イギリス王室は2月5日(現地時間)、チャールズ国王ががんと診断されたことを公表。国王は当面、公的な行事などへの出席を見送るものの、その他の職務は継続する予定であることを明らかにした。

王室は、チャールズ国王の具体的な診断名を公表していない。ただ、国王は「元気」だとされており、リシ・スナク首相も出演した『BBC』のラジオ番組で、「がんは非常に早期の状態で発見された」と述べている。

ただ、国家元首である君主が健康問題によりその職務を遂行することができなくなれば、王室はどのように活動を継続するのか、疑問に思っている人も多いはず。そうした事態が発生した場合に備え、あらかじめ決められているのは、どのようなことだろうか?

君主が職務遂行不能になったら?

君主の健康状態が悪化し、職務を遂行できなくなった場合、王室は公務を確実に継続していくため、憲法の規定と議会制定法に基づき、国務参事を任命することになっている。

チャールズ国王が付与する特許状により、2人以上の国務参事が任命され、君主の職務を遂行することになる。参事は枢密院会議に出席し、君主の代理として文書に署名し、外国の大使を接受することができる。

ただし、(チャールズ国王の明確な指示がない限り)、新たな首相の任命や議会の招集・解散といった最も重要な役割を担う権限は、与えられない。

君主の代理になれるのは?

君主の代理を務める国務参事は、配偶者(カミラ王妃)と王位継承資格のある21歳以上の王族のうち、継承順位上位の4人から選ばれることになっている(ウィリアム皇太子とヘンリー王子、アンドルー王子、ベアトリス王女だったが、ヘンリー王子とアンドルー王子が公務から退いたため、代わりに国王の妹アン王女と末弟のエドワード王子が加えられている)。

事態が長期化した場合は?

仮に国王が健康上の問題で長期にわたって職務を遂行できなくなり、イギリスとその海外領土が国家元首不在の状態となれば、憲法上、国王に認められていた権限は取り消され、国王に代わる摂政が任命される。

1937年摂政法に基づき、王位継承順位1位の王族(現在はウィリアム皇太子)が摂政に任命され、チャールズ国王に与えられていた権限を引き継ぐことになる。

だが、摂政の任命にはまず、君主の配偶者と大法官、下院議長、イングランド首席判事と記録長官のうち3人以上が、「身体的または精神的な健康状態により、君主は職務の遂行が困難であると判断した医学的な証拠は十分なものであると考えている」ことが、書面によって明確に示されなければならない。

また、国王が職務に復帰する場合にも、これらの人たちによる判断が、書面によって示される必要がある。

過去に例はある?

1937年摂政法の制定以降、この法律に基づく手続きが必要となったことはない。2022年9月8日にエリザベス2世女王が亡くなったときには、王位は速やかにチャールズ皇太子(当時)に引き継がれた。

Translation: Ryoko Kiuchi From ELLE UK