結婚願望強めな女は要注意。結婚に幻想を抱く脳内お花畑の夢子ちゃんが、幸せになれない理由
東京に“ネブミ男”と呼ばれる男がいる。
女性を見る目が厳しく、値踏みすることに長けた“ネブミ男”。
ハイスペックゆえに値踏みしすぎて婚期を逃したネブミ男・龍平は、恋愛相談の相手としてはもってこい。
相手を値踏みするのは女だけではない。男だって当然、女を値踏みしているのだ。
そこで値踏みのプロ・龍平に、男の値踏みポイントを解説してもらおう。
これまでに、姫気質な「ワタシ姫」や、自称サバサバ系の鯖女子、カサカサお化けや夜泣き爺など を見てきた。
「龍平さんが、女性に求めるものは何ですか?」
三田にある『御田町 桃の木』のカウンター席で、美優(みゆう)は瞳をウルウルとさせながら龍平に問いかける。
美優とは以前から知り合いだったものの、こうして二人で食事に行くのは初めてである。
現在27歳、独身でメガバンク勤めの美優。
フェリス女学院出身の育ちの良いお嬢様で、家柄の良さも垣間見られる。
「そうだなぁ。平和な人?太陽みたいに明るい人、とか。あとは何だろうね...」
最近、龍平自身もどんな人が理想なのかよく分からなくなってきた。
(こじらせ過ぎた先にあるものは、幸せではない。ただの“迷走”だと最近気がついた)。
「ほら、僕の場合はちょっと変わっているから。それよりも、美優ちゃんが好きな男性はどういうタイプなの?」
「そうですよね...」
“変わっている”ことに対する否定も擁護もないまま、美優は自分の理想を語り始めた。
彼女の理想のタイプは、決して高望みではなかった。しかし、そこに結婚できない理由が隠されていたのだ。
結婚とは、良いものなのか!?ネブミ男と夢子の対決開始
「私の理想は、そんなに高くないんですよ。ただ優しくて、穏やかである程度の経済力がある人かなぁ」
どこかで聞いたことのある理想のタイプである。
-結局、女性はみな同じようなことを言うんだよなぁ...。
龍平は、繊細な料理を見つめながら一人で考える。
彼女たちの理想のタイプなんて、巷に溢れている。男だったら、好きな人に対して皆優しくするものだ。
だが結局、そこに経済力だとか見た目だとか実家の家柄とか色々な要素が加わり、女性たちがふるいにかけているだけ。
そんな厳しすぎるふるいに男をかけまくった結果、誰一人残っていない、というのがオチだろう。
しかし、美優が結婚できない理由はそんな厳しいふるいだけではなかった。
「あとは、結婚したら毎月の記念日に薔薇の花束をくれる人かなぁ」
その時、龍平は思わずテーブルに箸を置いた。龍平のネブミレーダーが大きく反応したのだ。
「毎月の記念日に、花が欲しいの?」
「そうです。あ、でも結婚記念日は薔薇がいいです。100本くらいの」
「それって、プロポーズじゃん...」
最近の世の中は“イクメン”だの“理想の夫”だの持て囃され、度々メディアにも素敵な旦那様たちが登場しているが、現実に記念日に花を買うような男は何人くらいいるのだろうか。
欧米でもあるまいし、日本男子でさらりと花を送ることができる人は絶対数で見るとかなり少ないだろう。
(だからこそ、それができる男はモテるのかもしれないが)。
悲しいかな現実にはいないから、それが「理想の夫」としてメディアに登場しているのだ。
そんな夫ばかりだったら、わざわざメディアに登場させない。
「あとは絶対浮気しない人ですね。これは譲れません。他にも、子供ができてもずっと恋人どうしみたいに新鮮な気持ちをお互いに持ち続けられる人。あと私、結婚したら家庭に入って旦那さんのしっかり支えたいなって思ってます」
美優の話を聞いているうちに龍平は、彼女の正体に気がついたのだった。
乙女たち、現実を見よ!結婚は、ただの日常だ。
結婚に夢を見すぎた妖怪
「まずさ、絶対に浮気しない人って言ったけど、美優ちゃんの中で、どこからが浮気なの?」
「えー!それはもう、二人で食事に行った時点で浮気です!」
頬をぷぅっと膨らませている美優だが、龍平の中でどうにも引っかかった。
異性と二人きりで食事に行くことは、果たして浮気となるのだろうか。仕事の都合で行くこともあるかもしれないし、それだけで浮気認定されるのはちょっと厳しすぎる気もする。
「それにさ、ずっと恋人同士みたいに新鮮な関係って、女の人はよく言うけどよく考えたら一緒に住む相手としては窮屈じゃない?新鮮さと安らぎって、両方を同時に手に入れるのは難しいと思うよ。それにさぁ‥」
龍平はさらに続けようとしたが、美優から冷たい目で睨まれていることに気づき、思わず口をつぐんだ。
あえてこれ以上は言わないが、彼女が結婚できない理由が、龍平にははっきりと分かった。
彼女は、結婚に対して夢を見すぎている。
さらい言うならば、男に対しても夢を見すぎている。
“夢見る夢子ちゃん”なのだ。
結婚なんて、双方の現実をシェアすることだ。
理想だけでは生きてはいけないし、実際に結婚したら日々の生活の中で様々な問題も出てくるだろう。
よく言う例えだが、恋人同士の時は向き合っていた2人が、結婚したら同じ方向を見なければいけなくなる。それが結婚だ。
だから相手にかまってばかりはいられなくなるのだ。
だが美優の場合は、少しでも彼女から目をそらしたり、彼女が考えていた理想と違うことをしてしまうと、怒られそうな雰囲気がある。
さらに女性と2人で食事に行くのは厳禁、とまで言われると、結婚後の束縛の強さが容易に想像でき、男性として足がすくむ。
仕事絡みで女性と2人で食事に行く機会だって、きっと沢山あるはずだ。
それをいちいち目くじら立てて怒られたりしたら、たまったものではない。
「もう少し、冷静に結婚生活をイメージできるようになった方が良いんじゃない?」
理想の姿を思い描くことは、決して悪いことではない。
だがあくまでも、理想は理想である。
10代の頃と変わらない想像力で結婚生活を思い描いているようでは、いつまで経っても理想の相手になんか出会えるわけがない。
ー現実を見ろ。
美優が、一刻も早く夢から覚めるのを願うばかりだ。
だが、龍平のそんな思いとは裏腹に、彼女は少々怒り気味の顔で口を開いた。
「そんなことばかり言っているから、龍平さんは結婚できないんですよ!」
美優の一言に、龍平は大きく頷いた。そして心の中で小さく反論したのだ。
-僕は、現実主義者なだけだ、と。
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その女、危なさ増し!その生態に迫る。