大人の「告白」は、もはや「プレゼン」だと思え!【カレー沢薫「アクマの辞典」第2回】

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OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!

第2回 アクマの辞典 カ行



【コ】
▶「告白」 言ってすっきり、相手どんより。

今回のテーマはカ行から「告白」である。

これは、年代によって受け取り方や意味が全く異なる言葉だ。
中高生だったら「愛の告白」以外に思い浮かばないかもしれないが、私にしたら「今年になってソシャゲにつぎ込んだ金額」である。

若いころは甘酸っぱい言葉だったかもしれない、それが加齢と共に酸っぱさオンリーになっていき、特に結婚した後は「良い意味での告白」はほぼ皆無になる。

10代の頃は、打ち上げ花火を下から見るか横から見るかで悩めたかもしれないが結婚後は「借金告白、直接言うか、LINEで言うか」みたいな告白しかなくなるのである。

また「愛の告白」にしてもティーン、とサーティンでは全く趣が違う。
ティーンの告白というのは、とにかく交際がゴールだろう、中には好きと伝えられただけで満足という場合もあるかもしれない。
しかし大人になると、このような言いっぱなしジャーマンでは終われない、ビジネスで言うと「好きだ」という「報告・連絡」で終了しているのだ。
いい年をして「ホーレン ホーレン ホーレン ホーレン ホーレン ホーレン(合いの手)」とソーラン節調で言い逃げしていくのは社会人のすることではない。

むしろ重要なのは「相談」部分だ。
交際をしたいという明確な意思表示が必要だし、相手も三十を過ぎていたら、その交際が結婚を視野にいれたものか提示すべきだろう、さもなければ相手に無駄な時間を過ごさせる恐れがある。
また結婚前提なら結婚した場合のビジョンも示さなければいけない。

このように「告白」は年を取るにつれ「カミングアウト」から「プレゼン」になっていくのである。
よって「何のとりえもない私だけど」みたいな告白は愚の骨頂だ、何のとりえもない商品を顧客に勧める奴があるか、という話だ、逆にとりえがなくても、プレゼン段階ではあるように言うべきだ、何だったらパワーポイントで資料を作ってもいい。

ただ年収のように明確な数字が出ているものを偽るのは、4バイトしかない商品を4テラですと言って売るようなものなので、詐欺罪に問われないためにも、そこに自信がない場合は内面とか、ぼんやりした部分をアピールしたほうが良いだろう。
メリットだけを言い、デメリットは聞かれない限り答えないのもビジネスである。

また告白する際にはリスクヘッジも必要だ。
ティーンなら、フラれても、失恋ソングを聴きながら、砂糖入りホットミルクをカブトムシみたいに舐めて3日ぐらい部屋に閉じこもれるかもしれないが。
大人には仕事他、日常業務がある、失敗後のダメージ計算は不可欠だ。ダメージを減らすために「告白」という明確な手段はとらず「流れ」での交際を目指す大人は非常に多い。
また同じ会社の人間相手に失敗した場合はその後の業務に支障が出る可能性がある。

よって「職場内の人間は避ける」など。逆にリスクから相手を選ぶという方式をとっている人間もいるのだ。

このように、社会人になったあたりから、告白からロマンはどんどん消えていく。
しかしガッカリしなくても良い、最初に言ったとおり、結婚後は「隠し子発覚」など、告白は「プレゼン」から本来の「カミングアウト」の意味に戻り、ドキドキも復活する。

ただ何度も言うが「悪い意味」でである。

【カ】
▶ 「顔」
「内面で勝負」と言っても、まず内面を見てもらえるかがここにかかっている

【キ】
▶「キュン」
浮気をしたのはパートナーにこれが足りなかったせいで自分のせいではない

【ク】
▶「クズ(男)」
顔も年収もいいくせに自分を好きになってくれない男

【ケ】
▶「結婚」
崩壊した神話。ハルマゲドンのはじまり。



プロフィールカレー沢薫
OLであり漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。最新著作『ブスの本懐』(太田出版)を2016年11月16日に発売。

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