特等席で、君と花火をふたり占めしたい。艶系男子・塩野瑛久が語る、理想の浴衣デート

大正時代の日本家屋。浴衣姿でひらりと現れた塩野瑛久は、息をのむほど美しかった。

趣のある縁側に腰かけ空を仰ぐ横顔も、庭で静かに佇む姿も、無邪気にスイカを頬張る笑顔さえも美しい。しかし、それ以上に魅せられたのは――時折見せる、ここではないどこか遠くを見つめているような彼の眼差しだ。

昨年は、映画『HiGH&LOW THE WORST』の小田島有剣役で人気を博した塩野。しかし「もっとセリフが欲しい、もっと演じてみたい」と、役者として貪欲に求め続けてきた彼は、いまだ満たされることはない。

いつもモヤモヤしていて、気持ちの落としどころがないと語る彼は、苦しそうでもあり、楽しそうでもあった。

撮影/曽我美芽 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.
スタイリング/山本隆司 ヘアメイク/時田ユースケ 衣装協力/Robe Japonica

「浴衣男子2020」特集一覧

女性の浴衣は華やかさより、“上品な悪さ”のほうが好き

きょうの撮影では大きなスイカを食べていただきましたが、まさか一気に完食するとは思いませんでした(笑)。お腹が痛くならないでしょうか?
全然! 僕は本当にスイカが好きなので、いくらでも食べられると思います。何個まで食べられるのか試してみたいですね(笑)。
浴衣は赤色のものを着ていただいて、塩野さんの艶っぽさを存分に引き出せたのではないかと思います。
ふふ。ありがとうございます。塩野じゃなくて、“艶野”ですね(笑)。
普段こういった色味のものを着ることは?
なかなかないですね。赤の浴衣も、自分では選ばないと思います。でも、思ったよりもいやらしくなくて…このお家の雰囲気と相まって、いいコントラストが生まれたのかなと。でも、これで街に繰り出したら、すごいチャラそうな印象を与えると思います(笑)。
普段、和装する機会はありますか?
稽古のときぐらいですかね。和装に興味があって、普段の生活に取り入れてみたいとは思っているんですが、目立っちゃいますからね。でも以前、舞台の共演者がスウェット地の浴衣みたいなのを稽古で着ていたのを見て、「動きやすそうでいいな。俺も欲しいな」と、いまだに狙っています(笑)。
ヘアスタイルも素敵ですが、前髪を久しぶりに作ったという先日のInstagramの投稿にスゴい反響がありました。なぜ前髪を作ろうと思ったのでしょうか?
飽きたからです(笑)。前髪を作ったといっても、ドライヤーを当ててふわっと流れるようにしてもらっただけなので、セット自体はいままでとそんなに変わらなくて、でも前髪あり、なし、どちらもできるのでめちゃめちゃ便利なんです。

最近のメンズのヘアスタイルって、前髪がわりと重ためじゃないですか。でも、80年代や90年代の髪型って、前髪があっても重く見えないんです。あれって、女の子のあいだで流行ってるシースルーバングみたいな感じなんですよね。それで、いつもスタイリングしてもらってる時田ユースケさんにお願いしました。
塩野さんが思い描く、理想の浴衣デートはどんな感じでしょうか?
特等席で花火を見たいですね。やっぱり人生に一度は、目の前で花火が上がる絶景スポットを…高いお金を払ってでもいいから(笑)、ふたり占めしたいなって思います。
相手の女性にはどんな浴衣を着てほしいですか?
カッコいいのがいいな。華やかなものより、どちらかというと僕はカッコいいほうが好きかもしれないです。着物だからこそ出せる“上品な悪さ”というか。そういう姿を見たら「あ、そっちで来たか!」って衝撃を受けて、惹かれるかもしれないです。
髪型についてはいかがでしょう?
アップにしてほしいですね。僕、女性の首が好きなんです。男にはない細さというか、女性らしい首っていうのがやっぱりあると思うので…うなじが見えていると、つい目が行ってしまいますね。和っぽいテイストのかんざしが挿さっていたら、なおいいですよね。

銀色&ペイズリー柄の浴衣でお祭りに…中学時代の“黒歴史”

「浴衣」と聞いてパッと浮かぶ思い出はありますか?
中学生の頃だったと思うんですが、地元のお祭りに「みんなで浴衣を着て行こうぜ!」って、通販で安い浴衣を買ったんです。いま思うと、もう本当にペラッペラな生地で(笑)。

そのときは「これが普通なのかな?」と思ってましたし、下に着るものとか着付けの仕方さえもわからないまま、そのペラッペラの布を身体に巻きつけて、ペラッペラの帯をギュッと締めただけで出かけたんですよ(笑)。

本当に、ただの“布2枚”って感じで(笑)。いま振り返ると「布2枚でよく行ったな」って思いますよね(笑)。
どんな色の浴衣だったか覚えていますか?
銀色のペイズリー柄です(笑)。
それは攻めていますね(笑)。
黒歴史もいいところですよね(笑)。風が強くて、ビュンって吹いたらパンツが見えるんです。「まあ、こういうもんなのかな?」と思って、気にせず歩いていましたね(笑)。

その格好のまま花火も見に行ったんですが、かなりの距離を歩かなければいけなくて…。下駄だし、風が吹けばパンツが見えるしで、まるで“砂漠を旅する原始人”みたいな感じでしたね!
それはそれで、楽しい夏の思い出ですね(笑)。
そうですね。夏がいちばん楽しかったかもしれないです。冬って“恋人たちの季節”的な雰囲気があるじゃないですか。でも、僕の地元は本当に女っ気のない奴らの集まりだったので、冬ってすごい暇なんですよ(笑)。

それに対して、夏は恋人がいなくても、祭りに行けばほかの学校の子たちとも遊べるし、みんなで楽しめるイベントもたくさんあるから、楽しかったですね。
夏によくやっていたことはありますか?
友達の家で日焼けしてました(笑)。僕はそんなに焼く気はなかったので、黒くなかったんですが、みんなと一緒になって日焼けスポットを探したりしていました。
では、これからの夏にやりたいことはありますか?
いまはこんなご時世なので難しいと思いますが、新型コロナウイルスのことがなかったら、やっぱりプールや海に行きたいなと思いますね。でも僕、海パン持ってないんですけど(笑)。
じゃあ、海パンを買うところから?
そうですね(笑)。海パンを買うところから始めます。

もっと多くのシーンで小田島有剣を演じたかった

映画『HiGH&LOW THE WORST』では、鳳仙学園四天王のひとり、小田島有剣を演じた塩野さん。ビジュアルや佇まいなど、塩野さんが提案された部分も多かったとのことですが、とても人気の高いキャラになりました。そういった反響について、どのように感じましたか?
いまだに(人気が高いという)自覚がなくて…。もちろん、反響があったことはありがたかったけれど、あまりに自覚がなさすぎてビックリしました。
ご自身で考えて作り上げたものが評価されたら、「手応えがあったな」と感じるのでは?
いや、僕はまだ全然悔しいです。そんなに出番がなかったですし、それでも、「小田島がよかった」と言っていただけたのはすごく嬉しいですけど…。たぶん俺、もっと小田島を魅力的に見せることができると思っているんです。

撮影当時から「もっと多くのシーンで小田島を演じたい」と思っていたので、完成したものを最初に観たときの感想は、「小田島の役回りって微妙だったなあ」だけだったんですよね。

僕はシダケン(志田健三/演:荒井敦史)のほうが全然カッコいいと思ったし、「俺だったらシダケンに憧れるな」と思いましたから。フジオ(花岡楓士雄/演:川村壱馬)もそうだし、やっぱりみんなカッコよかったので…。
悔しかった?
そうですね。「もっとシーンをくれるんだったら、もっと俺はできる」って、いまでもずっと思っています。
それぞれが個性の強い四天王ですが、志尊 淳さん演じる上田佐智雄をトップにしっかりと団結しているのが魅力でもあると思います。キャストのみなさんは現場でもとても仲がよかったそうですが、どんな様子だったのでしょうか?
(仁川英明役の小柳)心くんが最年長でしたが、年齢云々を感じさせない空気を作ってくれたおかげで、とてもいい雰囲気で撮影できたと思います。シダケン役の敦史くんが自虐ネタをボヤいて、そこに心くんがツッコミを入れたり。

(沢村正次役の)葵(揚)くんなんかは、初日に…坊主頭の真ん中だけ少し長くしなきゃいけないのに、自分で刈って失敗してしまって、ちょっとハゲたまま「初めまして」って挨拶してきて(笑)。それもすごく和みましたね。
鳳仙学園を取りまとめる志尊さんはいかがでしたか?
極端に言ってしまえば…物語の主軸は佐智雄で、四天王はただ周りを固めているだけとも言えるので、志尊くんはただ自分のストーリーを追っていけばいいのに、彼は鳳仙学園に重きを置いてくれたんです。

僕らが「ここはどんな芝居にしようか?」って話してるところに積極的に参加してくれて、志尊くんも入れたみんなで話し合いをしていましたから。何より僕がとても好きなのは…闘いに行くときに志尊くんが着ていた血だらけのジャケット、あれアドリブなんですよね。
台本にはなかった演出ということですか?
そうなんです。もともとはキレイなジャケットで戦闘へ向かう予定だったんです。でも志尊くんが、「血だらけのジャケットを着たほうが、カッコよくない?」って。それを聞いてみんなも「いいね! それやろうよ!」ってことで、監督に相談しに行きました。

でも、監督は当初、台本通りを望んでいらっしゃって…そのときの鳳仙の一体感はスゴかったですね。みんなでズラッと監督の周りに並んで、「やりましょうよ! 絶対いいですよ!」って(笑)。鳳仙学園のひとりとして参加できてよかったな、と感じた瞬間でした。
『月刊少年チャンピオン』では、鳳仙学園の日常を描く『HiGH&LOW THE WORST 鳳仙学園日誌』の連載が始まりました。
まさか自分が演じた役が漫画化されるなんてと、めちゃめちゃ嬉しかったです。「スゴいことが起きたな」と思いました。あわよくばアニメ化してくれ!って思っています(笑)。

いましかできない役を逃していたら…という恐怖がある

「もっと多くのシーンを演じたかった」という悔しい気持ちは、どうやって落ち着かせるのでしょうか?
落ち着かないです! もう全然落ち着かない。

デビューして『GTO』に出たときも、周りの生徒たちにはカメラが向くのに自分には向かないし、セリフもいただけないから、何をしたらいいのかわからない。セリフがないなかでいろいろやってみるけど、それって別に求められていないし…って、もどかしい思いをたくさんしました。

もっとセリフが欲しい、もっと演じてみたい、僕が演じる人物の物語を追体験したいっていうのはいまでもずっと思っていますし、その思いがあるから(役者として)続いているのかもしれないですね。
主演作品でも、そうやって満たされない思いがあるのでしょうか?
それはないですね。でも僕…最近はとくになんですが、スッキリしない主役が多いような気がします。

舞台『DECADANCE』〜太陽の子〜で演じた主人公は、「太陽の子」と呼ばれているけど、本人は自分のことを太陽の子だなんて全然思っていないキャラクターでした。「太陽」っていう言葉だけが独り歩きしていて、実際は月っぽい役割を担っているなあと思っていて。公演が終わったあとも、その感覚をずっと抱いていましたね。

もうひとつ、主演を務めた『Re:フォロワー』というTVドラマでは舞台版も公演する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止になってしまって。結局、自分が演じた原田優作という人物に何があったのか、どういう想いだったのかが描かれないままなので、ずーっとモヤモヤしっぱなしなんですよね。だから最近ちょっと…欲求不満気味かな?(笑)
自粛期間もありましたからね。
そうですね。自粛期間中も、ずっとモヤモヤしていました。自分の将来も心配ですし。

僕は自分の中にすごくアツい部分があると思っているんですが、その一方で、物事をめちゃめちゃ俯瞰している自分がいることも実感していて。『HiGH&LOW』でいただいた声も、僕はすぐになくなると思っていたし…現にいまは、だいぶ落ち着いてきていますから。

だからこそ、新しく僕を好きになってくださった方たちに姿をお見せする機会を作りたかったんです。でもこのご時世ですから、なかなかそれも叶わなくて、焦りはありますよね。

というか…コロナ以前から、焦りはずっとあります。いましかできない役っていうのが絶対にあるので、それを掴み損ねていたらと思うと…何よりも、それがいちばん怖いのかもしれないです。

明るい人物を演じても、その背景に“何か”をもたせてしまう

「スッキリしない主役が多い」とのことでしたが、塩野さんの“満たされることがなく、常に何かを求めている”姿勢が必要とされて、そういった役にキャスティングされているんじゃないかと、勝手ながら思いました。
たぶんそうだと思います。とくに『DECADANCE』はその通りで…演出家の西田(大輔)さんは、僕が太陽の子なんかじゃなくて、“月の子”だっていうのをもともと知っているんです。

それは最初に言われていたし、自分でも納得できたし。「だからこそ、太陽をやらせたい」っていう意味も、おそらく含まれていたと思います。

僕がいろんなことに貪欲で、欲深い人間で、常に何かを求めている。でもそれを周りにアピールするでもなく、黙って虎視眈々と何かを狙っているようなタイプだとわかっていた西田さんだからこそ、そういう役どころを与えてくださったんだと思います。
犬坂毛野役を演じられた『里見八犬伝』でも、役柄は煌びやかでしたが、舞台の上でお芝居されている塩野さんには、どちらかというと陰の雰囲気がありました。
僕が「演じるのが難しいだろうな」と思っている役のひとつが、“身も心も陽のキャラクター”なんですよね。どんなに明るい人物でも、僕はその人の背景に何かを持たせてしまう。

明るく振る舞っている人って心の底から楽しいわけじゃなくて、どこかに闇を持ちながらオン・オフを切り替えているとしか、僕には思えないんです。だからたぶん、僕が陽キャラを演じるとなると、どうしてもそうやって演じてしまうんでしょうね(笑)。
それこそが塩野さんの個性のひとつであって、舞台上で毛野が魅力的に映った理由でもあるんじゃないかと思います。
そう言っていただけるのは…すごく嬉しいですね。
満たされない想いを抱えながら、いま自分に足りないもの、必要だと思うものは何でしょうか?
役者としては、今後も演じる役を掘り下げて、追求し続けていくだけですよね。エンターテインメント業界に身を置く立場としては、たくさんやることがあると思っています。

いまの時代、リアルタイムでTVドラマを観る人は少なくなっていて、動画配信サービスで好きなときに好きなものを観るという、新しい視聴スタイルが確立されてきています。

そうやって、どんどん新しくなっていく世の中の流れに合わせていかないといけないし、10代や20代の人たちにも顔を売っていかないといけない。そこに力を入れることも必要だと思っているんです。

ただ…その反面、おばあちゃんが生きているうちに、おばあちゃんが観やすいような作品にも出たいなあとも思っているんですけどね(笑)。でも、いまはとにかく新しい流れに乗ることを意識しつつ、いろいろと試していきたいなと思っています。
塩野瑛久(しおの・あきひさ)
1995年1月3日生まれ。東京都出身。男劇団 青山表参道Xの副リーダー。2012年、テレビドラマ『GTO』(フジテレビ系)で俳優デビュー。翌年には『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)にて、立風館ソウジ/キョウリュウグリーン役を務める。主な出演作に、映画『HiGH&LOW THE WORST』、テレビドラマ『Re:フォロワー』(朝日放送テレビ)、『来世ではちゃんとします』(テレビ東京)、舞台『里見八犬伝』、舞台『DECADANCE』〜太陽の子〜など。

「浴衣男子2020」特集一覧

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、塩野瑛久さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年8月10日(月・祝)12:00〜8月16日(日)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/8月17日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月17日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月20日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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