スクールが開催するイベントでは、生徒たちがそれぞれの活動を生かしたブースを設置している。そのなかには、マルチ商法の商品を使ったサービスを紹介するブースや、謎の免疫水の代理店を募集するブースもあった。

まるで狩り場のような有り様であるが、スクールの運営がそれを許しているのだ。

◆和の文化を伝えるはずが

本来の目的を告げずに勧誘するのでなければ(ブラインド勧誘)、違法ではないが、「和の文化を伝える巫女の催し」に参加してそれらに遭遇したら、なかなかのインパクトである。

個人的には「神仏に携わる人が清廉潔白であれ」とは一切思わないし、巫女といってもいろいろな業態があるだろう。しかしマルチ商法に疑似科学健康器具の代理店勧誘が蔓延する団体とは、吹き溜まり感がすごい。

神聖なイメージの巫女たちが、怪しげな商売に手を染めているとは、漫画のような話である。

スクールの行事の後に、巫女装束でさまざまな業種の経営者たちを接待する場が設けられていると以前の記事でも書いたが、マルチ商法などのビジネスに関わったことから、客の新規開拓のために積極的に参加するというような背景も想像がつく。

◆入ってからしかわからない実態

「要は民間のカルチャースクールなのだから、そうしたノリが嫌ならやめればいい」

そう思う人もいるだろうが、一見はごく真面目なスクールに見えるのが問題だ。入り口は品行方正な伝統あるスクールに見えるのに、入り込むと中の風紀は乱れ、活動は極限までカジュアル化されている。

やめるのは簡単だが、費やした金と時間と傷ついた気持ちは戻らない。スクールに入った絹江さんの元教え子も「伝統的な巫女神楽(かぐら)を習いたかったのに、実際は全然違った」と肩を落としている。

◆対策はできるのか?

こうした事態を回避するには、イメージにつられず、まずはしっかり下調べするしかないのだろうが、昨今はネットの口コミも“やらせ”が横行し、あてにならないものが多いだろう。

この記事のように「こういう例もある」と広める以外に、手はあるのだろうか?

少なくとも関わってしまった絹江さんは、「うつ手がない」と困り果てている。

<取材・文/山田ノジル>

【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru