「Wは私のヒザから転がり降りると、うずくまって両手で顔を覆い震えていていました…。

 私もあまりの事に凍りついていると、奥さんが『ほら出たよ! お約束の現実逃避ポーズ…てめぇ、それやったらクロだって認めてるのと一緒だからな!』って怒鳴りながらWのわき腹を蹴ったんです」

 もちろん、マスターの妻とバー従業員の北沢さんは顔見知り。気まずい雰囲気の中…。

「奥さんが『とりあえず私がこの人を病院に連れて行くから、あなたは帰って。あ、慰謝料払えるように用意しておいてね。連絡します』と言い放つと、フラフラしているWを強引に引っ張って行ってしまいました」

◆職を失い、慰謝料請求におびえる日々

 その日の夜にWさんから電話があり、お店をクビになってしまった北沢さん。横で妻がニラみをきかせているようでWさんは終始不自然な様子だったそう。

「まさか、あんな形で不倫がバレるなんて思いませんでした。急に仕事も無くなってしまって途方にくれています…。あと、いつ奥さんから連絡がくるのかと思うと怖くて、怖くて胃が痛いですよ」

 北沢さんは新しい仕事を探しつつ、暇さえあれば“不倫 慰謝料 相場”などとググって、ため息をついているそう。もちろんあれから2度とスポーツセンターには行っていません。

<文&イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop