不眠の原因は人によりさまざまですが、心身のストレスは代表的な要因。精神的ストレスは現代人ならだれしも何かしらあるでしょうし、体調不良をはじめ、体の疲労もストレスになります。こうしたストレスから自律神経のバランスが崩れて、眠りにくくなってしまいます。

ところが最近、特別ストレスがないにもかかわらず眠れない“現代型睡眠不足”が増えているそうです。長年、睡眠不足の研究と治療に当たってきた白濱龍太郎医学博士が、その原因と解消法について語りました。

ビジネスパーソンの睡眠不足と向き合ってきた“睡眠の名医”白濱龍太郎先生。医学博士医療法人RESM理事長。

5時間睡眠が続くと、チューハイ3杯飲んだ時と同じ頭に

「ひとつは、パソコンやスマホのブルーライトにさらされる時間が長いこと。夕方から夜、さらに寝る前まで見ている人が多い。それによって自律神経のリズム障害が起きてしまうと考えられます。さらに、現代はそのスマホやメールによって、いつでも連絡がとれる時代です。24時間体制で休む間がありません。こうしたことが原因になって睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌が低下し、体内時計が乱れてしまうのです」

これが現代型睡眠不足の特徴です。そもそも日本人は睡眠時間が短いといわれます。理想的な睡眠時間は6.5時間〜7.5時間とされますが、みなさんはいかがですか?白濱先生は睡眠不足によるパフォーマンスの落ち具合について、次のように説明します。

「睡眠時間が5時間を切る日が続くと、チューハイを2〜3杯飲んだ時と同じくらい、脳の働きが低下します。さらに、4時間睡眠が2週間続くと、記憶力や注意能力が二日間徹夜した後と同じくらいまで下がってしまいます」

慢性的な睡眠不足を感じている人は、二日酔で働いているのと同じことですね!

血流が悪いと自然な眠気が訪れない

次に睡眠に大事なポイントとして、白濱先生が挙げたのが、就寝時間や自律神経のバランスとともに「体の深部体温」です。

「人間の深部体温は日中にピークを迎え、夜にかけて下がってくることで自然に眠くなってきます。ところが今、深部体温が十分に下がらない人が増えています。日中、十分に深部体温が上昇していないからです。だから夜にかけて下がってこない。結果的に眠気が弱いという状況が生じます。ではなぜ日中に深部体温が上がらないのか。血行が滞っていることが考えられます。冷え性や肩こりの人は日中、十分に深部体温が上がっていない可能性があります」

血流が悪い人は日中の深部体温が十分に上がらず、夜間に低下する割合が低いため、自然な眠気が訪れにくい。

なんと、冷え性が睡眠を妨げる理由になってしまうというのです。

お風呂で深部体温を高めるのが有効

ということで、しっかり眠るコツは、冷え性や肩こりの解消にアリということになりそうです。みなさんもすでに冷え性対策はなさっていると思いますが、それでもとれないガンコな冷え性に何が有効でしょうか?毎日、自宅で手軽にできることで?白濱先生の解消法はズバリ入浴です。

深部体温を高めるためにはシャワーよりも入浴。38〜41℃のお湯に15〜30分ほどつかるのがベスト。熱いお湯は交感神経が目覚めてしまうので逆効果。

「浴槽にゆっくり浸かることで深部体温を高めることができます。就寝1時間前にお風呂を出るのが理想的で、するとこのグラフのように体温が下がり始めて、自然な眠気が出てくるでしょう。しかし忙しい現代人、お風呂を浸かる時間が短くなっているんですね。短い時間でも体が温まるように、たとえば炭酸入浴剤を使うなどして効率よく深部体温のピークをつくる工夫をしましょう」

特に冷え性の人、お風呂で手足をしっかり温め、肩や首のコリもほぐしておきましょう。お風呂から出たら手足が冷えないよう暖かくして過ごしましょう。できればスマホやパソコンなどでブルーライトを浴びないように。仕事のメールチェックなどして交感神経を刺激しないように。約1時間後、自然な眠気が訪れるはずです。

ぬるめのお湯にゆっくり入りましょう。就寝1時間前に出るのがベスト。

協力:花王ヘルスケアセミナー