宮野真守が輝く理由──「好き」さえあれば、「苦しい」も「楽しい」に昇華できる

宮野真守はいつだって輝いている。幼い頃からエンターテインメントの世界に身を置き、“表現すること”を生業としてきた彼のパフォーマンスは、人々を楽しませ、感動させ、そして幸せにする。しかしそこには当然、彼にしかわからない苦悩や葛藤があった。それでも前を向いてつねに周囲を照らし続けてこられた理由はただひとつ、「この仕事が好き」という思いだった。

撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

「『プリキュア』15周年」特集一覧

憧れの『プリキュア』への出演依頼に「ついに来たな」

2004年からスタートした『プリキュア』シリーズの15周年記念作となる、『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』。ゲスト声優としてオファーが来たとき、どのように思われましたか?
「ついに来たな」と(笑)。やっぱり『プリキュア』は時代を担っている作品なので、いち視聴者として楽しみつつ、僕の近しい人たち……入野自由くんなどが妖精役で出演しているのを観て、「いいなあ〜、うらやましいなあ〜」って思っていたんですよね。僕も「ミポ―!」とか声に出して練習してみたりして(笑)。
宮野さんにとっても、憧れを抱くような作品だったのですね。
そうですね。初代の頃から気になっていましたし。この15周年というタイミングでゲストキャラとして出演させていただけたことが、本当に嬉しかったし光栄でしたね。

しかも僕が演じるミデンは、人型ではなくって(笑)。何だか可愛らしいフォルムのキャラクターだったので、喜びとともに、「どういうパフォーマンスができるのかなあ?」っていうワクワクがありました。
「初代の頃から気になっていた」とのことですが、『プリキュア』は女の子がガチで戦う作品として、当時からかなりのインパクトがありました。
そうなんですよ! そのガチ感がすごく面白かったというか、「ものすごいアニメが始まったな」と。戦いが本当に激しい肉弾戦で(笑)、効果音も「ドゴン!」と、けっこう重い感じなんですよね。ははは! それがすごくカッコよく映って、目が離せなかったなあ。

そんななかにも女の子のリアルな思春期の思いが……って僕はわかるわけじゃないんですけど(笑)、悩める女の子の思いがしっかり入っていて、そのうえでのああいった表現なので、かなりの衝撃を受けながら観ていましたね。
今回宮野さんが演じられた敵キャラクター・ミデンは、「プリキュアの想い出を奪い、相手の口癖や技をコピーする特殊能力の持ち主」とのことですが、演じる際に何を大事にされましたか?
そうだなあ……ネタバレにならない範囲でお伝えするのが難しいんですが(笑)、ミデンは人ではないものに感情が宿り、動き出したキャラクター。やっぱりそれってすごくファンタジーなんですよね。でもそこがアニメーションのいいところだと僕は思っていて。

人ではないものが意志を持って動いた瞬間から、個人としての感情が深く存在し始めるので……。彼の境遇において、なぜ苦しいのか、なぜ寂しいのか、なぜ欲するのか、なぜ愛されたいのか、なぜ愛したいのかというところを非常に大事にしました。個人として彼が感じるさまざまな思いを、ちゃんと自分の感情を動かして躍動させないといけないなと、宮野真守の全力をもって表現しようと考えていました。

“子ども向け”だからこそ、子ども向けの芝居ではいけない

「やっぱりプリキュアって、人として生きていくうえでの大事なメッセージが込められているんだな」と今作のセリフから感じました。なので、実際にお芝居をされているみなさんは、よりそういった思いを抱かれるのかなあと…。
そうですね。『HUGっと!プリキュア』のキュアエール(声/引坂理絵)の言葉に、「何でもできる、何でもなれる」っていうとっても前向きで温かい、素敵なメッセージがあるんですけど、ミデンも同じ言葉を言うんです。でも、本来の意味から大きく変わっていて。そこで「ああ、そういうことなんだ」って気付かされたというか…。
「そういうこと」とは?
「きちんと本質をとらえて言葉を抱かないと、その思いは武器になってしまう」という、大事なメッセージが込められていると思ったんです。他人をおとしいれてまで自分の思いを押し通してはいけないし、言葉の本質を間違えちゃいけないんだなって。そこを間違えると、こうも言葉の意味や印象が変わってしまうんだと…。

ただそれって、本当に些細なことなのかもしれない。思い自体にウソはなくても、伝える方法を間違えてしまったがために、ミデンはムキになってしまうんですよね。もしかしたら、世の中にはそういうことってたくさんあるかもしれないと思うと……本当に考えさせられるし、大人にも刺さるようなメッセージが込められた作品だなと、改めて感じました。
きっと子どもたちも、彼らならではの感性でそういったメッセージを受け取っていくのでしょうね。
そうですね。たとえば「方法を間違えちゃいけないんだ」っていうところまでは辿り着かなかったとしても、「プリキュアが頑張ってた」、「ミデンは怖いけど、辛そうだった」、「持ちものを大事にしよう」といった……気持ちの根本というか、温かい思いや優しさみたいなものを受け取ってもらえたらいいなと思います。
そういう部分で、演じる際にとくに意識した点はありますか?
以前お世話になったディレクターにアドバイスをいただいたことがあったんです。いわゆる“子ども向け”とカテゴライズされてしまう作品では「子ども向けにお芝居をしてはいけない。そういったお芝居は、子どもにこそバレてしまう。キミたちが本気でキャラクターに向かってその思いを表現して、全力でぶつかることが、結果的に子どもたちへのメッセージとなって伝わる」と。それは僕のなかでずっと大事にしています。

今回のミデンに関しても「もしかしたら、子どもたちのトラウマになるんじゃないかな?」ってぐらい怖い登場の仕方をするんですが(笑)、そういったところも含めてミデンの人生を、僕が全力で演じることに意味があると思って向かいました。なので、そこから受け取ってもらえるものがあるんじゃないかなって感じています。
制作側も、きっと「子ども向けだから」と思わずに全力で作っているんでしょうね。
あとやっぱり、家族で楽しめるのが『プリキュア』の素晴らしいところだと思います。子どもたち、大人たちがそれぞれに感じて持ち帰ってもらえるものがある。僕自身、こうやってお話させていただいているなかでも「いろいろと考えさせられたな」と思う部分が多いので、親子連れで観に行かれた方は、感じたことをお子さんとお話したら面白い話が聞けるかもしれない。

“自分の在り方”に悩み、「とんがってた」20歳

『プリキュア』が始まった15年前、ちょうど宮野さんは20歳でした。その頃の宮野さんは、どんな青年だったのでしょう?
うーん、何だろうな? ちゃんと“とんがってた”と思う。ははは! ちょうど、ミュージカル『テニスの王子様』とかにも出演していて、いろんな方と一緒になる機会が多くて。声優だけに限らず、俳優としても“自分の在り方”みたいなところで悩んでいたし、チャレンジしていたし、「ぜってぇ負けねえ!」って思っていたし。
もがいていたその時期から15年経ったいまでも、変わらない部分はありますか?
その頃、なぜモヤモヤしながらも頑張っていたのかというと、やっぱり……「この仕事が好きだ」という、一番大事な思いがあったからだと感じるんです。だからこそくやしいし、「うまくなりたい」、「もっといっぱい表現したい」という感情が生まれるんだと思うんです。そこが自分の根本にいつもあるんでしょうね。

本作に出演させていただくタイミングで、僕自身も音楽活動10周年という節目を迎えているんですが、20歳から今日に至るまでいろんな経験をさせていただいたときに、やっぱり……好きなことをやっているけれど、イコール楽しいだけではないということがたくさんあったなあとは思っていて…。
いつも明るく楽しそうにお仕事されている宮野さんにも、そういった思いがあったのですね。
そうですねえ。「“楽しい”だけではできないんだ」っていうことをすごく感じながら、僕はこの十数年間、仕事と向き合ってきたかもしれない。でも根本に「好き」という思いさえあれば、たとえ「楽しい」が「苦しい」に変わっても、また「楽しい」に昇華できるんだって。そういう思いがどこかにあったので、前向きに、負けずにやってこられたというのはありますね。

そういった変わらないものを携えたまま、人は経験して変わっていくんだと思うんです。その経験って“記憶”になって蓄積されていくもので、まさにその“記憶”がテーマになっている本作に触れることで、自分の記憶をちゃんと重ねていくことの大事さを改めて感じることができましたね。……って僕、すごくいいまとめ方をしてる!
いやあ、もう本当に(周りからも拍手が起こる)。
ははは! ありがとうございます。
宮野真守(みやの・まもる)
6月8日生まれ。埼玉県出身。B型。2001年に声優としてデビュー。主な出演作に『DEATH NOTE』(夜神 月)、『デュラララ!!』シリーズ(紀田正臣)、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(一ノ瀬トキヤ)、『ちはやふる』(真島太一)、『亜人』(永井 圭)、『文豪ストレイドッグス』(太宰 治)、『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』(ラインハルト・フォン・ローエングラム)など。2008年にアーティストデビュー。10月26日に『宮野真守ファースト写真集 Player』(主婦と生活社)の発売が決定している。

「『プリキュア』15周年」特集一覧

映画情報

『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』
2018年10月27日(土)全国ロードショー
http://www.precure-movie.com/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、宮野真守さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2018年10月25日(木)12:00〜10月31日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/11月1日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月1日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月4日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
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