「女性活躍」「輝く女性」そんな言葉が目についた昨年。しかし、「活躍」「輝く」という言葉を聞くと、「これ以上、どう輝けばいいの…」と重荷に感じている人もいるのではないだろうか。

働く女性の先輩でもある全日本空輸株式会社(ANA)取締役専務執行役員の河本宏子(かわもと・ひろこ)さんに「輝く」の指標について聞いてみた。

小さな普段の積み重ねで人は輝く

――河本さんは現在、グループ女性活躍推進担当もされていますが、「輝く」や「活躍」とはいったいどういうことだとお考えですか。

河本宏子さん(以下河本):なにか大きなことや特別なことを担当するとかいうことではないと思っています。小さな普段の積み重ねができる人=輝いている人ではないでしょうか。そして、互いを認め合うことで、その輝きは増すのだと思います。

安全な飛行機の運航はチームで成り立っています。これは、一人ひとりが自分の役割を全うしなければできないことです。チーフパーサーなど全体の責任を持つ人間も、1人だけで進んでいてはチーム力の発揮にはつながらないことがあります。

働き始めて数年すると、責任あるポジションにつくことが出てきますが、なんでも1人でやらなくていいのです。手分けすることも部下の成長につながりますし、いろいろな人の手を借りればいいと思います。上下の関係であれ、横の関係であれ、頼りあえることは大切ではないでしょうか。そうしてお互いに支えあうことがお互いの輝きにつながると思います。

年齢や年次は関係ない リスペクトし合うことが大事

河本:数年前、客室乗務員(CA)の業務を効率的に行うためにiPadを導入しました。実はこの時、あることが起こりました。ベテランの客室乗務員の中にはパソコンなどの機器に不慣れな者がいたのです。若い後輩の方がスムーズにiPadを使いこなすわけです。わからないときは後輩に「教えて」と聞かなければなりません。

この時にもし、先輩CAが「後輩に聞かなくてはいけないなんて恥ずかしい」という意識があったら聞けませんでしょうし、後輩CAが「あの人先輩なのに、こんなこともできないなんて」と見くびるような態度をとったら関係は冷え込んだでしょう。

ANAでは、年齢や入社期に関係なく、各人ができることに対してリスペクトする風土を作ることに社をあげて取り組んでいます。だからあの時、iPadの導入がスムーズにいったのでしょう。人はついポジションや入社期、男性、女性といったフィルターで人を見てしまいがちですが、それではお互いのよさが見えづらくなることだってあります。お互いが輝くための第一歩はお互いを受け容れ、認め合うことではないでしょうか

「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

――頼れる人がいるというのは組織だからこそのよさですね。グループ3万6千人の担当役員として、女性活躍をどう進めていきたいですか?

河本:先ほども申しましたように、「活躍」とは小さなことの積み重ねだと思います。日々の積み重ねからエキスパティーズ(専門性)を持つことで輝いていける。地味に見える日々の業務も見られていないようで上司は見ているものです。こうした日常のことをコツコツと積み重ねることのできる人が「輝く人」でしょうね。当社でよく使っている「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」という言葉があります。「輝く」ということも、これにつきると思います。

(Smart Sense 宮本)