どんなときもブレない。前野智昭が教えてくれた、自分らしくいるための“貯金”

「“自分らしくいられる秘訣”は何ですか?」という質問に、少し間をおいてから「貯金すること」という答えが返ってきた。地に足の着いた、それでいてどこかユーモアのある、まさに“前野智昭らしい”答えだ。

前野がインタビューに臨む姿勢は、常に真面目で謙虚。彼の回答からは、作品やスタッフ、共演者への感謝を第一に、全力で芝居に取り組んでいる姿が伝わってくる。その一方で、“前野智昭にしか持ち得ない感性”から発せられる、独特な言葉が飛び出してくるのも特徴といえるだろう。

2001年に声優として活動を開始して以来、『図書館戦争』の堂上 篤や、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズのカミュ、『はたらく細胞』の白血球など、新人や後輩といった存在に自らの背中を見せて導く役どころを数多く演じてきた前野。

1月8日より放送のTVアニメ『空挺ドラゴンズ』で演じる主人公・ミカも、カッコ悪い部分とカッコいい部分の両方をもちながらも、確固たる目的や信念を抱くキャラクターだ。

撮影/須田卓馬 取材・文/とみたまい 制作/アンファン
スタイリング/MASAYA ヘアメイク/横手寿里
衣装協力/ニット¥85,800(tashiro/JIG)

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「龍を捕って調理して食べる」という発想はなかった!

捕龍船で空を駆け、龍を狩りながら旅をするクィン・ザザ号のクルーたちを描いた、桑原太矩の原作によるTVアニメ『空挺ドラゴンズ』。原作の印象はいかがでしたか?
オーディションのお話をいただいてから原作を読みましたが、ファンタジーとグルメ要素がうまく合体している世界観が新鮮でした。これまでも龍を扱った物語はいろいろとありましたが、「龍を捕って調理して食べる」という発想はなかったので、すごく新しいなと。

登場人物それぞれがとても個性的で、読んでいて引き込まれる作品ですよね。主人公のミカは、飄々として掴みどころがなく、どちらかというとだらしない印象を受けるキャラクターではありますが、目的や信念を本当に曲げない人で、それがいざというときの行動力に繋がったり、男らしい、頼もしい一面を見せたりするので、非常に振り幅の大きいキャラクターですね。
いざというときの行動力というのは、龍を狩るシーンなどですね。
そう。ミカは龍が大好物で、龍に関する知識や経験が人一倍あるんです。龍を一撃で倒すことができたり、捕った龍を食べることに目がないんですけど、龍を狩るのは生半可な覚悟じゃできないってことも理解しているようなところがあって。彼なりの信念があるんです。

同性ながら惹かれるものがあって、これはぜひ演じさせていただきたいと思いました。普段は緊張感がなくても、やるときはやるようなキャラクターが僕はすごく好きで。たとえば『シティーハンター』の冴羽 獠とかもそうですよね(笑)。ミカはそれに通ずるところがあって、すごくカッコいいなあと思いました。
振り幅が大きいキャラクターということで、演じていて難しかったところはありますか?
カッコ悪い部分とカッコいい部分が共存しているので、どちらかに偏りすぎてもいけないし…ただカッコいいだけ、ただゆるいだけじゃない、全体のバランスが難しかったです。だらしない顔をしているときは振りきってカッコ悪くして、龍と相対したときはカッコいいミカになる、そんなイメージで演じましたね。
カッコよさとは、どういったところから引き出して表現するのでしょうか?
危機に面したときに瞬間的に出る声だったり、仲間が傷つけられたときに瞬間的に出る怒声だったり。そういった、自然と出てくるものがミカのカッコよさにつながると思うので、“場面に沿った芝居をしっかりやる”というのを意識していました。

とくにタキタに「死ぬぞ」と忠告するシーンや、怪音波を発する龍と相対して大ピンチになるエピソードなど、龍捕りの場面はどれもすごく印象に残っています。
雨宮 天さん演じるタキタ(まだ龍を狩る経験が浅い女性乗組員)との掛け合いが多いですが、タキタというキャラクターについてはどのような印象を持ちましたか?
髪の毛のニオイを気にしたりと、普通の女の子らしい一面がありつつ、強い一面もあって。ミカとしても頼りにしている部分があると思いますし、タキタに元気がないと、ミカもなんとなく気になるという…。クィン・ザザ号のメンバーのなかで、みんなのバランスを保ってくれるキャラクターでもあると思います。

僕個人としては、捕龍船から街に降りたときにとりあえず着替えてくるみたいな、ちょっとしたときに見せる女の子らしい一面がすごく気に入ってます。タキタはとても気になる子ですね。

声優業は毎日、就職活動をするようなもの

今作もそうですが、遡れば『図書館戦争』の堂上 篤や、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズのカミュもそうですし、最近でも『はたらく細胞』の白血球や『Fairy gone フェアリーゴーン』のフリー・アンダーバーなど、前野さんが演じるキャラクターは新人や後輩といった存在に自らの背中を見せて導く役どころが多い印象です。
たしかに、多いかもしれないですね。
「そういったニーズが自分にあるのかな?」と実感されていたりするのでしょうか?
いや、たまたまだと思います。「これは自分が得意なタイプの役だな」とかって、狙うようなことはまったくありませんし。本当にたまたま、キャラクターがそういう設定で、そういう立ち位置だったという部分が大きいと思います。

でも、もし、どなたかが僕のことをそう捉えてキャスティングしてくださったのだとしたら、それは嬉しいなと思います。
ちなみに、今回オーディションで決定した理由はお聞きになられましたか?
僕以外にも最終候補として残った方たちがいらっしゃって、そのなかから僕が選ばれたというのは音響打ち上げのときにうかがったのですが、何が決め手になったかは…怖くて聞けなかったですね(笑)。
前野さんも先ほど「個性的」とおっしゃったように、クィン・ザザのメンバーはそれぞれ“自分らしく”生きている印象です。前野さんは“自分らしくいられる秘訣”とは何だと思いますか?
これは難しいなあ。自分らしくいられる秘訣かあ…これ、唐突に思うかもしれないですけど、「貯金をすること」ですね。

僕らの仕事って、ある意味“毎日、就職活動をする”みたいな感じなんですね。レギュラーとして出させていただいている作品もいつかは終わってしまうので、また新しいレギュラーをいただくために頑張っていくんですが…オーディションでいい結果が出ない時期ももちろんあります。

そういったときに、周りに引っ張られずに自分の表現を保っていられるためにも、貯金があれば「自分にはまだこれだけ蓄えがあるから大丈夫だ、落ち着こう」と余裕を持つことができるんじゃないかと思うんです。自分の表現を忘れずに貫いていこうと思える。

なので、自分らしくいる秘訣は貯金かなと、僕は思いますね。だからこそ、いただいたお仕事を日々大事に取り組んでいますし、それでいただくギャランティも大事に貯金しているんです。
「毎日、就職活動をする」とのことですが、声優としていま自分に足りていないと感じるところなどはありますか?
足りないところはたくさんあると思いますが、足りない面を無理に補うより、いま持っている“自分の強み”をさらに伸ばしていきたいですね。先ほど「後輩に背中を見せる役どころが多い印象」とおっしゃっていただきましたが、「◯◯な役どころといえば、前野しかいないよね」って頼りにしていただけるように。もちろん、どんな作品のどんなポジションで適任と思っていただけるかは、ケース・バイ・ケースだと思いますけれど。

もしいま、僕の能力のなかでランクAと捉えていただけるポイントがあるとしたら、それをさらにS、SS、トリプルSといったランクにまで伸ばしていきたいと思います。

距離感や衝撃によって声や息は変化する。プレスコの難しさ

今回の収録はプレスコ方式(先にセリフを収録して、声の芝居に合わせてアニメーションを作る手法)で行われたそうですね。
はい。通常のアニメーションはある程度絵コンテができた状態に声をあてますが、今回は僕らが思い描いた芝居を元に画を作っていただくという形式の収録だったので…とくにアクションシーンが難しかったんですが、「みなさんが感じるようにお芝居していただければ、あとからこちらでお芝居に沿った画をつけますから」と制作陣のみなさんに言っていただいたので、原作を読んでイメージを湧かせながら演じさせていただきました。
「アクションシーンが難しい」というのは、具体的には?
たとえば、ジップラインみたいな装置を使って船から龍に向かっていって、着地するときの息がどの程度あればいいのかとか。距離や衝撃はどのくらいなのか、自分たちのイメージでやってみるしかなかったので、難しかったですね。キャラクター同士の距離感がどのくらいあるのかっていうのも、掛け合いのなかで想像していく必要があったので難しかったです。
収録現場の雰囲気はいかがでしたか?
すごくいいチームワークだったと思います。抜き録りの人があまりいなくて、みんなでそろって収録させていただけたので、画がない状態でも情景がすごくイメージしやすかったです。
完成した作品を見てどのように感じましたか?
「あ、よかった。ちゃんと物語にハマる芝居になってたな」と安心できたのが正直なところですね。自分のアクションやアドリブが合っているのかどうか、不安なところがあったんです。でも自分の芝居と画を照らし合わせて見たら、「あ、スゴい。ピッタリだ!」と感動しました。
龍のデザインも斬新ですよね。いわゆる“ドラゴン”といった外見とはまた違う感じのタイプもいて、それぞれの龍に個性があります。
そうなんですよ。龍といったらドラゴン系の形状を思い浮かべがちですが、『空挺ドラゴンズ』に出てくる龍はそれぞれに形態も特色も違いますから。『ドラゴンボール』の神龍(シェンロン)みたいな龍だと、解体して食べたらバチが当たるんじゃないかと思っちゃいますが(笑)、『空挺ドラゴンズ』の龍は、たしかに食料として食べてもいいような感じはありますよね。

小さいものから大きいものまで、攻撃方法もそれぞれ違っていて、それらをクィン・ザザのメンバーがどうやって仕留めていくのか、戦闘シーンはまさに見どころではないでしょうか。
撮影では、2020年のスタートにちなんで、紙飛行機の内側に“今年の抱負”を書いてもらった。

どんな状況、どんな仕事でも楽しめる余裕を持ちたい

『空挺ドラゴンズ』では料理シーンも見どころですが、前野さんが2019年に食べたなかで、とくにおいしかったものは何でしょうか?
2019年に食べたなかで、ですか…そうだなあ。先日、『空挺ドラゴンズ』のレシピを再現するWEB動画企画『MIKA’Sキッチン』の収録がありまして。そのとき作った料理は、「家でも作ってみようかな?」と思うくらいおいしかったですね。
原作に龍を使った料理のレシピが載っているのも斬新ですよね。
そうなんです。料理に造詣の深い桑原先生が書いた原作のレシピを元に、豚肉や鶏肉で代用して、いくつかの料理を作ってみるという企画をやったんです。

なかでもカツレツが本当においしくて! 僕も実際に調理をしましたが、「たいめいけん」(洋食屋)の茂出木(浩司)さんにご協力いただきまして、まあ、ほぼ茂出木さんのお力なのですが(笑)。
前野さんがプライベートで作った料理で、おいしかったのは?
どうだろう、いろいろ作ってるからなあ。最近だと豚キムチがおいしくできましたね。すごく簡単なわりに栄養価も高いですし、時間がないときにもピッタリですね。
龍の肉に目がないミカですが、前野さんが「これに目がない」という食べものは何でしょうか?
今はなんだろうなあ? 前はイカが本当に好きで目がなかったんですが、最近は…ラム肉でしょうか。鳥海(浩輔)さんと北海道にロケに行ったときに、いいお店を教えていただいて。都内でもけっこう食べに行きました。
『空挺ドラゴンズ』にも通ずる感じがしますね。
あ、そうかもしれませんね。ジビエ感がありますから(笑)。
空を駆ける船が舞台ですが、前野さんご自身は以前、飛行機が苦手だったそうで…。
苦手でしたねえ。嫌でした(笑)。
最近は克服されましたか?
一度ロングフライトを経験して、そんなに危険な感じもしなかったですし、快適な空の旅ができたので、それ以降は苦手意識が薄れてきたと思います。
撮影では紙飛行機に2020年の抱負を書いていただきましたが、「楽しむ!!」と。
そうですね。状況を楽しむといいますか…いいときもあれば、悪いときもあるのは当然のことですから。

先ほども貯金の話をしましたが、オーディションの合否の状況が芳しくないときでも、楽しむ余裕を持ちたいですよね。いろんなことに視野を広げて、どんな状況、どんな仕事でも楽しめる余裕を持てるように、「楽しむ!!」と書かせていただきました。
具体的にチャレンジしてみたいことはありますか?
これまでやってこなかった分野も含めて、積極的に挑戦したいと思っています。たとえば、いまは声優さんもYouTubeに動画を上げていたりしますよね。もしチャンスがあれば勉強してみたいです。そうやって、いままでトライしてこなかったジャンルを勉強する時間も楽しめたらいいなと思います。
前野智昭(まえの・ともあき)
5月26日生まれ。茨城県出身。A型。主な出演作に『図書館戦争』(堂上 篤役)、『暁のヨナ』(ハク役)、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(カミュ役)、『刀剣乱舞』シリーズ(山姥切国広役)、『はたらく細胞』(白血球〈好中球〉役)、『Fairy gone フェアリーゴーン』(フリー・アンダーバー役)など。

    「2020冬のアニメ」特集一覧

    出演作品

    TVアニメ『空挺ドラゴンズ』
    https://drifting-dragons.jp/
    1月8日(水)よりフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜24:55から放送開始
    NETFLIX にて1月9日(木)より日本先行全話一挙配信
    関西テレビ:毎週木曜日25:55〜26:25
    東海テレビ:毎週土曜日25:55〜26:25
    テレビ西日本:毎週水曜日26:05〜26:35
    北海道文化放送:毎週日曜日25:15〜25:45
    BSフジ:毎週水曜日24:00〜24:30
    ※放送時間は変更になる場合がございます。放送情報の詳細は各局HPをご確認ください。

    ©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

    サイン入りポラプレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、前野智昭さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
    ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
    受付期間
    2020年1月7日(火)18:00〜1月13日(月・祝)18:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/1月14日(火)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月14日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月17日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
    キャンペーン規約
    • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
    • 賞品発送先は日本国内のみです。
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