内山昂輝×堀江 瞬が、「声優」に求められることが多くなった時代に思うこと

『少女革命ウテナ』(1997年)や『輪るピングドラム』(2011年)、『ユリ熊嵐』(2015年)を手がけた幾原邦彦が送り出す新作が、4月11日から放送中のTVアニメ『さらざんまい』だ。

幾原作品といえば、斬新な設定や先が読めないストーリー展開で、唯一無二の世界観を放つ。

本作でメインキャラクターを演じる内山昂輝(久慈 悠役)と堀江 瞬(陣内燕太役)も、そんな“幾原イズム”を肌で感じているという。

ふたりは今作で初共演。現場で見たお互いの姿から、「声優」に求められることが多くなった今の時代に対する思い、堀江から内山への人生相談(!?)まで、ふたりの素直な気持ちを聞いた。

撮影/祭貴義道 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.

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▲左から内山昂輝、堀江 瞬

アフレコでは、幾原監督にキャストの質問が殺到することも

おふたりはこれまで幾原さんの作品をご覧になったことはありましたか?
内山 僕は拝見したことがなかったので、『さらざんまい』がファーストコンタクトでした。台本を読んでとても面白いなと感じると同時に「これはどういうことなんだろう?」と掴みきれない部分もあり、気になる要素がたくさんあるなと思いました。
堀江 僕は幾原さんの作品が好きで、『少女革命ウテナ』や『輸るピングドラム』、『ユリ熊嵐』も拝見していました。一貫して難しいテーマが掲げられている印象で、きっと『さらざんまい』もそうなんだろうなと、オーディションを受けたときにも感じていました。
本作はオーディションだったのですよね。
堀江 僕はメインの中学生3人を受けました。掛け合いなどではなかったので、それぞれのキャラクターがどんなリアクションをするのか、自分の頭のなかで考えて出していきました。
内山 僕が受けたのは久慈 悠のみでした。
堀江 幾原さんの作品が好きだったこともあって、オーディションの話をいただけただけでうれしかったですし、落ちたとしてもある意味“記念受験”だなと捉えていたので、受かったときはとてもうれしかったです。

じつは「受かった」というのを、村瀬(歩/矢逆一稀役)さんから聞いたんです。とある作品で村瀬さんと一緒になったときに「ホリエル、『さらざんまい』よろしくね」って言われて、「あれ!? 受かってたんですか!?」って(笑)。
▲矢逆一稀 声/村瀬 歩
▲久慈 悠 声/内山昂輝
▲陣内燕太 声/堀江 瞬
アフレコ中に難しさを感じることはありましたか?
内山 極端な難しさを感じることはなかったです。というのも、アフレコ現場では毎回幾原監督がその話数に込めた思いやストーリーの意図を説明してくれたので。
堀江 「どすこい!」というカットなど、幾原監督らしいカットが物語のなかで急に差し込まれることがあったので、台本の文字上だけでは読み解けない難しさは感じていました。でも、幾原監督が毎回細かく説明してくださって、そのビジョンに向かってお芝居を持っていけばよかったので、そういう意味ではとてもわかりやすかったです。
内山 毎回アフレコがはじまる前にけっこう長い時間をかけて説明してくださったんです。「今回の話では、この人についてここまでしか描かないけど、じつは過去にこういうことがあって、だから今こうなっているんだよ」とか。だから、僕らも収録の段階で、先の展開や、キャラクターたちの過去や思いをかなりの部分まで把握してセリフを言っていました。

それでもわからないところがあれば、監督に「これはどういう意味ですか?」とキャストから質問することも多々ありました。
アフレコは1年前に終えられたそうですが、現場はどんな雰囲気でしたか?
内山 誰かが率先して盛り上げるという感じではなかったですが、すごく穏やかで、自然といい空気ができていた気がします。
堀江 そうですね。帝子さん(吾妻サラ役)は声のお仕事がはじめてということもあって、帝子さんを筆頭に新しい空気が作られていた感じもします。僕としては、先輩が多い現場で緊張感がありつつも、オフの時間になればふっと気を緩められるような現場だったなと。

むしろ、監督が率先して雰囲気作りをしてくださったような気もします(笑)。
内山 たしかに、そんな気もしますね(笑)。
堀江 あと収録現場に、スタッフの方から毎回浅草スイーツ(物語の舞台は浅草)の差し入れをいただいていました。プリンとかドーナツとか、おせんべいとか。とてもおいしかったです。
1話、2話を見ただけでは、先の展開がわからないのが幾原監督作品の魅力のひとつだと思います。本作をより楽しむ今後のポイントを教えてください。
内山 登場人物それぞれにいろんなドラマがあって、徐々に複雑な事情が明らかになっていきます。最後まで見続けていただくと、たとえば1話が、初見の印象と全然違って見えてくると思います。
堀江 本当にキャラクターの印象が毎回変わっていくと思います。1、2話で、一度見ただけでは何となく流してしまうシーンに、今後のキーとなるアイテムが隠されていたりして…。今後も「え、そうだったの!?」と思う出来事がどんどん起こっていくと思います。

「内山さんも笑うときは笑うんだ」「笑うよ、人間だもの」

おふたりは初共演ですが、最初に抱いていた印象から変わったことはありますか?
堀江 印象の変化で言えば…内山さんも笑うときは笑うんだって思いました。
内山 笑うよ、人間だもの(笑)。
堀江 クールな印象があったので…(笑)。
内山さんから見た堀江さんは?
内山 印象の変化と言えるかわかりませんが、収録後に、堀江さんと帝子さんの3人でなぜかカレーを食べに行ったことがありまして。あれ、何料理屋だっけ?
堀江 ネパール料理です! たしか、帝子さんが誘ってくれたんですよね。
内山 そうそう、収録終わりで時間もあったので、何となく「行ってみよう」みたいな感じで。ネットで検索して見つけたから3人とも初めて行くお店で、みんな普通の辛さのカレーを頼んだのですが、(堀江さんが)尋常じゃない量の汗をかいていて。

こんなに汗をかく人を目の前で見たことがないってくらい、本当にシャワーを浴びたてのような感じで。
堀江 これは比喩でなく、お恥ずかしながら本当で…(照)。
内山 それにはビックリしましたね。
そういった交流を通して、おふたりの距離が縮まった感じはしますか?
堀江 はい。心の距離は縮まったのでは、と僕のなかでは勝手に…。
内山 そうですね。もう、汗がスゴいのを見たおかげもあって…。
堀江 うわー恥ずかしい! その印象は上書きしたいです!(笑)
内山 でも、たしか僕がお店を決めたので、申し訳ないことしたなとも思っていて…(笑)。
堀江 いやいや! 今度は、辛いものじゃないお店に一緒に行きましょう!
お互いのお芝居への姿勢はどう感じられましたか?
堀江 ご本人を目の前にして言うのは恥ずかしいですが…内山さんはお仕事に対してストイックな印象があって、それはお会いする前に抱いていた印象通りだと思いました。作品の世界観における自分の役の在り方を、しっかり理解して演じられているように感じて、スゴいなって思いました。
内山 全然ストイックじゃなくて、テキトーな人間だと思います。
堀江 単純にお芝居を見て納得させられているのもあると思います。僕がそう感じているだけなのかもしれないですけど、(アフレコに臨む)表情から有無を言わさない作り込みをされていて。
内山さんから見た堀江さんのお芝居への姿勢は?
内山 ふざけた感じの若い子ではなかったです。
堀江 なかなかいないですよ、そんな人(笑)。
内山 たしかに(笑)。でもまだワンクールしか共演していないし、その作品の完成品も観ていないので、堀江さんのパワーのすべてを把握できてないと思います。

苦手なことも続けていれば道になっていることがある

最近ではお芝居のみならず、歌やダンスなど、声優のお仕事の幅がかなり広がっているように感じます。
堀江 僕は求められるものが多くなった時代にこの業界に入ったので、そこはすでに当たり前にある認識なんですよね。
内山 時代によって、業界の状況や要求される能力は変わりますから、5年前に業界に入った人と、10年前に業界に入った人とでは、仕事のスタイルは違うかもしれません。
求められるものが多くなるなかで、柔軟に対応しなければいけないなと感じることもありますか?
内山 僕の考え方としては、対応したい人はして、したくない人はしないのだろうなと思います。
堀江 内山さんは、臨機応変に対応できるタイプですか?
内山 いや、全然できない。

僕は性格的に、無理をすると(自分が)ダメになってしまうタイプなので、これまでにやったことがないことに関しては、とりあえず最初チャレンジはしてみるけれど、その結果「違うな」と思ったり、たとえチャレンジし続けてもベターな結果が残せないなと確信したら、基本的に頭の中の選択肢から消えていく感じで。やりたいことはとくにないけど、やりたくないことをやらずに済ませるための努力は惜しまないという、“消去法”的人生観なので。やりたくないことは避けていくんです。
内山さんは以前のインタビューで、「根を詰めたり、理屈を積み上げたりしない」とご自身の仕事への向き合い方についてお話されていました。
内山 人には向き不向きもあるから、基本的に無理をせず、「(これまでの経験上)できそうなこと」と「たぶんできるかなあくらいのこと」をやっている感覚なんです。
堀江 僕は、できなかったときに自分を責めがちで…。「何でうまくできなかったんだろう」と、自分を追い込んでしまうんです。今はそれをどうしたらいいかという策も見つけられていない状態で、難しいところです…。
内山 でも、そういう自分に向いてなさそうなことを、何となくでもやり続けたら、いつのまにか能力が上がっていて、自分の“モノ”にしていることは、よくあることだと思うよ。
堀江 ありますか?
内山 うん。そもそも僕は声優の仕事でお金を稼ぐようになるとはまったく思っていなかったし、本当にいつのまにかなっていたという感覚で。
それはやり続けていたことによる積み重ねで?
内山 それが意識的に積み重ねた感覚もなく、何となく歩んでいくなかで、なんですよね。「これでいいのかな?」と思っていても、何年かしたら自然と積み上がって、多少のスキルみたいなものもついてきて、前は上手くできないからやりたくない、向いていないと思っていた種類のことも「やりたくなくはない」ぐらいの感覚になっているパターンもあると思います。

だから堀江さんも今は「うーん」と思っていても、何となくでもやり続けたら、いつのまにか何かしら道ができあがっている可能性もありえるのかなって。
堀江 人生相談みたいになりましたね。すごくジーンときちゃいました。内山さんの言葉でひとつ光明が見えた気がします!
内山昂輝(うちやま・こうき)
8月16日生まれ。埼玉県出身。A型。主な出演作品は、『機動戦士ガンダムUC』(バナージ・リンクス)、『ハイキュー!!』シリーズ(月島 蛍)、『ピンポン THE ANIMATION』(スマイル)、『僕のヒーローアカデミア』(死柄木 弔)、『Fate/Apocrypha』(シロウ・コトミネ/天草四郎時貞)、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(べネディクト・ブルー)、アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』(坂上拓実)など。
    堀江 瞬(ほりえ・しゅん)
    5月25日生まれ。大阪府出身。AB型。2015年、声優デビュー。2018年に第12回声優アワード新人男優賞を受賞。主な出演作品は、『12歳。〜ちっちゃなムネのトキメキ〜』(桧山一翔)、『アイドルマスター SideM』(ピエール)、『ナナマル サンバツ』(越山 識)、『十二大戦』(寝住)、『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』(サトゥー)、『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(矢坂大翔)など。

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    作品情報

    TVアニメ『さらざんまい』
    フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて毎週木曜深夜に放送中
    アニマックスほか各局でも放送
    ※放送日時は変更となる場合がございます。
    http://sarazanmai.com/

    ©イクニラッパー/シリコマンダーズ

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