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【漫画】「聞き取りが苦手すぎる男子の日常」を読む

「聞き取り困難症(LiD)」もしくは「聴覚情報処理障害(APD)」は、周囲がうるさいと声をかけられていることに気づかず、スルーしてしまうことも


Xの投稿で17万いいねがつく、雨桜あまおう(@amaousansan)さんの創作漫画「聞き取りが苦手すぎる男子の日常」は、「聞き取り困難症(LiD)」もしくは「聴覚情報処理障害(APD)」に片足を突っ込む高校生を描く。読者のなかにも「1対1は大丈夫。1対多は難しい。でも、ちゃんと耳は聞こえてる」「ほかにも同士がいると思うと心強いです!」「皆さんに知ってほしい。好きで聞き返しているわけではないのですぞ」など、同じ症状で苦労する人のコメントが届く。

■「聞き取り困難症(LiD)」もしくは「聴覚情報処理障害(APD)」とは?

【漫画】「聞き取りが苦手すぎる男子の日常」を読む


本作のベースとなる「聞き取り困難症(LiD)」もしくは「聴覚情報処理障害(APD)」とは?これは、聞こえているのに「聞き取れない」「聞き間違いが多い」、聞き取りが困難な症状を示す。騒音や背後からはNGなど、状況にも大きく左右する。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常1(2)


難聴とは違い、通常の聴力検査では異常が発見されないのも特徴だ。つまり、耳から入った音の情報を脳で処理、理解する際に、なんらかの障害が生じている状態で、言語として認識できなくなっている。そんな「聞き取り困難症(LiD)」もしくは「聴覚情報処理障害(APD)」に片足を突っ込んでいる橘結友が主人公。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常1(3)


彼は、教室などのガヤガヤした場所で話をしていると、しばしば相手が何を話しているかわからなくなる。なんとなくその場の雰囲気に合わせて取り繕ったり、笑ってごまかしたりするものの、失敗することもあり、「いつも話聞いてない」「耳、悪いんじゃね?」と友達に言われたりする。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常3(2)


とくに厳しいのは、繁華街や電車のホーム。いっしょに歩いていても、ところどころ聞き取ることができない。あるときはコンビニで。あるときは自分の食べるたくあんの咀嚼音で!?ある日は雨音で…!!さまざまな状況で聞こえにくくなってしてしまう例をコミカルに描く。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常9(1)


第9話では、結友に片思いをするクラスメイトが登場。勇気を出して結友に話しかけてみるものの、背後からの声は結友には拾いにくくスルーされてしまう。もしかして「耳が聞こえにくいのかも」と、結友が調理実習で皿を洗っている最中に声をかけてみる。「背後から+水音」で話かけられていることに気づかない結友。やっぱり聞こえていないことを確認すると、「好きです」と、こっそり告白した。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常9(2)


雨桜あまおうさんに聞き取り困難症、聴覚情報処理障害を漫画にした理由について聞くと、「実は私自身、聞き取る力が少々弱めのようで、『日本語のはずなのに、理解できない謎言語のように聞こえてしまう』ということが日常的にあります。そういう下地がある中で、ふと『聞こえの感覚を物語にしてみようかな』と思い立ち、漫画を描いて公開するに至りました」と制作の経緯を話す。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常9(3)


実際に聞き取りが不自由な状況で生活している方は大変だが、制作においては「明るく軽やかに描き、読者が肩肘張らずに読める――ということを意識しました」と、雨桜さん。「大変な生活=常につらくて、苦しくて、悲壮感が漂っていて、真面目で深刻(じゃないといけない)……という捉え方は、あまり自分の肌と作風には合わないので。もちろん、苦しみの中で生きている方々と、そういった『重さや深み』を軸とした作品を否定しているわけではありません。が、私は個人的にコメディが好きなので、本作はコメディ調を軸に描いております」と話すように、コミカルだからこそ伝わる部分も多い。

聞き取りが苦手すぎる男子の日常9(4)


本作の特徴としては、結友が相手の声が聞こえにくくなっているセリフの部分に注目して欲しい。「ちょっと読みにくい『ほにゃらら』部分のセリフには、続け字の書体を使用しております。聞こえ方の感覚をパッと目で見てわかるようにしたかったので、『これだ!』と思えるフォントを探し出すのが大変でした。使用させていただいたフォントの制作者様には、この場を借りて、心からお礼を申し上げたく思います」

筆者は知らない症状だったが、思った以上に同じような経験をしている声が集まった。「漫画を読んで『自分にも思い当たるところがあるなぁ』と共感して楽しんでいただいたり、『身近な人、子ども、職場の人などにこういう傾向があるなぁ』という気づきにつなげていただいたり、『知らなかった世界を知れた!』と好奇心でお読みいただいたり、十人十色の楽しみ方で、漫画シリーズを味わっていただけましたら幸いです」と、雨桜あまおうさん。本作はXで不定期更新されている。

取材協力:雨桜あまおう(@amaousansan)