次期主力戦闘機F-35ってどんなもの？
日本の国防を担う次期主力戦闘機は「F-35」に決定されています。では、このF-35とはどんな戦闘機なのでしょうか。防衛産業に詳しいジャナーリスト桜林美佐さんにお話を伺いました。
■F-35には3タイプある
――F-35とはどんな戦闘機なのでしょうか。
桜林さん F-35は「F-35 ライトニングII」という名称で、第五世代の戦闘機になります。「統合打撃戦闘機計画」というプロジェクトから開発されました。ちなみにアメリカ、イギリス、カナダなどによる共同開発計画です。
――アメリカ一国で開発したのではないのですね。
桜林さん 昨今は装備品の高度化・高価格化などにより、一国での戦闘機の開発が難しくなっています。何カ国かが分担して作るという、この先もおそらくこういう共同開発は続くでしょう。
――「統合打撃戦闘機計画」とはどんなものですか？
桜林さん 従来は多くの機種が、戦闘機、戦闘攻撃機、対地攻撃機として使われていますが、これを1機種で代替しようという野心的な計画です。ですので、F-35は多くの役割を1機種でこなすことができる機体です。こういった機をマルチロール機といいます。
――1機で多くの役割を果たすとはすごいですね。
桜林さん とはいっても、F-35にはA、B、Cの3タイプがあります。
●F-35A 通常離着陸機
●F-35B 垂直離着陸の可能な短距離離着陸機
●F-35C 艦載機
F-35Aは普通に滑走路から離陸着陸するタイプで「CTOL機」と呼ばれます。
F-35Bは『ハリアー』などと同じく、垂直に離陸着陸ができるタイプです。「STOVL機」と呼ばれます。(プロペラ機ですが)オスプレイを想像してください。あのように滑走路がなくても垂直に飛び上がって、そこから水平飛行を行うことができます。
F-35Cは艦載機で空母での運用を考えられたタイプの機体です。「CV機」と呼ばれます。
3つの派生タイプをそれぞれの軍で選択して採用することになります。
――日本はどのタイプを選んだのでしょうか。
桜林さん 日本はAタイプを選定しています。
――F-35は優秀な戦闘機といえるのでしょうか。
桜林さん まずステルス性を持つことが特徴です。優秀といえるかどうかは相対的なものなので、周辺国の装備と比べてどうかが問題です。
日本の周辺でいえば、ロシア、中国などが開発を進めている第五世代戦闘機と比較して考えなければなりません。
――桜林さんはどう思われますか？
桜林さん 防衛生産・技術基盤維持という点では問題が山積みですが、能力は優秀だとは思いますよ。
――何か問題点はないのでしょうか？
桜林さん 開発に時間がかかり開発費が高騰していることですね。当然開発費の高騰は1機当たりの価格に反映されます。計画では、多くの国、多くの軍で採用されるので大量生産でコストダウンが図れる……っていう目論見だったんですが。
＊……2012年5月3日のアメリカ国防総省の発表によれば、日本への売却額が42機で100億ドル(約9,900億円：$1=約99円)になるとのこと(予備部品や15年のサポート代金を含む)。
■F-35の製造は日本でも行われる
――F-35はできあがった機体を日本が輸入するのでしょうか。
桜林さん 2017年度以降、日本企業がF-35の製造に関して参加してもいいことになっています。「日本企業が機体の部品製造に参画する場合には、最大4割程度とする」と今のところいわれていますが、武器輸出3原則により最初から参加していないことのデメリットや、ブラックボックスが多いことはやむを得ないようです。
また最終組み立てと検査を行う工場は、日本国内の建設が認められています。
■F-35の配備はもう少し先のこと
――実際、F-35が配備されるのはいつからなのでしょうか。
桜林さん 平成28年度(2016年)からとなっていますね。
――まだ先のことなんですね。
桜林さん 「飛行機ができたから渡します」では運用できないですから。パイロットの訓練、整備の訓練など、運用のための準備期間が必要です。また運用試験期間というのもあります。ですから、通常は3年から5年の時間がかかりますね。
私たちが日の丸を付けた最新鋭機F-35を目にすることができるようになるには、もう少し時間がかかりそうです。
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