山形県PR動画「ものの婦」で総監督だけでなく、ムービー撮影、スチール撮影、インタビュアー、題字、ナレーションを担当した戦場カメラマンの渡部陽一

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戦場カメラマンの渡部陽一が、キャリア初の映像作品制作に挑戦した。その映像作品とは、山形県の魅力を伝えるPR動画のこと。渡部は、動画全体を監修する総監督だけでなく、ムービー撮影、スチール撮影、インタビュアー、題字、ナレーションも担当し、同県のものづくりを支える“女性職人”にフォーカスを当てて、生き生きとした作品を完成させた。

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動画タイトルは「ものの婦」。これは、山形県の「ものづくり」の現場で、日々情熱を持って、ひたむきに戦い続ける女性職人を、現代社会における「武士(もののふ)」と捉え、創作した造語だ。

「ものの婦」は、5人登場する。100年以上続く地元の老舗に生まれ、杜氏の夫と共に完全手作業の酒造りに励む長沼合名会社の長沼真知子さん、生まれも育ちも東京でありながら、強い信念のもと、アポなしで飛塚製鋏所を訪ね、剪定鋏(せんていばさみ)職人への道をスタートさせた小木曽千鶴さん、現役最年長の手織緞通(だんつう)職人で、その道60年のキャリアを誇るオリエンタルカーペット株式会社の森谷りう子さん、ブランドのハイエンドモデルを製造する山形カシオ株式会社で、最難関の技能検定をクリアしたマイスターの資格を持つ松枝ゆかりさんと土井直美さんだ。

渡部は、彼女たちの優しく包み込むような温かい人柄や、丁寧かつ繊細な手作業が織りなす作品の数々、その製作過程を撮影。被写体ギリギリまで近付くジャーナリスト特有の撮影スタイルで“ものの婦”たちを映していった。そんな異例の超接近戦で、レンズを向けられたものの婦たちは、「あまりにも近くてビックリしました」「グイグイ迫ってくるのでドキドキしました」と驚いていたようだが、その甲斐あって、映像はそれぞれの職人の個性や、現場の息遣いが感じられるものに仕上がった。

もちろん、話題になった渡部節も踏襲されている。普段から取材相手に敬意を払い、生の声や息遣いを伝えることを大切にしているという渡部。インタビューでも、独特のゆっくりとした丁寧な語り口で、ものの婦の印象的な言葉を引き出すことに成功した。

渡部は、今回映像監督のオファーが届いたことに関して「カメラマンとしての姿勢を整えてもらえた気がします」とコメント。カメラマンとして世界中を回れば回るほど、「ニッポンのことを知りたい」と思うようになっていたそうで「故郷の静岡県は、温暖な気候で、ほとんど雪も降りません。だから、いつか雪国の女性たちの地に足がついた日々の暮らしや慣習に触れてみたいという気持ちは、ずっと抱いていました。そうした中で今回、山形を取材する機会をいただき、そこで出会った人々の温かさや、他人のことを思い寄り添う愛情、おもてなしや暮らしに向き合う厳しい姿勢、技の継承を目の当たりにして、もうとりこになりましたね」と、念願の地で初の映像作品制作に挑戦できたことを喜んだ。

ちなみに、山形県の担当者は、今回のプロジェクトで戦場カメラマン・渡部陽一を起用した理由について「山形ものづくりの最前線を世に斬新な形で発信するために渡部さんにオファーしました。ジャーナリストとしてさまざまな現場の最前線を取材し、世に伝えてきた渡部さんに依頼することで、広告クリエーターとは違った視点で切り取っていただき、他自治体との差別化ができると考えました」と話している。

なお、同作は2月26日の公開から3日間で 100万回再生を突破。SNSや動画へのコメント欄には「じわっとよい作品ですね」「やっぱりプロはすごい」「温かみのある動画で最後まで見てよかった」との声が寄せられている。(東京ウォーカー(全国版)・Raira)