「限界なんてない」――内田雄馬は歩みを緩めず、どこまでも突き進んでいく

内田雄馬に2020年の抱負をたずねると、“超”という一文字を記した。

2012年に声優デビュー。ほぼ切れ目なく毎クールのようにTVアニメに出演し、2017年には第11回声優アワード新人男優賞を受賞した。

近年は『BANANA FISH』(アッシュ・リンクス)や『ぐらんぶる』(北原伊織)、『この音とまれ!』(久遠 愛)などの主演作のほか、熱量の大きい助演で作品を支えた『フルーツバスケット』(草摩 夾)や『MIX』(立花走一郎)、『あひるの空』(花園百春)など、数多くの作品で強い印象を残し、2019年には第13回声優アワード主演男優賞も受賞している。

2018年5月にアーティスト活動もスタート。そのほかに劇場アニメ、ドラマCD、ゲーム、ラジオ、イベント、写真集発売…と、その多忙ぶりは人気声優のなかでも突き抜けている。

それでも、内田は歩みを緩めない。「昨年を超えるような年にしなきゃいけない。どうしたらいいのかは、これから見つけていくんですけど」。緩めないどころか、さらにスピードを上げて走り出していた。

撮影/藤田亜弓 取材・文/千葉玲子 制作/アンファン
スタイリング/奥村 渉 ヘアメイク/花嶋麻希

「2020冬のアニメ」特集一覧

「おまえはペットボトルとしゃべってるのと変わらないよ」

内田さんの2018年、2019年のご活躍は本当に素晴らしかったと思います。
ありがとうございます。この数年ですごくたくさんの作品に出会わせていただいて、それに伴って多くの方との出会いがあって。キャラクターもそうですよね。演じさせていただいたキャラクター、1人ひとりとの出会いが僕にとって非常に大きかったです。とにかくいろんな人に触れるチャンスが多かったおかげで、今の僕があるというか。

作品を作るうえで最も大切なのは、やはり人とのコミュニケーションだなと改めて感じているんです。相手を思う、考える気持ちだなと。これまでにも考えてはいたのですが、どこか自分本位だったり、自分を中心に考えているところがあって。

声優の仕事を始める前なんですけど、「おまえはペットボトルとしゃべってるのと変わらないよ」って言われたことがあったんです。はるか昔なのに、なぜか今でもよく覚えてるんですけど。
ペットボトルと…。
当時は、どういう意味で言われたのかもわからなかったし、「ペットボトルじゃなくて、今あなたに話しかけてるのに」と思っていましたけど。きっと自分のことばかり、自分からしかしゃべっていなかったんでしょうね。

もしかしたら駆け出しの頃とかは、セリフもそうだったんじゃないかって。相手に働きかける、何かを伝えたいセリフじゃなくて、自分が言いたいだけの言葉。

でも、あたりまえのことですけど、キャラクターの言葉には意味がある。物語やテーマだったり、監督が作りたいものだったり、音響監督の意図であったり。いろんな方が、いろんな形で、伝えたい“言葉”を持っていますよね。

そういう奥底にあるものまで考えたうえで、僕らは僕らの声で、相手に伝えなきゃいけない。お芝居って、そういうコミュニケーションの積み重ねからできてるんだって実感しています。
だから多くの人との出会いが糧になっていると。
そうですね、1人ひとり感性は違っていて、正解は人の数だけあると思うので。いろんな人とコミュニケーションを取っていったほうがいいなって。

「この人はこうだから、こう」って決めつけちゃいけない。自分のなかで予想を立てることはあっても、実際にその人と関わってみないとわからないですよね?

想像力が大事な仕事でもあるので、想像したうえで、実際に相手と触れ合いながら、繰り返し繰り返し、言葉を重ねていくことが大事なんじゃないかなと思います。

宝石を通して人の心を読み解いていく人間ドラマ

1月9日から、辻󠄀村七子先生が原作、雪広うたこ先生がキャラクター原案のTVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』がスタートしました。リチャード(声/櫻井孝宏)がジュエリーの鑑定を通して謎を解くミステリー仕立ての物語で、内田さんは、リチャードのパートナーとなる大学生・中田正義を演じます。本作との出会いはオーディションのときでしょうか?
はい、オーディションのときに知りました。“ジュエル・ミステリー”と書かれていたので、どんな謎を解くお話なのかな?と思っていたんですけど、くわしく知るうちに、宝石を通して人の心を読み解いていく作品なんだなと気が付きました。

たとえば1話は、正義自身がずっと持っていた、亡くなったおばあちゃんの指輪にまつわる話だったんですが、持ち主が「じつはこう考える人だったんだ」というのが宝石を通じて伝わってくる。エピソードごとに、ジュエリーが表す意味や手に入れた経緯から依頼主のことを知っていって、最後に持ち主の悩みや心が解き明かされていく。解決したり、しなかったり、いろんなケースがあるんですけど。

「ああ、いろんな人生に触れていく作品なんだな」と感じて、いろんな考えを知れるな、これはすごくおもしろいなと。コミュニケーションそのものを描いていく作品なのかな?とも思いました。

オーディション原稿も会話が多くて、リチャードとの掛け合いが重要になるのが伝わってきました。これが実際に会話劇になったら収録が楽しいだろうと想像できましたし、ワクワク感がありました。
▲リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン(声/櫻井孝宏)
▲中田正義(声/内田雄馬)
中田正義をどんな人物だと感じていますか?
自分が思ったことを出力できる人なんだなと。1話の冒頭で(男たちに絡まれている)リチャードを助けたのもそうですけど、他人があまり関わりたくないだろうこと、避けてしまうことでも、正義のなかで「これが正しい」と思えるなら、まっすぐに進む。

でもそれは彼の“正義”であって、誰にとってもそれがいいことかどうかは…1話の冒頭とかは、「よく助けに行ったな!」って思いますけど(笑)。相手がどう思うかはさて置いても、まずは自分の信念を持って行動できる人です。

これはけっこう難しいことというか、大人になればなるほど、そういう気持ちって減っていきますよね。
相手のことを考えて遠慮したり、行動に移せなかったりしますよね。
だから正義は、けっこうスゴいと思います。僕自身とは違うところでもありますね。

「それはちょっと言いすぎかな?」とか、「その言い方だと人は傷つくかもな…」と思うときもあるんです。でも彼にとっては嫌味とかじゃなく、純粋に自分がそう感じたから出力しちゃう。そこが“可愛げ”だったりもするのかなと。見ていて気持ちいいなと好感を持つところでもあります。
リチャードと正義のバディ感も楽しい作品ですが、リチャードにとっても、正義のそういう面がよかったのかなという気もしますよね。
リチャードはどちらかというと、自分の気持ちを出さないタイプですからね。リチャードの今までの環境…これはネタバレになってしまうから話せないんですけど…表に出してはいけないことを多く抱えて生きてきたのかなあと思わせるところがあります。

正義みたいにまっすぐな人ってなかなかいないから、そういう意味では(正義は)特別な人だなっていう感覚がリチャードにもあったのかな〜って…もしかしたら思いますね。

短いセリフに細やかな感情をにじませる、櫻井孝宏のスゴさ

そんなリチャードを演じるのが櫻井孝宏さんだと知ったときは、どう思いましたか?
いや、もう、すっごく楽しみでした。僕個人としては、こういった役柄でご一緒できて光栄ですし…僕なんかが言うと生意気なんですけれども、本当に楽しみでした。
共演していて、櫻井さんのスゴいと感じるところは?
リチャードって、一見何を考えているのかわからない、ミステリアスな要素が多いですよね。言葉づかいも誰にでも丁寧ですし、今どういう気持ちなんだろう?って測りづらいところがあるんです。でも櫻井さんが発するセリフのなかに、「今は嫌なんだろうな」とか「今はうれしいんだろうな」って、細かい感情をふと感じさせられることがあって。

そういった言葉を受けて正義がどう感じるか、どう動くかがコミュニケーションだと思うんですけれども。そういう何気ない会話の細かさ、丁寧に丁寧に感情を積み上げていくところがスゴいと思いますね。

でも正直、大先輩のことを「スゴい」とお伝えすること自体、本当に恐縮してしまうんですけれども…言葉にするのはすごく難しいです。
1話は正義のさまざまな感情の揺れが伝わるいいスタートだと思ったのですが、アフレコはいかがでしたか?
1話だけでも、家庭環境の片鱗が見えたり、彼はわりといろんな経験をして育ってきたんだろうなと伝わってきましたよね。おばあちゃんが昔はスリだったって、びっくりしましたよね?
はい、驚きました。お母さんとの電話での会話シーンなども意外でした。
そういう一筋縄ではいかない環境で、決して幸せで朗らかな家庭だったわけではないのに、彼がまっすぐに育ったのはどうしてか…って。彼のバックボーンについてすごく考えながら収録しました。
一見、“いい人”にも見える正義くんですが…。
“いい人”って曖昧な言葉で。ふわっとしているんですよね。

正義がいい人かどうか僕にはわからないですけど、彼には彼なりの経験があって、それに基づいて自分の気持ちをちゃんと感じることができるし、幸せな家庭ではなかったからこそ、これまでの人生で教わったことをちゃんと大切にしたいとか、“自分なりの正義”を貫くって決めていたりするのかなと感じました。

まだ若いので、(これから宝石鑑定を依頼してくるお客さんなどの)相手のことを理解しきれるわけではないと思いますし、誰だって、“他人を理解できる”ことなんてないんですけど…。それでも彼のなかには、相手のことを心配したり、思いやる心がある。じゃあ彼の思いやりは、相手にとっていいことなのかどうか? そこが今後のストーリーでも重要になってくると思います。

2020年の抱負は「超」。もっとキャパシティを増やしたい

撮影では、色紙に2020年の抱負を書いていただきました。「超」と1文字。その心は?
2019年を超えたいという気持ちで書きました。2019年に得たものをすべて抱えて、よりよくしていきたいですよね。じゃあどうしたらいいのかは、これから実践するなかで見つけていくんですけど。

それともうひとつ意味があって、アーティスト活動では昨年、『OVER THE HORIZON』というタイトルで初のライブツアーをやらせていただいたんです。「地平線を超える」という意味で、自分の限界を「ここまでだな」と決めずに、常にその先を目指して進んでいきたいという気持ちがあって。

2020年代の始まりという、節目の年でもありますよね。よりチャレンジもしていきたいですし、もっともっと自分のキャパシティを増やして、もっともっと限界を超えていきたい。限界なんてない、って思うんです。

みんなで作るアニメーションもそうですし、音楽もそうですし。あらゆる作品を作るうえで、どこまでもどこまでも、いい場所に向かって超えていきたい。自分でハードルを作らずに、どんどんどんどん、走り続けていきたいなって。
そうやって前へ前へ進んでいく力が、内田さんらしいなと思います。
最初にお話したコミュニケーションの話もそうなんですけど、凝り固まってはいけないし、停滞したくないなって、いつも思っていますね。
内田雄馬(うちだ・ゆうま)
9月21日生まれ。東京都出身。A型。2012年に声優デビュー。主な出演作に、『BANANA FISH』(アッシュ・リンクス役)、『ぐらんぶる』(北原伊織役)、『フルーツバスケット』(草摩 夾役)、『この音とまれ!』(久遠 愛役)、『MIX』(立花走一郎役)、『あひるの空』(花園百春役)など。2018年5月よりアーティスト活動を開始。2月19日に5thシングル『Over』をリリース。

「2020冬のアニメ」特集一覧

出演作品

TVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』
https://jeweler-richard.com/
1月9日よりTOKYO MXほかにて毎週木曜に放送中!

©辻󠄀村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、内田雄馬さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年1月10日(金)18:00〜1月16日(木)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/1月17日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月17日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月20日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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