未熟な僕を支えてくれてありがとう。古川 慎、2019年は「恩返しの1年に」

聞き惚れてしまうような心地良い声に、時折、豪快な笑い声をあげながらも、陽だまりのような温かい笑顔。インタビュー中は質問シートをしっかりと確認し、ひとつひとつ丁寧に答えていく。

声優、古川 慎。誰もがきっと彼のことを好きになり、応援したくなるだろう。そうして彼を応援する人たちがつないだ縁によって、「気づいたら、声優のお仕事をさせていただけるところまできていたんです」。

2011年に声優デビューし、昨年7月からは個人名義での音楽活動も開始した。活躍の幅が広がっているのは「周囲の人のおかげ」と彼は言うが、果たしてそれだけだろうか?

「どうやって発声をすれば、この役が生きている感じがするだろう?」──ひたむきにキャラクターと向き合い、悩み続ける彼の真摯な姿勢も大きな理由のひとつであろう。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

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憧れの人が載った一冊のパンフレットから、声優の道へ

そもそも、声優を志したきっかけは何だったのでしょうか?
「志した」という表現が、自分にはあまり当てはまらないんですよね。というのも、仲が良かった友達が「音楽系の専門学校に行こうかと思っている」と見せてくれたパンフレットに特別講師として緑川 光さんの名前が載っていて。「じゃあ、ちょっと行ってみよっかな」というところから始まっているんです。
もともと、緑川さんに憧れていらっしゃったそうですね。
5、6歳ぐらいのときに見ていた、アニメ『新機動戦記ガンダムW』の主人公、ヒイロ・ユイの声を緑川さんが担当されていたんですね。そのキャラクターの声がめちゃくちゃカッコよくて、お芝居にもすごく惹かれたんです。

当時はおそらく、声優という職業を認識していなかったと思うんですが、緑川さんが演じていらっしゃるキャラクターに、何だかずっと惹かれるものがありました。『スクライド』の劉 鳳も…いつもはクールなんだけど、つい男泣きしてしまうようなところがあって。そのお芝居にものすごく衝撃を受けて、震えて。

僕は緑川さんみたいな、万人が認めるいい声ではないので、「そんな声になれたらいいなあ」って少しだけ思っていて。そんな感覚のまま、自分がずっと憧れていた方がいらっしゃるかもしれないと、専門学校のオープンキャンパスに行きました。そこでは緑川さんにお会いすることはできませんでしたが、体験授業が楽しかったのでそのまま入学して、勉強をしていくうちに「芝居って面白いんだな」って感じるようになっていったんです。
一冊のパンフレットから、声優への道が始まったのですね。
ありがたいことに、そうやっていつも次のステップみたいなものが現れてくれて、それを一歩ずつ一歩ずつ上って、気づいたら声優のお仕事をさせていただけるところまできていた、という感じなんです。

僕の周りにいてくださる方々は、お互いに高め合うことができる人であったり、自分を支えてくれる人であったり、自分を心配してくれる人だったんですね。そういう人たちがいたからこそ、いま僕はここにいるんだと思います。きっかけは一冊のパンフレットだったのかもしれませんが、そこから広げてくださったのは、みなさんとのご縁ですよね。
なかでも、古川さんにとってとくに大きかった出会いなどはありますか?
お芝居の経験がなかった僕にとって、専門学校で演出家の加藤真紀子先生と出会ったことはすごく大きかったです。感情の解放の仕方や、お芝居をするうえでの感情の作り方など、加藤さんに演技の基礎をすべて教えていただきました。

1年のときに、加藤さんの台本で舞台をやったのですが、そこで人生で初めてメインの役を任せていただきました。カーテンコールでお客さんから拍手をいただいて、「ああ、お芝居って素敵だな、楽しいな」とそこで初めて思ったので、加藤先生にはいまでも本当に感謝しています。

演じる役の“思い込みが激しいところ”に共感する

将来を期待されたエリートたちが集う秀知院学園。生徒会会長・白銀御行と副会長・四宮かぐや(声/古賀 葵)は互いに惹かれていながら、何もないまま。プライドが高く素直になれないふたりは「いかに相手に告白させるか」ばかりを考えるようになり、権謀術数のかぎりを尽くす。そんな“頭脳戦”ラブコメディが、1月12日から放送のTVアニメ『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』だ。
古川さんが演じるのは、1日10時間の勉強を欠かさない努力型の天才・白銀。“努力中毒”の彼に、共感する部分はありますか?
ないですね。ははは!
古川さんも努力家の印象がありますが…。
そう思っていただいて大変恐縮なんですが(笑)、僕は彼ほどの努力家ではないですし、基本的にはものぐさなほうなので…。

しいて言うのであれば、発声はずっと試行錯誤しているかもしれません。声優のお仕事を始めて8年目ですが、「どうやって発声をすれば、この役が生きている感じがするだろう?」とか「どうやったら見ている方に響くような、説得力のあるしゃべり方ができるだろう?」というのは、いまだにずっと悩んでいます。“努力”というのとはまた違う方向かもしれませんが…。
では、古川さんが白銀に似ているなと思うところは?
思い込みが激しいところです。白銀ってネガティブというか、マイナス方向に物事を考え込むことがけっこうあって。僕もネガティブなので、そういったところは共感できますし、面白いなと思います。
白銀のようなタイプの主人公を演じることに対して、どのように感じましたか?
役が決まったときは、単純に「楽しみだな」と思いました。というのも、僕はモノローグで遊べるキャラクターをこれまでも何度か演じさせていただいているんですが、すごく楽しいんです。今回はとくにコメディ要素が強いので、「モノローグのセリフのニュアンスをどうやって入れていこうかな?」と、台本を読みながら考えていくのも楽しいですね。
一方で、難しさを感じるところはありますか?
アフレコ中、本当にコントをやっているような感覚になるんです。「どういう間で返すと、より面白く聞こえるか」と、相手の返しに反応しながら組み立てていく。そういう難しさは毎話感じていて、「お笑い芸人さんって、本当にスゴいんだな」って思います。“出たとこ勝負”ではありませんが、もう本当に毎回、体当たりで演じていますね。
白銀とかぐやをはじめ、面白い掛け合いがスピーディーに展開されるので、アフレコ中もつい笑ってしまいそうですね。
本番前のテストではみなさんすごく笑ってくださるんですが、本番は笑い声が入ってはいけないから、みなさん笑わないんです。そのうえ…この作品はなかなかのセリフ量でございまして(笑)。アニメーションの主人公のセリフって、だいたい100ワードあるかないかくらいなんですが、本作は主人公がふたりいて、かぐやのセリフ量が1話につき大体90ワード後半。そして、僕が演じる白銀も90ワード後半なんですよ。
ふたりですでに普通のアニメーションの倍、セリフがあるということですね(笑)。
スゴい情報量ですよね(笑)。常に会話をしているし、モノローグが入っているし。なので、本番になると緊張感が爆上がりするんです。それでいて、テストのときは笑ってくださったみなさんが、なかなか笑わない…いや、それは当然のことなんですが(笑)、演じていて気が気じゃないですよね。

でも、本番になるとピリッと白熱した感じがキャスト陣に漂い始めるあたり、「一緒に戦っているんだな」という感じがして好きですし…。そんななかでもつい気が抜けて「フッ」と笑ってしまうこともあって、とてもいい雰囲気の現場だと思います。

古賀 葵さんの芝居にキュン! ラブコメならではの魅力が満載

古賀さんと掛け合いをされてみて、いかがですか?
これがまた面白くって、僕らはほぼ掛け合いをしていないんです。話が動くときや、ふたりの気持ちが少し寄るときはありますが、基本的にはモノローグ進行なので、仮想の敵と戦っているようなものなんです(笑)。
なるほど。古川さんとしては古賀さんのモノローグの声は聞こえているけれど、白銀としてはかぐやのモノローグの声は聞こえない…。
そうそう! なので、実際に相手が発したセリフを受け取るときの感覚が、実際に掛け合っているシーンと、モノローグで腹を探り合っているシーンで違うんです。演じていてどっちがどっちだかわからなくなるときもあったりして(笑)、難しいんですよね。

そんななかでも、古賀さんのちょっとしたお芝居がとっても可愛かったり、「かぐやは脳内でそんなに可愛いことを思っとんのかい!」って思うこともあって、「何だよ〜、可愛いな〜」って和みますよね(笑)。
ラブコメディならではの魅力ですね。
そうですね。いつもは素直じゃない彼らが、ちょっとだけ素直になったり、ちょっとだけデレたときのお芝居は、いつものコメディ然としたお芝居とは違った面白さがあって楽しいですね。
ストーリーのなかでの面白さや見どころは?
“ギャップ”と“行き違い”でヤキモキしちゃうような要素がたくさん詰まっていて、それがずっと繰り広げられているのが、この作品の見どころなのかもしれません。

あと、原作をお読みの方はご存知かと思いますが、ものすごいたくさんの説明書きがあるんですよね。それをアニメーションでは、ナレーション役の青山 穣さんが表現してくださっているんですが、その実況というか、煽りもすごくツボに入ってくるものばかりなんです。
白銀とかぐやとナレーションの“三つ巴”みたいなシーンもたくさんありそうですね。
そうなんです。アフレコでも、ナレーションがあるのとないのではまったく違って。青山さんのナレーションによって、僕らのお芝居の流れが変わってくるぐらい、本当に絶妙なコントロールをしてくださるんです。青山さんのナレーションの煽り方、実況の仕方にも注目していただきたいと思います。

デビュー当時を振り返って「変わったこと」、「変わらないこと」

改めて、声優デビューから8年目を迎えていかがですか?
「もう、そんなに経ったんだな」という感じです。
デビュー当時と比べて、声優仕事に対して意識が変わったことはありますか?
演じさせていただく役に対するこだわりが、確実に増してきていると思います。「(音響監督などからのディレクションで)こういうふうに言われたから、その通りにする」ではなく、「こういうふうに言われるっていうことは、この役のここを見せたいんだろうな」って考えるようになりました。

それに、自分の役のことだけでなく、作品全体のバランスを考えられるようになった…かな? あとは何だろう……“やったもん勝ち”っていう感じもありますね。
というのは?
僕はもともと“遠慮しい”なので、率先して前に出るようなことはあんまりないんですが、お芝居に関しては、役の魅力をより正確に伝えるために、「これをやってもいいかな?」、「こういうことをやってみました」って、以前よりも出せるようになってきました。というか、もっと出さないといけないんじゃないかと思うようになりましたね。

あと、そんなに緊張しなくなったというのもあります。それはもちろん、いろんな現場で経験を積んだからというのもあると思いますが…。
以前はもっと緊張していた?
していましたね。たとえば「このオーディションでは、このキャラクターのどういうところを見せるといいんだろう?」、「ちゃんと演じなきゃ」って緊張していたんですが、いまは「この役は、このシーンでどんな感情なんだろう?」、「じゃあ、その感情を表現してみよう」と考えるようになって…。そうすると、何だか緊張しなくなるんですよね。

“緊張しなくなる方法”みたいなのも、場数を踏んでいくにつれて自分のなかで何となくできあがってきているので、以前のようにド緊張するのではなく、いい緊張感で臨めるようになったのかなとは思います。ただ、『かぐや様』のアフレコは毎回緊張していますけど(笑)。
一方で、「ここだけは変わらない」ということはありますか?
あまりないかもしれないです。昔は本当に余裕がなくて、「失敗しないように」と、そればかり考えていました。いまも失敗しないようにと意識はしていますが、それだけに囚われなくなったので、「変わることができて良かったな」と心から思います。まあ、一生懸命になると考えすぎるきらいがあるので、そこらへんは変わっていないのですが(笑)。

あ、話が前後して申し訳ありませんが、「この7年間で変わったこと」がもうひとつあります。みなさまからの声を多くいただけるようになったことです。応援してくださる方から、お手紙などで本当に恐縮してしまうような言葉をいただくことが多くて、それがとてもありがたくて…。
そうやって応援の声をもらうことで、意識が変わることもありましたか?
そうですね。これまでは役を演じることが楽しいからお芝居を続けてこられたんですが、いまは「見てくださる方に、楽しいものをお届けできるように頑張っていきたい」という気持ちも芽生えてきていますね。「ありがとうございます」というお手紙をいただいて、「いや、こちらこそありがとうございます」と毎回思っています。
古川さんにとって、2019年はどんな年になるでしょうか?
2017年、2018年と、僕はまだまだ未熟だったので、みなさまからいただいた「ありがとう」とか「素敵でした」といった言葉に対して、うまいお返しができなかったんですが、2019年はみなさまへの恩返しという意味でも、もっともっと自分を高めて、いろんなお仕事に取り組んでいけたらいいなと思っております。

そしてわたくし、2019年は30歳になりますが(笑)。…29歳最後の9ヶ月間を駆け抜けて、素敵な30歳になれるように頑張っていきたいと思います。
古川 慎(ふるかわ・まこと)
9月29日生まれ。熊本県出身。A型。主な出演作に『ワンパンマン』(サイタマ)、『転生したらスライムだった件』(ベニマル)、『覇穹 封神演義』(哪吒)、『アイドルマスター SideM』(アスラン=ベルゼビュートⅡ世)、『Fate/Apocrypha』(アキレウス)、『BANANA FISH』(ショーター・ウォン)など。2018年7月にシングル『miserable masquerade』でソロデビューを果たした。

「2019冬のアニメ」特集一覧

アニメ情報

『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』
2019年1月12日(土)23:30〜 TOKYO MX、BS11ほかにて放送開始
https://kaguya.love/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、古川 慎さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年1月11日(金)18:00〜1月17日(木)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/1月18日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月18日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月21日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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