「恋愛はコスパが悪い」「恋愛は面倒」「正直セックスを楽しいと思えない」……そんなふうに思っている女性も少なくないのでは? 

そんな「若者の恋愛・セックス離れ」を、社会学者の宮台真司さんとAV監督の二村ヒトシさんが真剣に語りあった『どうすれば愛しあえるの 〜幸せな性愛のヒント〜』(KKベストセラーズ)が発売され、刊行記念トークショーが11月15日に東京・高円寺の「文禄堂高円寺店」で開催されました。

約90分にわたって行われたトークショーでは恋愛に悩む女性にとってのヒントもたくさん飛び出しました。

というわけで、トークショーの内容をベースにお二人がウートピ読者向けに大幅に加筆。3回連載でお届けします。

【1回目】お嬢さん、“媚びる恋愛”では幸せになれないですよ
【2回目】自分をぶっ壊せるのは性愛くらい…「恋愛」を勧める理由

『どうすれば愛しあえるの』トークショーに登場した(左から)二村ヒトシさんと宮台真司さん

私たちが「恋の上書き保存」をしてしまうワケ

恋愛に悩む読者に向けて宮台さんと二村さんに語っていただいた連載も今回で最終回です。

宮台さんによると、「記憶の上書き」はNGだそう。その理由とは?

宮台:この男の実態は何なのか? ってのをつかむには、失敗をしていく中で「この男のこの表情は見たことあるな」っていうような見極める力を持つこと。

そのためには決して記憶を「上書き」しないこと。「これがクズだったのかー」って思った男を記憶に格納していくこと。

よく「女性は上書き保存」っていうけれど、上書きしていくと見極められない。上書きばかりしていると男を見る目が養われない。受けた傷は傷として男の記憶を格納していくっていう覚悟を持ってください。

しばしば「恋愛は言葉にならない」と言われるけれど間違いです。「言葉にならないもの」を含めてすべてが⾔葉でラベルづけされ仕舞われます。それが「無意識」。「無意識」は言葉で構造化されます。構造化は「自己のホメオスタシス」に向けてなされます。つまり自己正当化のための記憶の上書きです。

「便所女」(第1回め参照)は、自己像の否定性を埋め合わせるために悪循環に入りますが、それに気づけないように言葉のラベルを貼ります。「便所扱いされたこと」さえ「愛された」とラベルづけします。

精神分析やカウンセリングは御都合主義のラベル貼りが生み出す記憶の⽭盾を突くのが出発点で、本人の動機づけによって偽りのラベルを妥当なラベルに貼りかえます。悪循環に気づかせ、悪循環からの脱出を願わせ、悪循環を駆動する「言葉の自動機械」を止めるのです。

女の多くは「見たくない自分を見ない」ために記憶を上書きします。「便所女」は「粘着系ナンパ師=クズ男」を「好みだった男」「愛してくれた男」などと粉飾決算します。

「記憶の上書き保存」をやめなきゃいけない。でも自力でやめるのは無理。外から──他人から──指摘してもらう。それには「自分本人にしか判らない」などと思い込まないこと。性愛の歪みは「本人こそ気づけない」のです。

パートナーとの理想の関係って?

 
二村:マウンティング合戦にならない関係、支配されたり依存したりしなくてすむ関係を結ぶべき。クズな男やクズな女というのは、自分の心を埋めるために相手を利用する恋愛をする人。クズ女にならないために過去の恋愛の失敗を、何が悪かったのか、ちゃんと言語化しておきましょう。

男らしさとかスペックとかにこだわらず「貴女にとって“エロい男”とは、どんな男なのか?」を考えてほしい。つき詰めれば「貴女が幸せになれる相手って、それ、ほんとに男性じゃなくちゃダメですか?」ってとこまで行く。貴女をエロス(めまい)の状態へ連れて行ってくれる人は、もしかしたら女性かもしれないでしょ?

「女の幸せは〇〇」なんて常識にとらわれないで。世の中の決まりごとは、個人の幸せとは全く関係ない。貴女を傷つける愛のない他人や肉親に執着していても、それは貴女自身をそこなうだけなんです。

(構成:ウートピ編集部・堀池沙知子)