富と名誉を手にし、ほしいままに動かす「成功者」たち。
きっと皆、その座を掴むために血のにじむような努力をしているのだろう。

でも、頑張るだけじゃ成功できない。

―運も実力のうち。

成功者たちのほとんどが、努力と同じぐらい「運」を重視して、自分だけの特別なパワースポットやラッキーアイテムを持っているという。

これまで、37歳バツイチ女性を社長夫人の座へと導いた指輪や、リーマンショックでクビになった元外銀マンが、注目ベンチャー企業を立ち上げるきっかけを作った神社を紹介した。

さて、今回は?




コンプレックスを乗り越えて幸せをつかんだ女医、成美(35歳)の場合


成美とは、彼女の自宅近くが都合良いということで、プラチナ通りの『THE TENDER HOUSE DINING』で待ち合わせた。

爽やかな白のサマーニットにデニムのパンツを合わせ、長い髪をaccaのシュシュで結わえている。

左手首にはカルティエのバロン ブルー、右手にフェンディのピーカブー。

医師というハイステイタスに加え、全身を上質なアイテムで飾った彼女は、勝ち組オーラが溢れる堂々とした佇まいだ。

驚くほどの美女というわけではないが、涼しい目元が知的な印象の、なかなかの美人。にもかかわわらず、彼女はかつて自分の容姿に強いコンプレックスを持ち、鬱々とした人生を送っていたのだという…



私、自分の顔が大嫌いだったんです。

理由はわかっています。姉といつも見た目を比較され、自信を失ってしまったからです。

私には仁美という2歳年上の姉がいるのですが、その姉が誰からも“絶世の美女”と称賛されるほどの美人で…

自分を姉と同じように美しく産んでくれなかった母を恨みました。そして、姉の隣にいる私には目もくれず、必死に姉の気をひこうとする人々を軽蔑しては、ふてくされていましたね。

自分のすべてに自信が持てなくて、自分のことが大嫌いでしたが…

そんな私に立ち直るきっかけをくれたのは、ある物だったのです。


美人過ぎる姉と比較され続けて歪んだ心。積もり積もった鬱憤のダムを決壊させたある事件とは?


姉の仁美は、生まれながらに祝福された女性なんです。

透き通るような白磁肌に、ぽってりと厚い唇、黒目がちな大きな目。背も高くスタイル抜群で、髪は艶やかなダークブラウン。

しかも美人な上に誰にでも優しくて、おまけに、生来、女神様みたいなオーラまで纏っていて…

誰もが彼女に惹きつけられ、夢中になっていく姿を、イヤというぐらいたくさん見てきました。私は、物心ついたときからいつもこの姉と容姿を比較され、辛い思いをしてきたのです。

両親さえも、特別美しい姉ばかりを明らかに贔屓しているように感じました。

不思議なもので、そう気が付いたときから、鏡の中の自分の顔がひどく醜く見えるようになってしまったのです。

姉は高校卒業後、都内の有名お嬢様女子大に進みました。一方の私は、容姿で勝てなくてもせめて何か姉に負けない強みが欲しいと思い、猛勉強の末、私大の医学部に進学。

難関の医学部に合格したことで、少しは自分に自信が持てるようになるかと期待していましたが、私たち姉妹を知るほとんどの人から「成美ちゃんは、手に職がついてよかったわね」って言われたんです。

姉のように美しくない私は、手に職ぐらいつけないと生きていけないとでも言われているようで…やりきれない思いでしたね。




大学を卒業し、研修医として忙しく日々を過ごしていたある日のこと。

勤め先だった大学病院の近くで、偶然、初恋の人に再会したんです。

それは中学時代のクラスメイトで、成績が良くスポーツも万能で、学校中の女子の人気を集めていた人でした。

彼は早稲田大学を卒業後、大手広告代理店に勤めているということでしたが、そんな彼が向こうから私に気が付き、声を掛けてくれたのです。思いがけず食事にまで誘われ、私は天にも舞い上がるような気持ちでした。

端正な顔立ち、スマートな振る舞い、ユーモアセンスも抜群で…私は洗練された彼にどんどん惹かれていきました。

そして気が付けば、何かと理由をつけて週に1,2回は会うようになり、幸せな気分に浸るようになっていました。

彼と再会してから2か月ほど経った頃、折り入って話があると呼び出されました。私は胸をドキドキさせながら待ち合わせ場所に向かったのです。

それなのに…

「実は成美ちゃんにしか頼めないお願いがあって。お姉さん…仁美さんのことがずっと好きで忘れられないんだ。よかったら今度、食事の機会でも作ってもらえないかな」

その瞬間、私は顔に冷水でも浴びせかけられたような気持ちになりました。自分がみじめでたまらなくて…

私はその場を適当にごまかして、逃げるように彼の前から立ち去ったのでした。

姉は何も悪くありません。でも、私の大切な初恋まで邪魔をしてくる、姉の存在が恨めしくてたまらなくなってしまったのです。

この世に姉がいる限り、私の人生に陽が当たることはない…

それまでの人生で溜まりにたまった鬱憤が、ついに堰を切ったように溢れ出してきました。


荒れ狂う嫉妬心。悔しさと悲しみをぶつけるために女が向かった場所とは?


姉に対する強烈な嫉妬心で、心が荒れ狂っていたその時期。偶然手に取ったある女性誌の特集記事で【縁切榎】の存在を知りました。

あらゆる悪縁、特に人間関係の悪縁を断ち切るパワースポットだと言います。

―たとえ戸籍上の姉妹関係は切れなくても、せめて姉の存在を感じない世界で生きていきたい

私はすがるような思いで、早速【縁切榎】に向かったのでした。




都営三田線の板橋本町駅から歩いて数分。大小の建物がひしめく商店街の一画に【縁切榎】と呼ばれる木がそびえ立っています。

近くには大六天神が祀られていて【縁切榎】はその御神木。「悪縁は切るが、良縁は結んでくれる」と、地元の人々に古くから愛され、信仰されてきたそうです。

こじんまりとした狭い敷地内に足を踏み入れると、目にとびこんできたのは、小さな祠の前にびっしりと吊り下げられた、たくさんの絵馬。

興味本位で見てみると、そこにはあらゆる人間関係のドロドロがかなりリアルに書かれてあり、数枚目を通しただけでも寒気を感じてしまいましたが…

とにかく、私も絵馬に自分の願掛けをしないでは帰れません。

【縁切榎】は無人で、絵馬はすぐ隣にある蕎麦屋の『長寿庵』で購入できるとのこと。私は昼食を兼ねて、少し緊張しながら『長寿庵』の暖簾をくぐったのでした。



賑わう店内に腰を下ろし、注文したおかめそばを待ちながら、絵馬に何と書こうか考えを巡らせます。

姉に対する嫉妬心、両親への恨みの気持ち、姉にばかり注目して私には見向きもしなかった人々に対する鬱憤。自分が本当に断ち切りたい悪縁は何か、意識を集中させようとするのですが…

ズルズルズルッ!

客が勢いよく蕎麦をすする音があちこちで響き、やたらと気が散ります。

加えて、店内には鰹出汁のいい匂いが広がり、なんとものんびりとした雰囲気なのです。

そんな穏やかな店内で、私ひとりだけが異様に殺気立ち、縁切りについて悶々と考えている…そう考えると、だんだんと自分のしていることがひどく滑稽に思えてきました。

―いつもこんなにイライラしてるから、私は誰からも選ばれないのかな…

それまでずっと、自分が人から愛されない原因を、自分の容姿のせいだと思い込んできました。自分を選ばない人たちは、見た目だけで人を判断する軽薄な人間だと、敵対心さえ持って生きてきました。

しかしよくよく考えてみれば、自分の顔が大嫌いだとひねくれて下ばかり向いている女のことを、いったい誰が好きになってくれるでしょう?

―だとしたら…もしかして、変わらなくちゃいけないのは自分自身?!

稲妻にでも打たれたような衝撃を感じました。

そして私は散々悩んだ挙句、結局、絵馬にこう書き記したのです。

“自分を嫌う自分との悪縁を断ち切ってください。自分を好きになれますように。”


縁切榎のご利益?容姿コンプレックスを抱える女に、救世主が登場!


絵馬を【縁切榎】に奉納してからの私は、まるで生まれ変わったかのような清々しい気持ちで日々を過ごし始めました。

姉を羨むことも、親を恨むこともやめました。

原因は何であれ、一度抱えてしまったコンプレックスは、自分で克服するしか方法がないと気が付いたからです。

それに…実は参拝から数日後、私の頑なだった心を震わせる嬉しい出来事があったんです。

研修医仲間の一人から、こんなことを言われました。

「先生はさ、一見ツンとして見えて厳しそうだけど、本当はすごく優しくて誰よりも患者さん思いじゃない?真面目で絶対手を抜かないし、どんな小さなことにもいつも一生懸命で…だから僕、先生の大ファンなんだ」

この言葉を私にかけてくれた男性こそ、現在の夫である隆弘です。

隆弘は、私の見た目ではなく、人柄や仕事ぶりを観察してファンだと言ってくれたのです。彼のその言葉は、私に自信をくれました。

こんな私にも、人から褒めてもらえるようないいところがある。見てくれる人はちゃんと見てくれている。少しそう思えただけで、自分の目線が自然と上向きになれるから不思議です。

これをきっかけに私は、だいぶ時間はかかりましたが、徐々に自分のことを認められるようになっていったのです。

隆弘はいつも私のいいところを見つけ出し、褒め、励ましてくれました。そんな彼の優しさに支えられ、惹かれ、私たちはそれから3年後に結婚。

彼に愛されているという実感が、私が自分に対する自信を取り戻す上で、何よりの支えになったことは言うまでもありません。




今、とても幸せです。

正直に言うと、未だに自分の顔はイマイチ好きになれないままですけど…。

でも私は、容姿コンプレックスのために失いかけた自分自身の輝きを、なんとか取り戻すことができました。

【縁切榎】で絵馬を書いていなければ、私はきっと永遠に、自分の不遇をすべて容姿と他人のせいにして、拗らせていたと思います。

自分のコンプレックスと向き合うきっかけをくれた【縁切榎】は、私にとってはパワースポットというより、人生のターニングポイントですね。

そうそう、パワースポットといえば、主人の親友、直也さんの奥様が、強力な縁結び神社を知ってるって、先日お話ししてくださいましたよ…

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