筆者撮影/マクドナルド「月見ファミリー」関連商品一部

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毎年秋になると限定商品として展開される月見グルメ。

大手ファストフード店が放映する"月見バーガー"のCMや広告などを見て、秋の訪れを感じる人も多いのではないでしょうか。ちなみに、2023年の月見(十五夜)は9月29日でした。

食ビジネスメディア「Yellowpage」代表で、日本にとどまらず海外のお月見の文化を研究する月見文化研究家・渥美まいこさんに、日本のお月見グルメの広がりについて聞きました。

なぜ「月見商戦」はここまで広がったのか

渥美さんは2023年のお月見グルメの動向について、次のように分析します。

「トレンドを牽引してきたマクドナルドなどハンバーガーチェーンに加え、コメダ珈琲やすき家、大阪王将、ドミノ・ピザ(2年ぶりの参入)と、フードカテゴリーを問わず拡大したところが特徴のひとつです。

これまで秋の販促施策といえば「ハロウィン」でしたが、売上が落ちやすい9月から施策展開できること、パーティー感の強いハロウィンよりお月見のほうが普段の食に提案しやすいこと、ハロウィンだとターゲットが若年層・ファミリーに寄ってしまう中で、お月見であれば単身層や年配者も含めて提案できることがメリットに感じられたのかもしれません」

渥美さんによると、グルメだけでなく、「体験型お月見」の増加がみられる点も最近の特徴だそう。

「2022年から始まった下北沢の駅前に大きな月やウサギが出現する『ムーンアートナイト2023』は今年も既に大盛況。

横浜のホテルニューグランドでは十五夜当日のお月見キャンドルナイトを企画したり、"特に後世に残したい名月"として『日本百名月』に認定されている東京スカイツリーでは天体望遠鏡を使用して満月の鑑賞が楽しめます。

これまでコロナ禍の外出自粛によって企画化できていなかったイベント型お月見が今年はとても増えていることも、2023年のお月見の楽しみ方ではないでしょうか」

このように、さまざまに広がりを見せる現代の月見商戦ですが、渥美さんは「現代のお月見グルメに通じる、卵の使用や丸型を特徴にしたお月見グルメを大規模に展開した最初の企業はマクドナルドと言われています」と説明します。

日本マクドナルドの公式ページによると、1991年に初登場した月見バーガーの開発経緯について、以下のような説明がありました。

「開発当時、バーガーに入っていると嬉しいと感じる人気食材を調査したところ、たまごが人気という結果に。そこから、たまごを使ったバーガーの開発が始まったそうです。全国に多くの店舗があるマクドナルドは販売するバーガーの数も相当なもの。食材が安定的に仕入れられるということも重要な要素です。そこで、たまごが安定的に供給される秋に出す商品を開発する、というのが最初の開発背景だったのだそう」

同ページによれば、1991年当時、新製品開発の候補は年間200個以上。そこから実際に商品化されるのは5個程度だったそうなので、月見バーガーはかなりの難関を勝ち抜き、現在まで長年親しまるようになったバーガーと言えそうです。

現在では、バーガーだけでなく、サイドメニューのホットパイやシェイク、チキンマックゲットの期間限定ソースまで月見関連商品が拡大しています。

それから20年超。現在では、先ほどの渥美さんの話にあったように、「お月見商品」は様々な派生を見せています。

モスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンなど「月見バーガー」を展開するファストフード店以外にも、高級チョコレートブランド「GODIVA(ゴディバ)」やバレンタインデーの火付け役「モロゾフ」からも月見をモチーフにした商品が出ています。

GODIVA(ゴディバ)/ゴディバ オータム コレクション(10粒入)

「モロゾフ/お月見プリン」

ちなみに、アイス研究家として、ぜひ注目いただきたいのが言わずと知れた人気アイス「雪見だいふく」。実は、「雪見だいふく」も今だけおモチがお月見になっています。

雪見だいふく(秋限定お月見仕立て)

皆さんの興味のあるお月見グルメはありましたか? これからますます、月見グルメは増えていきそうですね。

シズリーナ荒井(本名:荒井健治)

アイス現場評論家兼アイス研究家。これまでに5万個以上ものアイスを食べ歩き、年間4000個のアイスを研究する。TV、ラジオなどメディア出演多数。市販アイスのアレンジレシピや企業同士の商品コラボも手がける。著書に「魔法のアイスレシピ」(KADOKAWA)がある。
【Twitter】@sizzleeena/【Instagram】sizzle_feeling426