【俳優・塩野瑛久さんインタビュー】誰かの心を動かす方法を探して【前編】

2024年10月2日 20時30分

現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』の〝一条天皇〟役で、知名度＆好感度ともに急上昇中の塩野瑛久さん。

優美なロイヤルスマイルに多くのレディたちが心を掻き乱されているけれど、その表情、その佇まいは努力と研鑽の賜物。デビューして12年、多彩な役を突き詰め、積み重ねてきた塩野さんの俳優人生に迫ります。

演じた役は自分にとって全部がハマり役

ーー現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』で、一条天皇という重要な役どころを熱演中の塩野さん。その優雅な仕草、柔和な表情、そして薫り立つ気品は驚くほどにハマり役だと大河ファン界隈でも大きな話題になっているけれど、本人の受け止め方はどうやらちょっと違う。

「僕ら俳優はどんな役でもそれに自分を寄せていきます。ですからどんな癖のある役も、演じたものは自分にとって全部がハマり役。その中で今の〝一条天皇〟が話題になっているとしたら、作品の歴史や影響力に支えられているのだと思います。ただ、この役に関してはオーディションで決まったのですが、正直、実力で得た手応えがなくて。今回の大河は平安時代の話ですから、この顔がたまたまハマったのかもしれない（笑）」

ーーいや、あの高貴な佇まいや品格、さらに帝というトップオブトップの人間が醸す悲哀は〝顔〟だけではとても表現し得ない。

「もちろん役作りといいますか……登場時は若さゆえの未熟さや感情の揺れを意識しました。年を重ねてからはわかりやすく年齢の違いを出すというよりは、自分の中で精神年齢をグググッと上げるイメージでやっています。でも言ってくださる高貴な雰囲気は、見てくださるときに〝帝〟っていうフィルターがかかっているからじゃないですかね（笑）。というのも、僕はそこを作るというよりは、まず帝の心の在り方にアプローチするようにしていまして。それが表情なり佇まいに出ているなら、逆にすごく嬉しいです」

出典: 美人百花.com

油断するとすぐ突き詰める方へ…

ーー役作りに関しては、徹底的に背景を探り緻密に構築していくスタイル。そのため撮影中は特にストイックになりがちだが、最近は「現場を楽しむようにしている」とか。

「以前は自分のことでいっぱいいっぱいで、共演者の方と密に仲良くなったり、撮影の直前まで普通に話すことがあまりできなかったんです。でも、鋭く役のことだけ考えすぎると本番でうまくいかなかったりする。なので最近は一回、思考回路をパーンと解き放ち、頭を完全に切り替えるようにしています。そうすると心の解放具合が全然違うんです。その点、主演の吉高（由里子）さんはやっぱりすごい。たとえＮＧを出してしまったときでも、ナチュラルに場をほぐしてくれるんです。それを本人に言ったら『私だってキメるときはキメる、カッコいい女でいたいのに！』と笑っていましたが、僕は意識しないと、そういう抜け感は作れない。油断するとすぐ突き詰める方へ行っちゃうんですよね」

ーー吉高さんが抜け感の天才なら、塩野さんのとことん突き詰める性分も貴重な才能では？

「でも困ることもあります。家で片付けとかをするときも、散々広げたあと、どこか一箇所に集中すると他が手につかなくなる。それで他を放置しっぱなしでどうしようって考えて、結局どうにもならなくなったりするんですよ（笑）」

ーーそこは、高畑充希さん演じる藤原定子に一途すぎて、周りが見えなくなる一条天皇と少し重なるような……。

「そうかもしれないです。でもそのおかげで情報量が少ない時代の役ですが、意外と作り込まずにできた気がしています。ただ一点だけ、眉毛には気をつけました。僕は役に合わせて毎回、眉の角度やうぶ毛の剃り方を変えるのですが、帝に関しては、あえて自然のまま〝いじらない眉〟にしているんですよ」

ーー吸い込まれるような雅（みやび）な眼差しの秘密は地のものを生かした〝帝眉〟。今後はドラマを観るたび、そこにも目がいってしまいそうだ（笑）。

――後編に続くーー

Profile

塩野瑛久（しおのあきひさ）

1995年1月3日生まれ。劇団EXILEのメンバー。2012年俳優デビュー。ドラマ『来世ではちゃんとします』シリーズや『ぼくの人格シェアハウス』など数々の話題作に出演。秋には『ゴールデンカムイ-北海道刺青囚人争奪編-』（WOWOW）、映画『チャチャ』『八犬伝』の公開を控えている。

Information

大河ドラマ『光る君へ』

舞台は平安中期、『源氏物語』を書いた紫式部の生涯を描いた大河ドラマ第63作。塩野さんは7歳で即位し、32歳で崩御した66代天皇・一条天皇役を演じている。