座長として、ブレずにいい芝居をし続けること。津田健次郎の揺るぎないプロ意識

近年は、『スター・ウォーズ』カイロ・レンの吹き替えや、アニメ『ゴールデンカムイ』の尾形百之助役、『無限の住人-IMMORTAL-』の万次役、ゲーム『Death strandhing』のサム・ポーター・ブリッジズ役、 『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の葦名弦一郎役などを中心に数多くのキャラクターを担当してきた津田健次郎。

座長のいちばん大事な役割は、ブレずにいい芝居をし続けることだと語る。

彼が「脚本構造と映像の演出、すべてがおもしろい」と口にするほどシンパシーを感じているアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』。そのインタビューを通して、津田の感性に迫ってみたい。

撮影/増田 慶 取材・文/佐久間裕子 制作/アンファン

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SFは現実から遠いところに惹かれる。星 新一がきっかけ

津田さんはSF作品がお好きと聞いたのですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
小学生の頃、星 新一さんにすごくハマって、図書館でよく読んでいたんです。星さんの作品はショートショートが多いし、どのお話がどの本に収録されていたか、細かいことまでは覚えていないんですが、影響は大きかったです。
SFというジャンルが好きな理由は?
現実から遠いところがおもしろいのかなと思っています。
壮大なスペースオペラ的なものよりは、日常のなかに存在する非現実が描かれたお話のほうがお好きですか?
壮大なお話も好きですよ。それこそ小学生の頃に『スター・ウォーズ』を観て、おもしろいなあと思ったりしていました。
SFに限らず小説もお好きですか?
そうですね。おそらく童話とか、そういうものから入っていると思うんですが、小学生の頃からよく読んでいました。今も小説は好きで読みますけど…さすがに冊数は減ってしまいましたね。それでも極力読むようにはしています。

酒井戸のオーディションも受けたいと自ら申し出た

1月5日から、あおきえい監督の最新作で、舞城王太郎さんがシリーズ構成と脚本を手がけるオリジナルアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』がスタートしました。津田さんは名探偵・酒井戸/鳴瓢秋人を演じていますが、作品との出会いは?
オーディションのときでした。オリジナル作品なので、ほぼ情報がない状態でオーディションを受けました。資料はキャラ絵が数点、あとはセリフのみという感じでした。
数点のキャラ絵とセリフだけでも、「どうしても出演したい」という気持ちになりましたか?
なりました。それだけの情報でも、この作品はちょっと様子がおかしかったので(笑)。僕は様子がおかしいものが好きなので、いいニオイがすると言いますか…。
おもしろそうなニオイがするぞ、と。
おもしろそうなニオイがしていました。とくに富久田保津(声/竹内良太)のキャラ絵は頭に穴が開いていて、「これはヤバい作品だぞ」と。
キャラ絵を見ただけでもヤバさが伝わってきたと。
セリフもヤバかったですね。「ここから入った風がこっちに抜ける時、世界は少し綺麗になる」(2話)という富久田のセリフはとくに。尖った作品だなというのが伝わってきました。
▲名探偵・酒井戸(声/津田健次郎)
▲鳴瓢秋人(声/津田健次郎)
▲百貴船太郎(声/細谷佳正)
▲富久田保津(声/竹内良太)
オーディションはいかがでしたか?
じつは僕、最初は、百貴(声/細谷佳正)と富久田でオーディションのお話をいただいたんです。その資料のなかに名探偵:酒井戸/鳴瓢秋人も書いてあって、「この役のオーディションも受けたいな」と思って、スタジオオーディションに行ったとき、「これも演じていいですか?」とお願いしたんです。リクエストされていない役を自分から申し出るのはあまりよろしくないかなとは思いつつも、どうしても演じてみたくて…。

そうしたら、「どうぞ」と受け入れてくださって。酒井戸は、1話で出てきた「俺は世界の在り方すらも疑っていい」というセリフなどを演じました。
オーディションの前はどんな準備をされたんでしょうか?
このキャラクターには何かの衝動があるんだろうなとか、音色はきっとこうだろうなとか、それくらいです。事前に準備しすぎると、たとえば音響監督さんからの「もっとこうしてください」といったリクエストに、その場で応えられなくなる場合もあるので。
名探偵・酒井戸は、これまでの津田さんの役とは、声のトーンが少し違う印象を受けました。
酒井戸は、ちょっと高いかもしれないですね。少し軽いといいますか。鳴瓢はもっと重めで、ボソボソ話している感じです。
1話の冒頭から名探偵・酒井戸の身体がバラバラだったり、非現実的な情報が立て続けに入ってくるので、演じるのも難しそうですが。
1話の台本の段階で、酒井戸のキャラクター性はなんとなく出ているといいますか。処理能力のスピードが高くて、でもすごく飄々としているというか、フラットなんです。それが、酒井戸の酒井戸たる感じではないかと思います。
津田さんは、名探偵・酒井戸をどんな存在だと捉えて演じていますか?
酒井戸は“イド”のなかにいて、外の現実世界には彼と対になる鳴瓢というキャラクターがいるこのふたりには共通項もあるけれども、別人格でもあるという、僕はそんな考え方をしています。基本的には2役演じているイメージですけれども、地続きの部分もあり…そんな感じですね。
監督や音響監督から、名探偵・酒井戸について何かリクエストはありましたか?
初回の収録で監督から、「もう少しキメちゃってください」とリクエストがありました。そこで、酒井戸はどこかヒロイックなキャラクターなんだなと気づきました。

もともと絵柄がポップなのもあり、あまり重々しくなく、軽めでフラットな印象だったんですね。何かを感じるたびに心が動くタイプではなく、何事も冷静に受け止めて、淡々と処理していく。そんなクールなイメージがありました。

でも、1話の後半でバラバラになった世界を集めて構築していくあたりからは、急にアクション要素が強くなっていったんですよね。そこで、「これは静かに進んでいく探偵モノであると同時に、エンターテインメントの要素もすごくあるんだな」と感じたんです。だから酒井戸はヒロイックな要素も持っているんだなと。

酒井戸にとって本当に大事な部分って、もっと話数が進んでから出てくるんです。序盤では、キメるところはちゃんとキメないと締まらないなと思いつつ、ヒロイックな部分が立ちすぎないように、演じてきました。

1話の収録が終わった瞬間、細谷佳正と「いい意味でヤバい」

1〜3話の収録を振り返って、アフレコ秘話を教えてください。
細谷くんが隣に座っていたんですけど、1話が終わった瞬間に、ふたりで「これ…おもしろいね」と話しました。

「あれ? これ何か違うニオイがするね」と。ふたりとも、「いい意味でヤバいね、これ」と(笑)。
どんなところでそう感じたんですか?
まず現場に入ったら、普通のアフレコマイクではなく、映画の音声で使うガンマイクが準備してあって。おもしろそうなことをやろうとしている、新しいものを作ろうとしていると感じました。

会話はガンマイクで録って、モノローグを録るときは、もうひとつ小さいブースに移動してアフレコマイクで録りました。もうひとつマイクを用意するのって手間ですから、そういうところだけでもこだわりを見せていると。

あと、僕はこの作品では、極力生々しくしゃべりたいと思っていて、句読点とかを無視したりするんですね。でもほかの現場でそういうことをすると、一度試してはみてもNGになることが多いんです。この現場では全然そういうNGはなくて、そのジャッジ自体ちょっとめずらしいんですよ。「ブレス位置とか、気にしないでください」って。
印象的だったシーンやセリフは?
酒井戸が自分で「名探偵」って言っちゃう感じとか、おもしろいですよね(笑)。そのへんは、脚本の舞城さんなりのユーモアなのかなと。

それと、2話で鳴瓢と百貴が対峙するシーンは、そこだけ完全に会話劇のようでした。アクションや動きを見せるシーンではないので、演出としてはカッティングで見せるくらいしかない場面なのですが、あの会話劇を細谷くんとふたりで演らせていただけたのは、非常に印象深かったですね。

2話以降は、「鳴瓢と百貴に何かあるんだな」というのがわかってきましたよね。ふたりの関係性は、近いようで遠い。ものすごくお互いを知っているんだろうけど距離感がヘンだし、一方はどうやら犯罪者で、もう一方は警察組織の人間。そこに人間ドラマもあるのねって気づかされますし。

思念の世界に入っていく多層SFフィクションでもあり、アメリカの刑事ドラマのように連続殺人鬼を追うミステリー要素もあり。脚本構造と映像の演出、ほとんどすべてがおもしろい作品なんですよ。
ボーッと観ていると置いていかれる感じもしました(笑)。
僕は、置いていかれるのをあまり気にせず観ていただいていいかなと思います。理解しづらくても、「なるほど、何か大変なことが起きたんだな」、「きっとこいつが怪しいな」、「世界が何かスゴいな」…そういう感じでラフに観ていただいて、楽しめると思いますよ。
わからない部分がフックになって、つい翌週も観なければ、という気持ちになるというか。
すべてを理解しようとしないで、わからない情報はいったん棚上げして、オンタイムで追いかけていただければと思います。

インプットを再開して、リニューアルしていけたら

座長として意識していることはありますか?
僕は現場の団結力みたいなものをあまり重要視しないんです。プロフェッショナルが集まる現場だから、団結しようがしまいが、いいパフォーマンスをすればそれでいい。どちらかというと個人主義で。

でも、『イド:インヴェイデッド』は楽しくなっちゃって。初めてお仕事をする方がほとんどだったのですが、あおき監督も、舞城さんも、この作品はどんな人たちが作っているんだろう?とすごく興味が湧きました。

じゃあ座長的なことをしてみるかと、「みなさん、昼飯を食べに行きませんか」とお誘いして、行ったりしていました。こういう楽しさもあるって思いましたね。
そうだったんですね。
でも本来、座長のいちばん大事な役割は、ブレずにいるとか、いい芝居をし続けるとか、作品の柱になることですよね。主人公の芝居が定まっていないと、全体が揺らいでしまう。監督と主役は、作品全体を支えるポジションなんだと思います。
では津田さんが、人と接したり、行動するときに心がけていることはありますか?
時間がないことを言い訳にして、インプットするのをずっとサボっていた部分があるんです。だから今は、改めてたくさんインプットしていこうかなと思っています。それは作品を観る、読む、聴くことに限らず、場所を変えて違う景色を観ることも含めて。それがリフレッシュや、ある種のリニューアルにつながっていけばいいですね。

インスタグラムは気の迷い。基本的にスナップが好き

2019年6月から期間限定でインスタグラムを始めていらっしゃいますよね。何かきっかけがあったのですか?
何もないですね、気の迷いです。僕は気分で生きているところがあるので。もともと撮りためていた写真があって、発表するほどのものでもないと思っていて。そのときに、「インスタだったらおもしろいかも」と。
気になるものがあったら撮影してインスタにアップ!という感じではないんですね。
カメラはいつも持ち歩いているんです。コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)なんですけど、基本的にスナップ(下準備をせずに、日常で出会った光景を一瞬のうちに撮影すること)が好きで。
旅先で撮影されたりも?
インスタにはパリとシンガポールの写真もあるんですが、あれはずいぶん前ですね。普段、歩いているときに撮るほうが圧倒的に多いですね。
スナップ以外に興味があるものは?
僕は趣味として独学でしかカメラをやっていないんですけど、本当はポートレートにも興味があるんですよ。でも照明とかも勉強したことがないので、照明の組み方など覚えたいですね。
津田健次郎(つだ・けんじろう)
6月11日生まれ。大阪府出身。O型。主な出演作に、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(海馬瀬人役)、『テニスの王子様』シリーズ(乾 貞治役)、『ACCA13区監察課』(ニーノ役)、『ゴールデンカムイ』(尾形百之助役)、『スター・ウォーズ』シリーズ(カイロ・レン役)、『無限の住人-IMMORTAL-』(万次役)、『Death strandhing』(サム・ポーター・ブリッジズ役)、ほか。

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出演作品

TVアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』
1月5日(日)より TOKYO MX、BS11、ひかりTV ほかにて毎週日曜に放送・配信中
https://id-invaded-anime.com/

©IDDU/ID:INVADED Society

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、津田健次郎さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年1月17日(金)12:00〜1月23日(木)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/1月24日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月24日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月27日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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