LGBTアクティビストの東小雪です。2年前に東京ディズニーシーで、日本のディズニーとしては初となる同性結婚式を挙げて以来、「新しい家族のかたち」について発信を続けています。

東京ディズニーシーのヴェネツィアン・ゴンドラにて

今年6月のNYプライドパレードにて
(c)Photo: ANIMALHOUSE/稲垣正倫

今回は、日本ではまだあまり知られていないレズビアンマザーとゲイファザーの家族について、ニューヨークで出会った4つの家族の例からお伝えしたいと思います。

お会いしたのは以下の4家族。

1.国際養子縁組で子どもを迎えたレズビアンマザーの家族
2.親戚からの精子提供で子どもを産んだレズビアンマザーの家族
3.精子バンクからの精子提供で子どもを産んだレズビアンマザーの家族
4.代理母出産で子どもを授かったゲイファザーの家族

いずれも、日本では普段ほとんど接することがない「新しい家族のかたち」だと思います。一緒にみていきましょう。

1.国際養子縁組で子どもを迎えたレズビアンマザーの家族

ご家族と記念写真

ニューヨーク郊外に暮らすレズビアンカップルのアンジェリーヌさん&スーザンさんは、娘さんを2歳のときに中国から養子として迎えました。「身体的な理由から子どもを持てなかったの。16年前に養子縁組のために中国まで迎えにいったのよ」と話してくれました。アンジェリーナさんは1998年から、子どもを育てるレズビアン&ゲイのための雑誌『Gay Parent Magazine』を発行し続けています。

『Gay Parent Magazine』

日本の現行の法律では、特別養子縁組で養子を迎えられるのは「婚姻した男女」に限定されているので、レズビアンカップルやゲイカップルが子どもを育てたいと思っても、特別養子縁組で子どもを持つことはできません。そして国際養子縁組の制度は日本にはありません。

日本では養子縁組で子どもを迎えても、両親が子どもにその事実を伝えていないことも多く、伝えていたとしても親子の血がつながっていないことをポジティブに語られることは、まだあまりありません。

ですが、3人はとても「普通」の家族。ご自宅には3人の素敵な家族写真がたくさん飾られていました。幸せそうなご家族を前に、日本の「常識」が頭にあった私は、驚いてしまいました。

私が娘さんに「日本では『レズビアンの子どもはかわいそう』と言われてしまうのだけれど……」と話しかけると、「私は不幸せじゃないわ」ときっぱり。「家族って、誰と生きるか。血のつながりじゃない。これが私の家族よ」と笑顔で答えてくれました。

2.親戚からの精子提供で子どもを産んだレズビアンマザーの家族

ニューヨーク郊外にお住まいのアリさん&エイミーさんはともに学校の先生。アリさんは生徒数の多い学校で、カミングアウトして働いています。お子さんは、6歳と2歳の男の子。

子どもたちと

上の子は、アリさんの叔父さんから精子提供を受けてエイミーさんが出産。下の子は、精子バンクから精子提供を受けて、アリさんが出産ということで、それぞれ1人ずつ。

どんな質問にも丁寧に答えてくれたおふたり

 

アメリカンスタイルの心のこもったおもてなしに感激

「身内からの精子提供にしたのは、最初は血のつながりにこだわる気持ちがあったから」と語ってくれたアリさん。「だけど家族になって時間を過ごすうちに、血のつながりは関係ないと思えた」のだそう。

そして2人目のときには精子バンクを利用。子どもの「出自を知る権利」が保障されるように、子どもが18歳になったら、ドナーの情報を知ることができる精子を選びました。精子を選ぶ際にはドナーの肉声の録音を聞いて、ドナーの声や話し方も参考にしたのだとか。

子どもたちはまだ小さいので、精子提供についてどこまで理解しているかはわからないけれど、精子提供について描かれた絵本を読み聞かせたり、ことあるごとに話をするなどして、すでに「どうやって生まれたか」について教えているとのことでした。

レズビアンマザーの絵本

多様な家族の絵本

長男のときの、叔父からの精子提供はとにかくいろいろと大変だったそうです。病院で人工授精にトライしていたけれど、最終的には自宅でDo It Yourself(シリンジを使っての人工授精)で妊娠したことを教えてくれました。ドナーである叔父さんは離れたところに住んでいるのですが、年に数回は子どもたちとも会っています。

3.精子バンクからの精子提供で子どもを産んだレズビアンマザーの家族

優しい笑顔に包まれた4人家族

アリさん&エイミーさんとご近所づきあいをしている、クリスさん&コリーンさん家族。クリスさんが日系なのでドナーは日本人を選んだそうです。

「私たちが選んだ精子がアノニマス(匿名)であることについては、今でもときどき悩みます。もう悩んでも仕方がないことなんだけど」と語ってくれたおふたり。子どもが18歳になって希望しても、ドナーの情報を受け取ることはできません。彼女たちは精子バンクから精子を選ぶ際、あえてアノニマスを選びました。親は「ママふたり」というところにこだわりがあり、他の人の関わりが発生しないからという理由です。

4.代理母出産で子どもを授かったゲイファザーの家族

代理母出産とは、第三者に妊娠出産してもらって子どもを授かることです。日本ではタレントの向井亜紀さんがアメリカに渡って代理母出産で双子を得て、当時大きな話題となりました。

代理母出産には大きく分けて2つの方法があります。ひとつは、代理母に人工授精をして、代理母の卵子で子どもを作る方法。

人工授精型と呼ばれる方法

もうひとつは、妻の卵子または卵子提供者の卵子を使い、体外受精した受精卵を代理母の子宮に入れる方法。

体外受精型と呼ばれる方法

現在の代理母出産ではほとんどの場合、こちらの体外受精型がとられています。

私がお会いした方は、長男を、自分の精子と卵子提供の卵子、代理母出産で。次男を、パートナーの精子と卵子提供の卵子、代理母出産で持たれたゲイファザーでした。

「自分がゲイだとわかった思春期の頃は、家族を持つことはないのだと思った。それが今では結婚して、ふたりの子どものお父さんになることができた。本当に嬉しい」と話してくださいました。

「子育てをする上で、ゲイだということで不安や困りごとはないですか?」との質問に、こんなエピソードを教えてくれました。「長男をサマースクールに連れて行って、担任の先生に『彼は父親ふたりの子どもなんです』と話したところ、先生は『わかりました。2年前にもふたりのパパを持つ生徒を担当しました』と言ってくれたよ」と。アメリカの中でもとくに進んでいるニューヨークならではなのかもしれませんが、これには驚いてしまいました!

このように、レズビアンマザーやゲイファザーなどのLGBT家族が増えてきているニューヨーク。それでもゲイファザーはまだまだ少ないようで、ニューヨークのパレードでも、ゲイファザーにはとくに熱い声援が送られていたように感じました。

「DADDY 1」「DADDY 2」と書かれたおそろいのTシャツで歩くゲイファザー

現在日本には、生殖補助医療に関する法律は何もありません。つまり、日本ではきちんと法制化されて利用できるわけでもなく、違法にもならない、という状態です。日本産科婦人科学会のガイドラインにより、自主規制されているので、代理母出産や卵子提供は日本国内ではほとんど行われていません(7月27日付けの毎日新聞の報道によると、日本で初めての第三者の卵子提供による妊娠が試みられているとのこと)。

私は、生殖補助医療に関するルール作りを早急に進めてほしいと思っています。同時に、養子縁組や里親制度についても議論をしっかり進めてほしい。どちらも、社会がもっと関心を持って、議論が成熟することが必要です。

LGBTの家族や、養子縁組の家族を通して、「家族」ってなんなのか、ぜひじっくりと考えてみてほしいと思います。家族になるのに、血のつながりや性別は関係ないのだから。

(東小雪)