――ちなみにその頃は、炎の色は何色になっているでしょうか。

黒沢:今度は白に近いような気がします(笑)。

――達観にも似た境地かも知れないですね。そこにいたるように、日々大切にしている考え方はありますか?

黒沢:柄本明さんに、ただそこにいることだと、教わったことがあります。あることがきっかけで、18歳の頃に教わったんです。俳優はただそこにいる、ただセリフを言う、ということ。これって、すごく難しいんです。若い頃は意識をしていなかったけれど、50歳を過ぎたら、難しいと感じるようになりました。今、一生懸命にやっていますが、難しいということに行きつくんですね。時間がかかってもいいから、その老婆という役柄を通して、ただそこにいられたら、自分が白くなれたらと思っています。

簡単に言うと、「あしたのジョー」のジョーが白くなっているじゃないですか(笑)。あんなふうに、ただそこに自然にいる俳優に到達できればいいなと思っています。

<取材・文/トキタタカシ>

【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。