フジテレビ系で生放送された『AKB48 49thシングル選抜総選挙』の発表。20位となったNMB所属の須藤凛々花さんがステージで結婚発表したことが、ネットを中心に物議をかもしています。

実際に番組を見ていた人はもちろん、そうでいない人も、ネットニュースの速報を読んで騒然。

働くアラサー&アラフォーからは、「いるんだよね……。自分の話をねじ込んできて、場の雰囲気を壊してシラけさせるヒロイン女子って」と、ため息混じりの声が飛び交っています。

アイドルが熱愛や結婚宣言をする、っていうこと自体は、別段珍しいことではありません。20歳ってことも、それほど。チラリと遡ってみても、日本を代表する歌姫・安室ちゃんだって20歳の結婚です。

なのになんでこれほどまで大騒ぎになっているのか。というのは、AKBの「シングル選抜総選挙」の立ち位置がわからないと謎でしょう。

これは2009年から年1回実施されているAKBファンのためのイベントで、AKB48のシングルの曲を歌うメンバーとセンターを、ファン投票で選ぶというもの。投票数上位のメンバーが歌える権利を得られ、1位の人がその曲のセンターになるというしくみです。

もともと人気のある子たちはセンターを目標に、頑張っている子たちは、AKB48のシングル曲を歌うことを目指して希望者が「出馬」。「選挙ポスター」をつくって、公約を掲げ、熱意を表明し、ぜひ私をあなたの力で日本を代表するアイドルグループのメンバーの一員にしてください!と「選挙活動」をします。

投票権は有料で、購入制限はなし。ファンは好きなだけ票を投じて、思う存分応援できます。

そして、最大のイベントとなるのが結果発表のステージです。
選ばれた子たちがひとりずつ壇上に上がり、当選の喜びと抱負を語って投票したファンと感動を共有する、ここです。

お金を払った人とお金を払ってもらった人との、最大の蜜月タイム。これこそが、シングル総選挙の絶好の盛り上がりポイントなのです。

全力で頑張っている人たちと身銭を切って全力で応援している人たち。この絶対的な「需要と供給」感は、お金を払っていない部外者でも心震えます。だから公共の電波であるテレビで、言ってみれば「単なるアイドルグループのファンイベント」が生放送されるわけです。

そういうイベントの中での、ファンに対する感謝の気持ちを伝えるシーンでの、突然の結婚発表です。
絶対的な「場違い」感。前のめりで喜びを共有する気持ち満々だった人たちに、ジュッと水をさす行為です。

突然の結婚宣言は、ファンの欲しかったものと違う
しかも、須藤凛々花さんは20位です。

今回は、16位までがシングルの選抜メンバーとなり、17位から32位までが「アンダーガールズ」と呼ばれている、カップリング曲を歌える権利を得ました。

何十人もいる「本気な人」たちの中から選挙曲のカップリング曲を歌っていい人に選ばれたわけですから、すごいことだと思います。自己ベストの投票数は「よかったね」と思います。

でも、このイベントのメインは「誰が選抜メンバーに選ばれるか」「センターは誰になるのか」です。本題はそっち。アンダーガールズの彼女が目立っていい場所ではない。なのに、一気に話題をさらっていきました。なんか……、ちょっと……です。

それも、「結婚」という飛び道具を使って。

第3回で前田敦子さんが1位になったときの「私のことは嫌いでも、AKBは嫌いにならないでください!」というコメントが大きな話題になったり、二連覇になるかという去年、指原莉乃さんが、「ダメだった(1位を取れなかった)ときでも、記者さんにニュースにしてもらえるように、何を言おうかずっと考えていた」というようなことを言っていたり。
今回の件でも、19位だった峯岸みなみさんが「もう何を言っても記事にならない」と言っていましたが、出馬していた子たちの「誰が何を言うか」は必ずニュースになります。

そこに「結婚」を持ってきたというカシコさ。うーん、なんでしょう。「おめでたいことだし……。でも、素直に祝う気持ちになれない……」というこの気持ち。

週刊誌に自分の恋愛スクープが掲載されることを知って、先手を打ったのではという意見もあります。

ステージ上の結婚宣言は、突発的に決めたことなのかもしれません。ただ、「せっかく応援してくれてたのに、ファンのみなさん、ごめんなさい」でもなく、「迷惑をかけることもわかっているけれど、自分にもみなさんにもウソをつきたくない」という、もっとも鼻につく言葉を選んだのは、ヒロイン女子ならでは、と思ってしまいます。

「初めて人を好きになりました」「結婚する気持ちも本気です」というのもそう。

言葉自体はまったく悪くありません。むしろ、ステキ。ピュア。ピュアでステキすぎて、非難しにくい。でも、それ言うの、今?っていう気持ちはぬぐえません。乱暴な言葉で恐縮ですが、しゃしゃり出てこないで……って思っちゃうんです。

それ、私が欲しいやつと違う、っていう気持ち。感動したいところで感動できなくなるって、けっこうなストレスを呼ぶのですよ。

でも、グチャグチャ言うほうが非難されます。

彼女に対して大島優子さんが否定的なコメントをSNSに投稿して、批判を受けて謝罪していましたが、そうなっちゃうんですよ。おめでたいことだし、そんな悪い言い方しなくても、って感じになる。総選挙を台無しにされたという事実も、時間が経つにつれ、総選挙がなんぼのもの?っていう意見の方が増えてきます。

そして、そういう土壌を養分に、ヒロイン女子はますます増長していくのです。「だって自分の気持ちに素直になっただけ……」とキョトンとした顔をしながら……。人生、そっちのほうが得っぽい?ってか、そもそもAKBって恋愛禁止じゃなかったっけ?あー、もやもやするわー。

「寿退社のお祝い中に、いきなり自分の授かり婚報告をし始める女」「仕事のグチを言う女子会に、突然自分の彼氏を呼び出す女」ーー。その2ではあずき総研で働くアラサー&アラフォーにリサーチした「私の周囲の呆れたヒロイン女子」を紹介します。

「恋愛禁止の公約違反」を「結婚」という飛び道具を使ってグレーゾーンにもっていったというところは賢いっちゃー賢い。