目をつけられてしまったと思ったら…クレーム客を3分で撃退する先輩社員

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 販売の仕事をしていると、訪れる客からカスタマーハラスメント(カスハラ)を受けることがあったというタジマオオカさん(@pu92yu)。その体験談から対処方法までを描いた『かすはら物語』は、タジマさんのSNSに投稿され19万を超えるいいねを集め、各メディアにも取り上げられ話題となった。大変な経験をしながらも販売の仕事を続けられたのは、考えを変えるきっかけとなった先輩社員との出会いがあったからだという。タジマさんが考える、販売職の大変さとやりがいについて聞いた。

【漫画】「こんなの食べるから、あんたみたいに太るんだ!」容姿までクレーム…タジマさんが経験した壮絶カスタマーハラスメント

■漫画反響で「”誰かに何かを伝える”ことを深く考えることができた」

ーーカスタマーハラスメントについて描いた漫画は多くのメディアに取り上げられました。さまざまな反響をどのようにとらえていますか?

「かすはら物語」をツイッターで出した時には、店頭で見ず知らずの人が理不尽に絡んでくるなんて信じて貰えないだろうと思っていました。『嘘じゃないんです。こんな事って本当にあるんです』という気持ちで描き始めた漫画なので、反響の大きさと共に自分も同じ目にあった、または現場を見たというお声が多かったことにとても驚きました」

ーーあらためてご自身で振り返ってみて、気づきを得たことは?

「自分で読み返してみた時に、大切な部分が描けていなかったと気付きました。ハラスメント対応中に自分の気持ちがどのように変化していくのか、いただくアドバイスの受け止め方など、描けてない部分がたくさんあって…もっときちんとお伝えしたかったと思いました。

 『誰かに何かをお伝えする』ということを深く考えることができて、ハラスメント対応にも通じるものだと感じました。そしてこのことに気付けたのは大きな反響をいただけたからこそであり、本当に有り難く思っています」

■「閉じた対応をしない」クレームを受ける時に重要なこと

 実際にクレーム対応をしていると20〜30分ほど時間が。その間に上司に引き継げればよいが、上司が来るまでに去ってしまうことがほとんどで、上司に報告するにも”もうその場にいない”ので報告しづらい雰囲気もある。たとえ周囲にスタッフがいたとしても「助けたいけど体が動かない」「暴れ出したらどうしよう」など助けに入りたくてもできない、1人で対応するしかない現状があるという。

ーー漫画には、3分でクレーマーを撃退する先輩”T先輩”が登場しました。その先輩はタジマさんがクレームを受けることを未然に防いでくれることもあったと。その先輩との出会いで、接客への考え方が変わった部分はありましたか?

「これまでの同僚や上司からのアドバイスは、漫画にも描いた通り『気にするな・聞き流して・忘れた方がいいよ』など、ハラスメント自体を”無かったことにする”ようなものでした。渦中にいる時はひたすら我慢、あとは忘れなさいと。

 一方でTさんからは、目当てのスタッフからできるだけクレーマーのお客様を引き離すよう誘導すること。あえて人目の多い場所で話を聞くことなど、上司に引き継ぐことができないときにどう動くか、具体的にアドバイスをいただきました。お話を聞いてからは、自分目線だけではなく『Tさんならどうするか?』という一歩引いた目線で状況を認識するようになりました」

ーークレームを入れる側にも悩みや不安があってのことだったと、よくよく話を聞いてみると分かってくることも。とはいえ個人情報まで聞き出すのは話が違います。クレーム対応をするときに、タジマさんが接客する側の姿勢として大切にしていることをお聞かせください。

「商品やサービスに不満がある”クレーム”と謂れなき暴言を受ける”ハラスメント”は全く違うものです。クレームは原因が分かっているので、そのことに注力して解決を模索しますが、ハラスメントは全く原因が分かりません。

 ただ姿勢としては”閉じた対応”をしないように心掛けています。話しを聞いていてもこちらが無表情でひたすら淡々と聞き流すような心を閉じた聞き方をしていれば、相手の不満は増すばかりになってしまいます。とても難しいことではありますが…」

ーー大変な思いをしたクレーム対応があったかと思います。それでもタジマさんが感じる販売職の醍醐味・やりがいは、どのようなところにありますか?

「販売職の現場では自分の感情は抑えて常に笑顔を絶やさないことが求められる一方で、売上目標のプレッシャーが大きい店舗もあります。本来であれば売上達成にやりがいや醍醐味を見出すべきなのかなとは思いますが、私はやはりお客様との会話です。短いやり取りの中にお客様ひとりひとりの思いを感じ取ることができて温かい気持ちになることが多いです。そんな時は良い販売ができたなと感じますし、お勧めした商品が誰かの喜びに繋がってもらえることがとても嬉しく思えます」