年齢と経験を重ねて感じる、成長と変化。KENNが語る『明治東亰恋伽』約7年の集大成

ライブドアニュースですと挨拶すると、「KENNです、よろしくお願いします」と立ち上がって頭を下げた。撮影のときは、自らテスト撮影をチェックして、意図を理解したうえでカメラマンに応じる。「女性だったら、どのキャラにキュンとする?」という“もしも”話にも、真剣な表情のまま、妄想力をフル回転させ回答する。KENNは真面目で誠実な人だ。

そんな彼が足掛け7年、力を注いできた“めいこい”がTVアニメ化。物事にストイックなのは演じている菱田春草と共通する点かと思いきや、本当は、自分に甘いから余計に厳しくしているだけなんですよ、と教えてくれた。

撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/アンファン
ヘアメイク/大橋美沙子

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春草の“不器用さ”をどの程度アウトプットするか

『明治東亰恋伽(めいじとうきょうれんか)』は、明治時代の東亰にタイムスリップした主人公が史実上の偉人たちと出会い、恋に落ちるタイムスリップ恋愛ファンタジーゲーム。2011年に携帯ゲーム配信版からスタートし、2013年にはPSP版がリリースされると、ドラマCD、キャラクターソング、ミュージカルなど、幅広くメディアミックスを展開するコンテンツへと成長した。

KENNが演じているのは、寡黙でクールな美術学生・菱田春草。感情をあまり表に出さない性格ゆえ、誤解されやすいところもあるが、優しい心根の持ち主である。
これまでもさまざまなメディアで展開されてきた『明治東亰恋伽』ですが、TVアニメは今回が初となります。
TVアニメは今までとはまた少し違ったお話で、とても新鮮な感じがしました。1話ずつ台本をいただくので、視聴者の方々と同じように「どうなるんだろう?」と毎週楽しみに待っています。
KENNさん演じる菱田春草は実在の人物ということで、演じるときに意識した点はありますか?
ゲーム版のアフレコをするよりも前に、初めて『明治東亰恋伽』のお話をいただいたとき、スタッフさんとディスカッションしたんです。おっしゃるとおり、実在した人物を演じる点についてお伺いしたところ、「フィクションと割り切っていただいて大丈夫です」と。

春草だったら画家、鴎外だったら軍医といった特徴はありますが、もっとパーソナルな、細かいニュアンスは僕ら役者が構築していって大丈夫とのことだったので、自由に演じさせていただきました。

それでも最初は、「菱田春草という人が歩んできた軌跡をなぞったほうがいいのかな?」とも思いましたが、キャラクターのイラストやゲームのシナリオがありましたから、そこからインスピレーションを得て、演じていきました。
そうして演じた、“KENNさんの菱田春草”とはどんなキャラクターでしょう?
ゲームの脚本から感じとった春草は、けっこうぶっきらぼうというか。内側には情熱的な部分がありますが、アウトプットとしては相手に冷たくしてしまったり、言葉数が足りなかったり、テンションが低かったりするところがあるので、そういった部分をどの程度声の芝居に出したらいいのか、最初は探りながら。

冷たすぎるとただの冷たい人になってしまうし、最初からデレデレするのもおかしいし。10代の若者の“不器用さ”みたいなところを、いろいろと試しながらアプローチしていきました。
今回のTVシリーズで春草を演じる際に、その“アウトプットの程度”を変えた部分はありますか?
第1話の登場シーンは、監督から「あまり冷たくしすぎないように」とディレクションをいただきました。ゲームでのアプローチに寄せて演じたつもりだったのですが、少し冷たすぎたようで、少し柔らかくしていますね。

そもそも、ゲームで演じたのがもう7年前。この7年で僕自身の声も低くなってきているので、冷たい印象になったのは、そういった影響もあったのかなとも思います。

好きな人に悪態をついてしまう気持ちは「わかる」

『明治東亰恋伽』には、春草のほかにも、史実上の人物をモチーフにしたキャラが登場する。小説家で医者で官僚というスーパーエリート・森 鴎外(声/浪川大輔)、劇団を主宰する役者・川上音二郎(声/鳥海浩輔)、戯曲家を目指す泉 鏡花(声/岡本信彦)、警視庁に勤務する厳格な警察官・藤田五郎(声/福山 潤)、ギリシャ生まれでアイルランド育ちの英語講師・小泉八雲(声/立花慎之介)など、個性あふれるイケメンぞろい。
いろんなタイプのイケメンが登場する中で、春草に選ばれた配役について、どのように感じましたか?
当時は僕、物静かな役ってあまり演じていなかったと思うので、新鮮でしたね。でも、僕自身としては、「鴎外さんか春草か」で言ったら春草タイプだと思うので、自然にスッとできたような気がします。主人公に対しての気持ちも、「わからなくはないな」と。
たとえば、どういった部分でしょう?
好きな人に対して、ちょっと悪態をついてしまう春草の気持ちはすごくわかるし……あ、でも僕は態度に出るタイプなので、すぐに好きだってバレると思います(笑)。
豪華キャスト陣がメインキャラクターを担当されていますが、もしKENNさんが女性だったら、どの偉人にキュンとしますか?
贅沢だなぁ(笑)。ん〜、立花慎之介さんが演じていらっしゃる、小泉八雲さんかな? 普段はすごくテンションが高くて、英語交じりの言葉で面白いことばかり言っている。そんな人が急にシリアスに口説いてきたら、そのギャップにやられると思いますね。そういう感じ……良くないですか?(笑)
ギャップ萌えですね(笑)。
しかも、ふたりきりになったときに、それをやってほしいんですよ。わかります?(笑)
わかります(笑)。
みんなの前でいくら口説かれても、やすやすと「はい」って頷けないじゃないですか。軽いとも思われたくないし、自分の心を見透かされてしまったようで恥ずかしいし。だから、ある程度関係が深まっていって……。あ〜逆に、深まってないほうがいいのかな? 友達だと思ってたのに、ふたりっきりのときに急に真面目に口説いてくる感じ……良くないですか?
いいですね(笑)。それが八雲さんみたいなタイプだったらとくに。
そう。自分が女の子で、イケメンの八雲さんにそういう態度を取られたら、いいですねぇ(笑)。
春草はどうでしょう?
ゲームの後半で、主人公のことをどんどん好きになっていって、わかりやすいアプローチになってきたぐらいのところが好きですね。アウトプットの熱量というか、僕が女の子だったらキュンとするだろうなと思います。

一番の特等席で、先輩方のお芝居にキュンキュンしています

アフレコ現場はどんな雰囲気ですか?
みなさんと一緒にアニメのアフレコをするのは2016年の劇場版以来ですが、イベントでもご一緒させていただいていますし、生放送のラジオも月1でやっているので、『明治東亰恋伽』に携わる機会は多いんです。なので、チームワークもすごく良くて、肩ひじ張らずにいられる、いい現場だと思います。座長の浪川さんも、いい雰囲気を作ってくださっています。
先輩方のお芝居を見ていて、改めて感じたことはありますか?
やっぱりキュンキュンしますよね(笑)。第1話は鴎外のセリフから始まりますが、浪川さんのお芝居が本当にスゴくて。ほかのみなさんも、それぞれに魅力的です。

鏡花ちゃんはとっても素敵だし、音二郎さんも「こんなに大人で、器が広い人っていいな」と思いますし、小泉さんはさきほどお話した通りですし。藤田さんもね、春草とはまた違った不器用さを持つ大人な男性ですが、じつは家庭的で心配性なところもキュンとくる。

みなさんが目の前でお芝居されている背中を僕は観ることができるので、一番の特等席だと思います。毎週とても幸せですし、勉強にもなります。
どういったところが勉強になりますか?
みなさん声優として唯一無二の存在でいらっしゃるので、役に対するアプローチの仕方もそれぞれなんですよね。「自分だったらこうやるけど、この先輩はこういうふうに表現されるんだ」って、すごく勉強になります。

7年前から変わらないイントロを聞いて、1秒で大好きな曲に

これまでも『明治東亰恋伽』シリーズの主題歌を担当されていますが、TVアニメのOPテーマ『月灯りの狂詩曲(ラプソディア)』も歌っていらっしゃいます。楽曲の印象はいかがですか?
『明治東亰恋伽』のいちファンとして、最初の1秒で大好きになりました。というのも、イントロ部分に7年前から使われているメインテーマのフレーズを持ってきていて。「あ! あの馴染みのある、キャッチーなフレーズがきたー!」と思っていたら、そこからさらに曲がどんどん展開していくので、新鮮味がぶわーっと感じられるんです。すごく“いいとこ取り”な感じがして、『明治東亰恋伽』の集大成とも言える1曲になっていると思います。
ジャズっぽい雰囲気全開で始まって、力強くなるところがあったり、吐息交じりに歌うところもあったりで、本当にどんどん展開していく曲だなと感じました。
そうなんですよ。いろんな表現ができるので、歌っていても楽しいですね。

歌詞もすごくこだわってくださっていて。レコーディングのときに、「傍にいて“ほしい”」か「傍にいて“おくれ”」か最後まで悩んだ箇所があって、両方のテイクを録ったんです。作詞のMIKOTOさんも交えてスタッフさんとその場で相談しながら録っていって、女性のスタッフさんに両方聴いていただいて、「どのテイクがいい?」って。そうやって、みんなで一緒に決めていった感じですね。
EDテーマ『星屑の詠み人』は浪川さんとのデュエット曲です。
これもまたいい曲ですよね〜。三拍子ながらも展開が速くて。『星屑の詠み人』は春草として歌わせていただくので、以前のソロ曲『飛花落葉』を身体になじませてからレコーディングに向かいました。現場でスタッフさんとお話して、「今回は『飛花落葉』のときとはまた違った春草が出せるといいよね」ということになったので、アタック感を少しだけ強めにしています。

ただ、もともと春草が持っている、内に秘めたようなキャラクター性も出したかったので、落ちサビではグッと抑えて歌ったりしています。久しぶりの鴎外とのデュエットということで、個人的にはすごくうれしかったので、早く完成版を聴きたいですね。
春草として歌うときは抑えることが多い?
引き算する感じですかね。本当は思いっきり歌い上げたいフレーズでも、少し抑えたり、音としての丸みをつけたり。『飛花落葉』のときはとくに意識しました。ビブラートを多用せずロングトーンでストレートに歌うのも春草っぽいんじゃないかと。『飛花落葉』ではビブラートをあまり使っていませんが、『星屑の詠み人』はある程度疾走感もあったので、『飛花落葉』よりは使っていると思います。

性根はさぼりがちなので、「自分に甘えない」と意識している

ところでKENNさんは、今年で声優活動15周年を迎えられます。
あ、そうなんですか? 数えていないので、わからないです(笑)。
さまざまな役柄を演じてきた中で、成長や変化を感じる部分はありますか?
『明治東亰恋伽』もそうですが、長く演じさせていただいている作品において、当時は「今の自分よりもちょっと大人な、背伸びした感じの役だな」と思っていたキャラクターが、今はスッと出せるようになってきたんですね。現場でそういうことをふと感じたときに、「前とは変わったな」と。年齢を重ねて地声が低くなったということもありますね。
気持ちのうえでの変化もある?
そうですね。キャラクターの気持ちがよりわかるようになったり、理解するまでのスピードが速くなったというか。演じる役の幅が広がったことは実感します。
毎回お芝居の印象が違うので、「あれ? このキャラクターってKENNさんが演じていたんだ」と感じることが多いです。
ありがとうございます。いろんな役を演じさせていただけるのはありがたいですし、楽しいです。「これってKENNらしいよね」とファンの方が思ってくださるキャラクターが、それぞれ違っているのがまた面白いなと思っていて。

「これってKENNなんだ。わからなかった!」とか「意外にこういうキャラもアリなんだね」と感じていただけたらうれしいですね。声のお仕事は、生身の芝居よりも幅広いキャラクターを演じることができます。僕はそこに魅力を感じているので、挑戦できる限り、いろいろな役をやってみたいですね。
昨年の10月に柿原徹也さんの事務所に移籍されて、公式ホームページのインタビューでは「(ここからが)第2章」とおっしゃっていました。
15年在籍した前の事務所が第1章で、Zynchroが第2章という感覚ですね。

移籍は、いろんなタイミングが重なったことが大きかったと思います。てっちゃん(柿原徹也)とは個人的にも仲良くさせてもらっていたし、新しいフィールドで活動してみたいと思ったことと、一緒にやりたい人が近くにいたことなどを含めて、本当にタイミングが合ったという感じですね。
移籍から2ヶ月ですが(※取材が行われたのは昨年の11月下旬)、第2章がスタートして、気持ちのうえで変わってきたことはありますか?
まだそんなに実感がないんですよね。現場のキャスト表に事務所名が書いてあるんですが、僕のところに「Zynchro」って書いてあるのを見ると、「あ、移籍したんだな」って思います(笑)。
移籍後に「これをやってみたい」ということはありますか?
まだ具体的なことはないです。今まで個人で活動してきた柿原も、僕も金田(アキ)も、お互いにできることの幅が広がると思うので、これまでとは違うフィールドに立った僕たちが、そこから見える景色の中で新しいことにチャレンジしていけたらいいなと思います。今、僕から言えるのは、それぐらいですね。
KENNさんが仕事をするうえで、常に意識していることはありますか?
お仕事をさせていただくうえでは、「自分なりに物事に真摯に向き合う」ということでしょうか。それから、「自分に甘えない」ですね。これは仕事に限らず、僕はたぶん、放っておくとすごく自分に甘いんだと思います。

僕のことを「ストイック」と言ってくださる方も多いんですが、じつは、もともと自分に甘いから余計に厳しくしているだけで。性根はさぼりがちなので(笑)、「おい、オマエちゃんとやれよ!」って自分に言い聞かせているようなところがあります。
KENN(けん)
3月24日生まれ。東京都出身。A型。主な出演作に『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』(遊城十代)、『宇宙兄弟』(南波日々人)、『境界の彼方』(神原秋人)、『アイドリッシュセブン』(四葉 環)、『覇穹 封神演義』(黄天化)、『Butlers〜千年百年物語〜』(藤代悠希)、『ピアノの森』(レフ・シマノフスキ)など。

    「2019冬のアニメ」特集一覧

    出演作品

    TVアニメ『明治東亰恋伽』
    1月9日(水)よりTOKYO MXほかにて毎週水曜日に放送中
    http://meikoi.com/tv-anime/


    © LOVE&ART/めいこい製作委員会

    CD情報

    TVアニメ『明治東亰恋伽』オープニングテーマ
    『月灯りの狂詩曲(ラプソディア)』
    1月30日(水)リリース
    唄:KENN 作詞:MIKOTO 作曲:小川智之

    【アーティスト盤】
    ¥1,200+tax

    サイン入りポラプレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、KENNさんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
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    受付期間
    2019年1月16日(水)12:00〜1月22日(火)12:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/1月23日(水)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月23日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月26日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
    キャンペーン規約
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