関係にあります。甲状腺ホルモンの異常を放置すると、排卵や月経周期にも影響を及ぼすそう。

「甲状腺機能が正常域から少し外れるだけでも流産に影響する可能性があるといわれています。ここ数年、当院でも妊娠・出産を希望する方の甲状腺ホルモン検査が増えている印象があります」(吉原先生)

バセドウ病・橋本病をはじめとする甲状腺の病気の原因や発症のメカニズムはわかっていません。ただし、医師の指導のもと、薬を服用すれば通院治療で多くの症状を改善できるそう。

「バセドウ病の場合症状が落ち着くまではお酒や激しい運動は控えたほうがいいですが、治療中でもほぼ普段通りの生活を送ることができます。また治療中であっても、甲状腺ホルモンの値が整えば、妊娠・出産が可能です。ただ、妊娠中は服用に注意が必要な薬もあるため、妊娠の可能性がある場合は主治医に相談してください」(吉原先生)

(齋藤純子+ガールズ健康ラボ)