“変態仮面”がラーメン店に!? 『それは私のおいなりさんだ』突撃レポ
ユーザーから投稿された「キニナル」情報を検証すべく「はまれぽ」が体を張って調査!
今回のテーマは…
<横浜のココがキニナル!>
日吉にある店名の長いラーメン屋が、2月に「おいなりラーメン」なる店に生まれ変わるそうです。レポートをお願いします。(Yorupikuさんのキニナル)
ある日いきなり電話をかけてきて「私のおいなりさんを調べてください」と切り出した、はまれぽ編集部・松山氏。
「えっ!? 変態?」と思ったのだが、どうも話は違うらしい。
よくよく話を聞けば「東横線・日吉駅にある店名の長いラーメン店が、『それは私のおいなりさんだ』と改名し、新たに店舗をオープンさせたらしい」とのことで、なるほどキニナル調査の依頼だったよう。なんだ、踏まれたいわけじゃなかったのね。
日ごろから「松山氏ってドMっぽいなぁ」という勝手な先入観を抱いていたが故の早とちり。先入観って恐いなっと思いながら早速本題へ!
■日吉に『変態仮面』現わる!?
記事「ラーメン激戦区で発見!「ものすごく後ろ向きな看板」のラーメン屋の正体」[ http://ure.pia.co.jp/articles/-/19825 ] によると、ラーメン専門店「日吉で一番ウマいのはあびすけさんだと思うので、当店営業時間外はぜひともあびすけさんをご利用下さい。」は、つけ麺「あびすけ」の関連店舗であるとのこと。
その長い店名の名づけの際に店名候補の一つとして、2月4日にオープンした「それは私のおいなりさんだ」の名が挙げられていたことから、同店が「あびすけ」関連店であることは明らか。なぜ、このタイミングで「おいなりさん」なのだろうか?
人生の岐路に立つとついつい横道にそれたくなる筆者だが、今日はただひたすら前を向いて「日吉中央通り」を直進。そして2つ目の角を右に曲がると……
黄金色に輝く「おいなりさん」の看板。
「それは私のおいなりさんだ」。
ものすごい勢いで主張するその看板に、店の前を行き交う人々も思わず苦笑。その写メ率の高さはご想像の通り。
週刊少年ジャンプ黄金期に青春時代を過ごした筆者にとって、もはや言葉責め以外のなにものでもないこの看板。女子学生が「怪しさ満点じゃな〜い?」と恋人に腕を絡ませながらキャッキャとはしゃぐ姿に、なんとなく気恥かしさを覚える。
その言葉がかつて週刊少年ジャンプで連載されていた、あんど慶周大先生の『変態仮面』から生まれた名台詞であることが万人の知るところか否かは微妙であるが、とにかく怪しさはだけは年齢性別を超えてバシバシと伝わっている様子。
ちなみに後日「おいなりさん」の認知度を知るべく、いたってノーマルな高校生の甥っ子に「ねぇねぇ、『変態仮面』って知ってる?」と聞いてみたのだが、「何、それ」と冷たい一蔑。年ごろの男の子は難しい。
で、肝心のキニナル「私のおいなりさんラーメン」はというと……
「なぜ、そこにおいなりさんが!?」と、ツッコまずにはいられないこのラーメン。しかも、「店主の気が向いた時だけ発売する限定メニュー」とのこと。こんなラーメンを気まぐれに作る店主、きっと……さぞかし「アレ」な人に違いない……。
と、思いきや……ラーメンつけ麺な男前だった。
店主・高橋知己(とものり)さんは、物腰の低い控えめな印象とは裏腹に、横浜・川崎・新宿に油そば・つけ麺の「あびすけ」を展開するやり手のラーメンマン(36歳・ジャンプ黄金期世代)。
そのアブノーマルな店名にばかり気を取られていたが、つけ麺・油麺ですでに実績を作り上げている彼が、今このタイミングで、もやしなどの野菜がたっぷりトッピングされた「ガッツリ系ラーメン」の店を立ち上げた理由もキニナルところ。初対面の殿方相手にいきなり「おいなりさん」の話を振る勇気もないので、まずはそのあたりから。
■「おいなりさん」の目指すラーメン
高橋さんの話によると、「ガッツリラーメン それは私のおいなりさんだ」は、ラーメンコンサルとして「渡なべ」(高田馬場)など数々のラーメン店をプロデュースする渡辺樹庵さんの協力のもと生まれた店であるらしい。
高橋さんが渡辺氏に出会ったのは、今から10年以上も前のこと。当時まだラーメンコンサルとして活躍する以前の渡辺氏が神奈川区・六角橋にあった高橋さんの店を訪れたことから、店主と客として意気投合。その後渡辺氏がラーメン業界に進出したことで、ますます交流が盛んになったのだとか。
今回の「おいなりさん」構想も2人のガッツリラーメンに対する疑問から発展したものだとういう。ラーメン業界にいると、いろいろな裏情報も耳に入るのだろう。
「2人で『なかなか美味しいと思えるガッツリラーメンってないよね』って話をしていたんです。骨を一切煮ない、野菜を一切煮ない、そんなお店さんもけっこうあるんですよ」と高橋さん。
時代の流れとしてガッツリラーメンを売る店は増えているが、それと比例してまともにスープを取っているとは思えない粗悪なラーメンを提供する店も増えていると彼は憂う。
そんなガッツリラーメン界に一石を投じるべくオープンした「おいなりさん」。そのこだわりのスープのベースとなるのは、渡辺氏が過去にプロデュースした「らーめん 天空」(神奈川区子安通・2010年9月閉店)の濃厚甘辛醤油味。
もともと高橋さんのお気に入りだったという『天空』の醤油味。そこにもうひとつ、高橋・渡辺両氏の大好きな『すみれ』(本店は札幌市)の醤油味のようなエッセンスを取り込みつつ組み立てたのだという。
「すみれ」と言えば、新横浜ラーメン博物館にも店舗を出す味噌ラーメンの名店。(記事『年間フリーパスで“秘密のVIPルーム”も!? 『新横浜ラーメン博物館』の全貌を見た!』[ http://ure.pia.co.jp/articles/-/17668 ] 参照)正直、筆者は味噌ラーメンしか食べたことがないのだが、高橋さんいわく「『すみれ』は味噌より醤油が美味!」なんだとか。
そして完成した「おいなりさん」のスープのお味は……?
「僕の中ではかなりお気に入りの味になってます!」と満足そうな表情。とはいえ、あの長〜い名前のお店にもしっかりファンはついていたはず。もったいない気もするのだが、なぜ今このタイミングで「おいなりさん」なのだろうか?
すると高橋さん、「実は、もともと人生チャレンジングな方に進んでしまう性質の人間なんです」と、少々やっかいな性(質)癖をカミングアウト。「やりたいと思ったら、面白そうなことを見たら、そっちに手を出さずにはいられないみたいなところがあって」とのこと。
六角橋の味を日吉で復活させることを最もチャレンジングなことと判断し、オープンさせた長い名前の店。
しかし、その後しばらく店をやっていく中で、彼は「本当にこれでよかったのか」と葛藤するようになる。時代のニーズ、街のニーズとして、今ここでやるべきはガッツリ系なのではないか……。彼は悩み、そして大いに迷った。
そんな2013年のある日、彼の迷いを断ち切る衝撃のニュースが耳に入る。
「変態仮面」映画化――。
ん?
「そのニュースを聞いて、僕の中の『おいなりさん』への情熱と敬意が再燃してしまったんです」
へ?
「もともと『そのおいなりさんは私のだ』という言葉は僕の座右の銘なんです」
はいぃぃぃ!?
ラーメンへの想いを語る高橋さんの真っ直ぐな瞳にキュンキュンしていて何か重要なことを忘れていたが、ここはそう……『それは私のおいなりさんだ』。熱いラーメン談義で終わるはずはなかったのだ。
「あの言葉にどれだけ私の人生、勇気づけられてきただろうか」と、遠い過去を振り返る姿は、すっかり「変態仮面」の世界の住人。ラーメンを語る以上に熱い口調で語られるその話によると、彼は心が落ち込む時、くじけそうな時「それは私のおいなりさんだ」というそのシーンを思い浮かべることで乗り越えてきたのだという。
「あのシーンを最初に見た時の衝撃。あの衝撃がずっと脳裏から離れないままに生きているというか……ぜひともリスペクトを込めてラーメン屋の店名にしたいというか……(以下省略)」と、さらに話は続く。それはもう、まったく筆者の理解を超えた高橋ワールド。
そこで、長くなりそうなので話もとりあえずラーメンを注文することに。
■「決して違うおいなりさんを想像しないでください」
「おいなりさんラーメン」は、高橋さんの「おいなりさんに最大限のリスペクトを表したい」という想いから生まれた販売数限定のスペシャルラーメン。食券機にある通り、「店主の気が向いた時だけ」発売するとのことだが、「メニューとして売っていない日、売っていない時間の方が圧倒的に多くなっちゃいそう……」とかなりレアな商品になりそう。
何よりキニナルのは、おいなりさんがラーメンとマッチするのか否かという点だが、その点については「合うか合わないかそれを聞くのは野暮というもの」と一蹴。「おいなりさんラーメン」は「ただそこにおいなりさんがあったから」生まれたラーメンなのだ。
で、その高橋さんが理想とするおいなりさんはというと?
合うか合わないかは問題でないとは言いつつも、やはりそこはラーメン店の店主。その奇抜なコラボをうまく成立させるために、いろいろと思考を重ねたよう。
「お揚げがスープを吸って濃くなっても、マシマシに盛られたもやしが中和してくれるんじゃないかと思って」とガッツリラーメンに合わせた理由を説明。さらに、ラーメンの味を壊さないよう、お揚げも酢飯もあくまでも控えめに仕上げたいとイメージを語る。
軽く流してしまおうと思ったのだが、その恐ろしく太い麺に唖然呆然の筆者。その太さはというと、生の状態でも6〜7mmという衝撃の超極太縮れ麺。高橋さんが学生時代にハマったという堀切菖蒲園にあった店のガッツリ系ラーメンをイメージして発注しているのだとか。
「ふっ、太い!」と感動しきりの筆者に「かなり攻撃的です」とあくまでも挑発的。
挑むようなその視線に、興奮が増す。「受けて立ちますよ!」
隣で「僕、少食だからアテにしないでくださいよ」としつこいくらいに念を押す根性なし松山を無視して、ラーメンを待つ間店内を見渡す。
座席はL字型のカウンターのみで全部で11席。新しい業態への挑戦ということもあり、コスト面でのリスクを抑えるため、店舗は看板を付け替えた程度でほぼ前店のまま。もちろん、例の大漁旗も健在だ。
と、そこに「モノノフ」の文字が。
ん? ももクロ好きなんですか……?
「いや、当時はやたらハマってたんですけど、今はなかなかライブチケットが取れなくなっちゃって」と苦笑いの高橋さん。
今は、ももクロの妹分「私立恵比寿中学」にハマっているらしく、店内音楽も「エビ中」オンリー。「そこもあえてチャレンジングに行きたい」という狙い通り、筆者滞在中にも「音楽はどなたの選曲なんですか?」と男性客が食いつく姿が。
そして、お待ちかねのラーメン完成!
けっこうなボリュームだ。
さり気ないながらも、強く何かを主張する「おいなりさん」。
ラーメンに「おいなりさん」2個はかなり重たい気もするが、そこは店主のこだわり。「おいなりさんは2個じゃないと」。確かに……
見た目は、所謂「二郎インスパイア」系のガッツリこってりな印象。しかし、一口スープをすすると意外にあっさりクリアな味わいに驚かされる。とはいえ、物足りなさはまったくなく、ほんのり甘辛さが口の中に広がり、一口飲むともう一口と後を引く。
一方、麺は見た目以上に噛みごたえたっぷり。口の中にほおばるとそれはもう大騒ぎ状態。筆者のこれまでの人生の中で、ここまで「麺」をしっかりと感じてラーメンを食したことがあっただろうか。にじみ出る小麦の風味が、こだわりのスープと相まって絶妙な味わい。
これなら全然イケル! と、丼を抱えて「おいなりさん」にむしゃぶりつく秋山。そして「すごいですね」と恐ろしい化物を見るかのような目でカメラマンに徹する敏腕編集者。
う〜ん、お腹いっぱいと家に帰り早速メールを開くと、送られてきたのは悪意に満ちたこの写真。
彼との付き合い方を改めようと実感したのは言うまでもない。
■取材を終えて
日吉駅周辺は学生街ということもあって、かなりのラーメン激戦区。ガッツリ系ラーメン店も同店から半径100mエリアに「おいなりさん」を含めて計3店舗と熾烈な競争を繰り広げる。
そんな中あえて勝負を挑むかのような今回の出店。ホントに大丈夫なの? と他人事ながら心配になるところだが、チャレンジ精神旺盛な当の高橋さんは、「日吉はあくまでも実験店」といたって冷静。
先行するほかの2店には根強いファンもついていることだろう。今回の目的はそこに勝つことではない。これからの時代を捉えガッツリラーメン店の展開を視野に入れ、ここでノウハウを確立することが目的なのだ。
長い店名のラーメン屋から一変、突然のリニューアルに驚かされたが、今回の「おいなりさん」は当面変える予定はないとのこと。
ラーメンファンはもちろん、おいなり好きの方もぜひ訪れてみてほしい。
●ガッツリラーメン それは私のおいなりさんだ
住所/横浜市港北区日吉本町1-2-6
営業時間/11:00〜23:00
定休日/ほぼなし(年末年始、お盆休みの可能性)
※本記事は2014年2月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。
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