「何者でもない、ありのままのSakiとしてやりたかったんです。RSPのことを話したり、当時の楽曲を歌ったりも、めったにしませんでした。その姿を見て離れていった人もいたけど、配信を続けるうちにありのままの私を応援してくれる人が増えていって。

そこで自信がついて、『もう話してもいいかな』と思えるようになりました。やっぱり自分を作ってきた経歴のひとつで、過去も私自身の一部だから。RSPがあったから今の自分がいるって、今は心の底から思えています」

◆ライブ配信の力で思い出を乗り越える

 ライバーとして着実にファンをつけたSakiさん。クラウドファンディングで資金を募り、2021年12月18日、40歳の誕生日に念願のミニアルバム『Hourglass』をリリースしました。

「どこかに所属したり、スポンサーをつけて誰かにお金を出してもらうと自由がない。メジャー時代、散々何かの縛りの中で生きてきたので、それをいったん全部取っ払いたかった。自由な自分から、何が出てくるのかを知りたくて。40歳の誕生日に何とか間に合いました。クラファンが成功したのは、ライブ配信の力が大きいですね。ソロの、ありのままの私を応援してくれるリスナーさんたちに自信をもらい、自己肯定感もすごく高まりました。昔では想像できないくらい、今は『誰かに何かを言われても平気』という自信が生まれたかな」

 ライバーマネジメント事務所の「HOV LIVE」に所属し、2022年8月には活動拠点を再び東京へ。そこにはどのような心境の変化があったのでしょうか。

「RSP時代に対してコンプレックスやトラウマがあったように、東京に対しても同じ思いがあって。自分の中では、“失敗した場所”のような気持ちを持っていました。それを、もう一度塗り直したくなったんです。今の私ならどこに行っても大丈夫だって」

◆RSPの活動が与えてくれたこと

 上京後は大きな会場のステージに立ったり、全国生演奏ツアーをしたりと、多彩な顔を持つ“音楽活動家”として精力的に活動しているSakiさんですが、「もっと自分の質を上げていきたい」と意気込みます。

「音楽は人に伝染していく波動で、可能性やパワーが秘められているものだからこそ、歌う人の状態がすごく大事です。でもライバー活動は、ドキュメンタリーのように苦しみも喜びもリスナーさんとリアルタイムで分かち合います。だからこそ嘘がつけないし、ごまかすと心と体のバランスを崩す引き金にもなりかねない。その状態のままでは、プラスのエネルギーは生まれません。私は落ち込むとき『太く、深く、短く!』を実践し、正直な状態を心掛けています。

同時に、人としてもっと成長していきたい。競争社会の中でも自分らしくいられて、持っている才能が自然に輝ける状態でいること、そして自分のフェーズに合わせてしなやかに動くことを、これからも怖がらずにやっていきたいです。きっと皆もそれぞれなにかと戦っていると思うからこそ、私は皆と日々エールの交換をして、ずっと健康に笑って過ごしたいんです。Sakiという人間がそういう純粋な想いで歌っていることを、これからもいろんな人に届けられたらいいな」

 輝かしくも苦しい過去を乗り越え、ありのままの自分で生きられる場所を見つけたSakiさん。激動の人生について、最後にこう締めくくってくれました。

「自分のやっていることや、己の弱さから逃げた時期もあったし、認められない時期もあった。けど時間をかけて、良いところとそうじゃなかったところを認めて向き合ってきました。もちろん、まだまだ向き合わないといけない部分もあると思います。RSP時代の経験は、私が私にしかできない生き方をしていくための、人生の下積みだったんだろうな。今は笑ってそう言えますね」

<取材・撮影・文/倉本菜生>

【倉本菜生】
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院在籍中。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。Twitter:@0ElectricSheep0