縁は異なもの味なもの。一筋縄ではいかない男女の「もつれ」を遺伝子学的な観点から解きほぐす「アダムとイブのもつれる遺伝子」連載第3回目で取り上げるのは、いわゆる“年の差カップル”についてです。加藤茶さん&綾菜さん夫妻や石田純一さん&東尾理子さん夫妻など、最近では年上男性との結婚も珍しくありません。

20代、30代の女性のなかには、「包容力のある年上がいいな」「年下じゃ物足りないし」と40代以上の年上男性とお付き合いする人も少なくありません。そして、ときのその恋はドロドロの不倫関係に発展するケースも……。ところが、生命情報学がご専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生によれば「年上男に手を出さない方がよい2つの理由」があるそうです。

38歳を過ぎるとオスの匂いが消え始める

まず言わせてもらいたいのは、生殖期真っ盛りのアラサー女性が年上男にホレること自体、すごーく不思議なことなんですよ。前回の「“相性のいい男”はTシャツの匂いでわかる」でご説明した通り、女性には「自分にとってのイイ男」を嗅ぎ分ける能力があります。ところが、男性が38歳以降になると、その匂いが薄くなってくると言われているんです。男女ともにですが、よくいう「加齢臭」に変わってくるわけですね。

その年齢は、精巣機能が衰えていく時期と重なっています。男性ホルモンであるテストステロンの値が緩やかに下がり始め、“オス”度が低下していくんです。つまり、年上男とお付き合いする女性は、わずかに残ったオスの匂いを敏感に嗅ぎ取っているといえるのかもしれません。

男は命の危機に瀕したとき良質な精子を出す

今でこそ40代といえば働き盛りですが、昔の基準からすると天寿をまっとうしていてもおかしくない年齢です。そこで、年上男がホレられるひとつの理由として考えられるのは、「男は命の危機に瀕した際に良質な精子を出す」こと。

たとえば、こんな話があります。刑務所で、囚人に死刑を執行する直前「死ぬ前にやりたいことは?」を訊くと、尋ねられた男性死刑囚は「性行為をしたい」と答えることが多いのだそう。

しかし、いくらなんでもそこは刑務所。「無理だ」と伝えると、「じゃ、自分でやります」とばかりに自慰行為に励むといいます。そして行為の後は、たとえ枯れに枯れたおじいさんであっても非常に満足するそうなんです。

実は、男性の場合は、身体がヘトヘトに疲れているときにも同じことが言えます。そういう時には性欲が高まり、受精率も高くなるんです。命の危機を感じて、なんとか種を残そうという生物としての本能ですかね。映画やドラマで、死地に赴く兵士が出征前に一度だけ契りを交わし、その一回で恋人が身籠る……という感動的なエピソードが描かれることがありますが、それもまんざらない話ではありません。

自閉症の子どもが生まれるリスクが高まる

とはいえ、特に若い女性の場合、年上男との恋愛・結婚には大きな落とし穴があります。まず、自閉症の子どもが生まれるリスクが高まるということです。母親が高齢であること、つまり卵子の劣化による自閉症リスクの上昇はよく知られていますし、研究事例も豊富にあります。しかし、最近はそれだけでなく「“年の差カップル”でも、自閉症の子どもが生まれるリスクが高くなる」ことが研究で明らかになったんですよ。

つまり、40歳同士の夫婦よりも、40歳の夫と20歳の妻というカップルの方が、自閉症の子どもが生まれる確率が高くなるんです。

年上男と不倫しても、実らないと心得よ

年上男には他にも落とし穴があります。年上男には家庭がある場合も少なくありませんが、その場合まず恋は実らないということです。よく、不倫している女性が「カレが奥さんと別れてくれない」と悩んでいますが、悩むだけ時間のムダ。相手の男は別れる気なんかさらさらありませんよ(笑)。「不倫男は奥さんと別れてくれないもの」と心得た方がいいと思います。

「男の浮気は“本能”と無関係であることが判明」でもご紹介したんですが、生物は進化の過程で群れを形成していきます。子どもを効率よく多様化させるなら「群れのなかに妻と愛人を置いておく=両方キープしておく」方が理にかなっているんですね。だから、不倫男は何だかんだ言いつつ奥さんとも彼女とも別れようとしないのです。つくづく、つがいを作るよう進化してきた人間本来のあり方とは逆行してるなあと感じるんですが……。

「不倫相手の女性はテキパキした姉御肌タイプだけど、奥さんはおしとやかな大和撫子タイプだった」なんてことも、多様性をキープしようとした結果だと考えれば頷けますね。
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(小泉ちはる)