女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、アロマセラピストの榎本未央さん(仮名・37歳)。彼女は東京都の都心にあるアロマサロンでセラピストとして働いています。セラピストとしての収入は、毎月3万円ほど。容姿は10人並みで、特に目立つ感じでもありません。着ている服は、ファストファッションのブラウスにデニムパンツ。群馬県の実家が投資用に購入した、都心のワンルームマンション(約17平米)に住んでいます。家賃は払わなくてもいいけれど、それでは生活できないので、知人の紹介の飲食店でアルバイトをしたりして、その日、その日を暮らしをしています。

「とにかく給料が安くて。ウチのサロンは歩合制なんですが、とにかく待遇がひどい。オーナーは“ママにも働きやすい職場を”とか言って、専業主婦でアロマセラピストの資格を持っている人を雇っています。でも1時間6000円で施術をしても、50%をサロンに持って行かれちゃうんですよ。ホントにがめついババアなんですよ」

とにかくお金がない。お金がないからいつもイライラして、人に当たってしまう。お金が入ると宝くじを買ってしまい、当たったためしがないから、ますますイライラすると続けます。

「高校や大学時代の友達とは一切連絡を取っていません。お金がないから食べるのはパスタかうどん。それに100円で売っているソースをかけます。朝ごはんは1丁20円の豆腐をチンして、醤油とサラダオイルをかけて食べています。この1年くらいは服もろくに買っていなくて、洗いすぎてカピカピになってしまった下着を着ています。服って気持ちに余裕がないと欲しくならないんですよ。こんな生活が1年くらい続いていて、結婚するか実家に戻るかしかないんですけど、先のことは考えたくないですね」

未央さんは群馬県の県立高校から、神奈川県内にある私立大学に推薦で進学。子供のころから“頭がいい”と言われていたのに、自分の出身大学にしか入れなかったことに、異常なまでにコンプレックスを抱いていたといいます。

SNSが流行するまでは、何のためらいもなく学歴詐称ができたのに……

「SNSがこんなに流行るまでは、私は学歴詐称していましたもん。バイトとかの面接では有名大学の名前を履歴書に書いていましたよ。今もサロンのお客さんには出身校を偽っています。セラピストって、魂やエネルギーを削って人にあげるような仕事。一方的にストレスを受けて吐き出しようがないから、ホントに疲れるんですよ。人から道具みたいにこき使われている下請け業者みたいなもの。お客さんはみんないい人だとは思うけど、やっぱり見下していますよね。それがすごくわかるんです。でも、有名大学の名前を出すと、みんな“すごいのね”って顔をしてくれるのがクセになって」

そんな未央さんがセラピストになったきっかけは、27歳で結婚した時。2年間の結婚生活の間に時間があったので、本格的に勉強してディプロマの資格を取得したといいます。

「大学を出てから、横浜にある小さな印刷会社に就職したのですが、会社が倒産してしまって、25歳から派遣社員になりました。時間があったので、夜のアルバイトを始めたんです。その時のお客さんからプロポーズされて結婚しました。10歳年上で、他人には優しくても家族には暴力的な人でした。“お前みたいな女と結婚してやったんだからありがたく思え”とか、作った料理を“味も盛り付けもなっていない”とゴミ箱に捨てられたこともありましたね。あとは義母がスーパー専業主婦で、家にはチリひとつなく、シンクや窓はもちろん、壁も床も常にピカピカに磨いてある人なんです。それと同様のことを私に要求するんですよ。家事ばかりしていてイライラしていたので、アロマセラピーの勉強をすることを思いついたんです。きっと自分自身も癒せると思ったんですよね。元夫も賛成してくれて、費用の100万円をポンと出してくれたし、快く家から出してくれたので、楽しかったですね。1年くらいで資格を取得して、働きに出たいと言うと“女は家で家事するもんだろ”と蹴られるし。もういろんなことがあったのですが、最終的には実家に泣きついて、弁護士を立てて離婚しました」

このときに得た慰謝料は100万円。28歳で再び自由な生活に戻ります。アロマセラピーのサロンで正社員として働きつつ、未央さんはあることでお金を得るようになります。

結婚生活では暴言と暴力の繰り返しだった。その証拠をすべて撮影し、医師の診断書もとっていたので、比較的高額な慰謝料につながったといいます。(写真はイメージ)

慰謝料付きの離婚で味をしめて、未央さんはあることに手を出し……〜その2〜へ続きます。