働く堅実女子のためのビジネスで役立つマナー、今週は三橋由紀子さん(仮名・PR会社勤務・28歳)からの質問です。

「うちの会社、いまだに通常出勤の社員のほうが多いんです。私はもともと花粉症なので、使い捨てマスクは早めにストックしていたので、なんとかしのいでいるんですが、同僚女性から“分けて欲しい”と言われてしまって。最初は何枚かあげていたんですけど、これからどのくらい新型コロナウイルス騒動が長引くかわからないなか、マスクがなくなっちゃうんじゃないかと自分自身も心配で……。角がたたない断り方が知りたいです」

マスク不足は深刻化しています。手作り用の材料も手に入りにくくなっているなか、申し訳ないけどあげたくない……という気持ちになることもありますよね。今回は、断るときのマナーについて鈴木真理子さんに聞いてみましょう。

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非常事態のときほど、相手に共感することが大切

断るときには、もちろん「イヤです!」と拒否するのがもっとも簡単です。しかし、それでは相手も気を悪くしてしまいます。非常事態になって、みんなの心もささくれ立っていますから、いつも以上に慎重に対応したいところ。職場で日々顔を合わせる相手と、コロナごときのせいで関係に亀裂が入ってしまうなんてやりきれませんからね。みんなで打ち勝っていきましょう。

断るマナーでもっとも大切なのは、相手の気持ちに同調、共感することです。まず相手が今どう思ってるのかというと、マスクが手に入らなくて困っているんです。まず、そこに同調しましょう。「本当に、マスクが手に入らなくて困るよね……」に続けて、「うちも高齢者がいるから本当に困ってるのよ」など、自分の状況も伝えます。そうすることで、相手にあなたが自分と「同じ」であること、つまり味方だということを意識づけられます。その上で、「私も足りなくなっちゃって、いよいよ買わないとって思っているんだ」など、やんわりと断るとよいでしょう。

モノはあげられなくても情報の提供はできる

次にしたいのは、代案の提示です。頼まれごとを断る場合には、「今、自分はこういう状況だから、それはできない」と伝えるだけでは不十分であるケースが多いです。なぜなら、それでは相手はデメリットしかないからです。こういう場合には、メリットを提供するのがポイント。「Aはできないけれど、Bはできる」と、現実的に可能なことを提示します。内容は、相手がメリットを感じればいいわけですから、今回のケースでは、たとえば「実家の母が言っていたんだけど、1枚ずつで近所の〇〇で買えるようになったんだって。100円くらいするみたいなんだけど。高いよね……」「ネット通販サイトとかも、ようやく1枚50円くらいで箱売りはじめたね」などというのでもいいでしょう。

さらに、「お互いに手に入ったら情報を共有しようね」として、団結感を強めましょう。こう言えば、同時に「あげることはできない」ということも感じ取ってくれるでしょう。それでも食い下がられて「ないってこと?」「くれないの?」などと言われたら、「ごめんね」とだけ言えばよいと思いますよ。自分の分がなくなってしまうことが不安なら、無理にあげる必要はないと思いますよ。我慢してあげてしまえば、本当になくなってしまったときに後悔するだけでなく、相手に対しての怒りが湧いてしまうかもしれません。それはあなたにとって嬉しいことではないはずです。

平常心でいることも大変な時期です。できるだけ心がおだやかになるように、自分の行動をコントロールしていけたらいいですね。

手作りのマスクを「私にも作ってよ(タダで)」というクレクレ女性も続出中とか……。



■賢人のまとめ
断るマナーでもっとも大切なのは、相手の気持ちに同調、共感することです。相手に自分は味方であると認識してもらったうえで、状況を伝え、できないことをわかってもらうのです。加えて、代案を出せたら完璧です。今回の場合は、情報の提供も相手にとってはメリット。「いっしょに頑張ろうね」という気持ちをアピールしていきましょう。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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