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「自分に何かあったら、この子はどうなるのだろう?」

 愛猫、愛犬が無邪気に遊ぶ姿や寝顔を見ながら、そんな思いがよぎった経験は、少なからずあるのではないでしょうか。特に単身で暮らしている人や、パートナーはいても子どもがいないご家庭にとって、愛するペットの明日への不安は、本当に切実です。

 また、猫や犬は大好きだけれど、「これから(また)飼うのは難しいよね」と断念している人もいるのではないでしょうか。

 そんな不安や迷いを解消するヒントの詰まった一冊『自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法』(ワニブックス)が発売され、評判を集めています。メディアにも多数出演している著者で獣医師の奥田順之先生に、お話を聞きました。

◆「最後まで飼う自信がない」と諦める前に

 本書では、現在の日本が抱える問題点にはじまり、ペットの幸福を守るための仕組み「ペット後見(こうけん)」や「遺贈寄付(いぞうきふ)」といった、今日からでも考えたい新常識について、具体例を交えながら紹介しています。

 2012年3月にNPO法人「人と動物の共生センター」を設立した奥田先生は、「最後まで飼えないかもしれないから」と単身者や高齢者からペットを取り上げるのではなく、「万が一のことがあっても、ペットが幸せに暮らせる仕組み」を考えようと、「ペット後見」を提唱。具体的なサービスとして「ペット後見互助会とものわ」を立ち上げました。

「ペット後見」とは、飼い主が入院や死亡などによりペットを飼えなくなった場合に備え、 飼育場所(誰に託すかを決める)、飼育費用(託した後の飼育にかかる費用をどう遺すかを決める)、見守り体制(緊急時に誰が危機を察知し、誰が保護に向かうかを決める)の3つを柱として準備し、最後まで飼育の責任を果たすための仕組みの総称です。

 奥田先生による造語ですが、今では行政や一般にも使われ始め、全国のさまざまな団体が「ペット後見」に取り組んでいます。

――獣医師の奥田先生が、現在の社会の“仕組みそのもの”に問題があると考え、動かれることになったきっかけは何だったのでしょう。

奥田先生:一番は「矛盾」を感じたことです。 大学時代、大学病院の実習では、高額な医療費をかけて高度医療を行う現場にいました。一方で、飼い主のいない犬猫は殺処分されている。当時の殺処分数は全国で40万頭(2000年代初頭まで)にのぼりました。飼い主の有無で大きく運命が変わる、そうした社会的な矛盾や仕組みへの疑問を感じました。

 自分が子どもの頃に飼っていた犬を、フィラリアで亡くしたことへの心残りもあります。薬で予防できる病気なのに、「あまり大切にできていなかったな。悪いことをしたな」と。あの時自分に知識があれば、もっと長生きさせてあげることができたんです。だから、せめて自分が獣医師になったら、飼い主さん達にきちんと知識を届けたいという思いがありました。

 大学3年のとき、広島ドッグパークが経営破綻する事件(※)があって。600頭の犬が取り残されて餓死も続出する現場にボランティアに行ったことがあります。

 当時広島ドッグパークの犬は大きく注目されてましたが、一方で40万頭が殺処分されている。そうした矛盾を実際に知ったうえで、獣医師という立場で得た知識を、自分がどう社会に還元するかを考えたとき、「社会の仕組み」に取り組む必要があると思いました。

※「広島ドッグパーク事件」…2006年に発覚した、日本の動物愛護の歴史において大きな衝撃を与えた多頭飼育崩壊・虐待事件。2005年に経営破綻し閉園した犬のテーマパーク「ひろしまドッグぱーく」の施設内に、約580頭もの犬たちが、適切な給餌や清掃をされないまま放置された。その後、救護活動を巡る金銭トラブルや団体間の対立も発生し、複雑な経緯をたどった。