「ちゃんと聞いてあげればよかった」母の体調に気づけず後悔。【膀胱がん】が奪った母との最後の時間

写真拡大 (全2枚)

慌ただしい日々の中では、「大切な人を大切にする」ことは簡単そうでいて、ついつい後回しにしてしまいがち。実際に、知人のA子もその大切さに気づいたとき、「もう少し早く気付けていたら」と後悔しました。
今回は、A子から病気の母親との間で後悔した話を聞かせてもらいました。

忙しさに追われていた当時

A子は転職を機に一人暮らしを始め、毎日バタバタと忙しく過ごしてきました。

新しい仕事や生活に慣れるのに必死で、実家に帰る機会もどんどん減り、両親と話す時間も少なくなっていました。

そんなある日、久しぶりに母親に電話をかけると、「膀胱炎がひどくてつらいのよ」と言われました。

A子は母親が以前も膀胱炎で通院歴があることから、「ちゃんとトイレに行ってよ」と軽く流してしまいました。

「なんか気になる、、、親の体調」

それから半年ほどが過ぎ、再び母親に電話をすると、また同じように「膀胱炎が治らなくて、頻尿で困ってるの」と言われました。

A子はそのときも「大変だね」と言うだけで、特に深く考えることもなく電話を切ってしまいました。

しかし、その日の夜、何となく胸に引っかかるものがありました。母親の声が少し疲れているように感じたのです。

これまで元気だと思っていた母のことが急に気になり始め、A子は「ちゃんと話を聞いてあげればよかった」と反省しました。

そして、翌週、急遽実家に帰ることを決めました。

「もっと早く気づけたら、、、」と後悔

A子の母親は近所のクリニックで診察を受けていたものの、専門の泌尿器科がなく、なかなか改善されなかったようです。

A子はすぐに母を連れて大きな病院へ行き、詳しい検査を受けさせました。

そこでの診断結果は衝撃的でした。

母親の膀胱に握りこぶし大の腫瘍が見つかり、膀胱がんと診断されたのです。

その場でA子は目の前が真っ暗になる感覚に襲われました。

なぜもっと早く気づいてあげられなかったのか、悔やんでも悔やみきれませんでした。

抗がん剤治療が開始されましたが、治療が奏功することはなく、母親は治療開始から半年後、静かに息を引き取りました。

A子はそのとき、「もっと早く病院に連れて行っていれば……」という後悔の気持ちが胸に押し寄せ、涙が止まりませんでした。

母親の苦しみを少しでも和らげられたのではないかという思いが、今もA子の心に深く残っています。

大切な人は「今」大切にする

忙しい日々の中で、親や大切な人とのつながりを後回しにしがちですが、これはA子だけでなく多くの人に共通するのではないでしょうか。

A子は母親の死を通じて「親孝行したいときには親はなし」という言葉の意味を深く理解しました。

大切な人を「今」大切にすることが、後悔しないための鍵なのかもしれません。

【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。