「声優として一緒に成長してきたと思える」木村良平×江口拓也の揺るぎない関係

「主人公をやる人ってこういう人なんだな」

かつて新人だった江口拓也は、木村良平を羨望のまなざしで眺めていたという。それから10年。再び江口は現場で主人公を務める木村の姿を見ていた──あのときと変わらない思いを胸に。

Netflixで4月1日(月)より配信のアニメ『ULTRAMAN』にて早田進次郎(ULTRAMAN)を務める木村と、諸星 弾(SEVEN)を務める江口。年齢も近く、音楽ユニット「Trignal」でも活動をともにしているふたりの関係性は、取材からも信頼に根差していることがうかがえる。

そんなふたりに、改めてお互いについて紹介してもらうところから、インタビューは始まった。

撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/アンファン

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▲左から木村良平、江口拓也

「良平さんの一番の魅力は、いつも明確な答えがあること」

作品のお話の前に、まず、改めてお互いをご紹介いただけますでしょうか?
江口 良平さんはスゴい人です! 年齢は近いけれども、芸歴も長く、僕にとっては大先輩ですね。デビュー当時からお世話になっていて、仕事ももちろんですけどそれだけじゃなく、いろんなお店に連れて行っていただいたり、飲み相手になっていただいたり…とても頼れる先輩です。

良平さんの一番の魅力は、明確な答えがいつもあること。正解・不正解ではなく、「自分はこう思っていて、自分はこれが正しいと思う」と、答えが明確にある。かといって、他人の意見を否定しないところが、人として素晴らしいと思います。
木村 江口もねぇ、スゴいですよ?(笑)おもしろいヤツだなと思うんです。背が高くて、スタイルがよくて、顔もカッコよくて、声も抜群にいいんですが、本人は「俺が俺が!」というタイプではなく、みんなを盛り上げてくれるんです。コミュニケーション能力が非常に高いので、後輩にも慕われているし、先輩からも可愛がられています。

江口が新人のときから知っていますが、当時は僕自身もペーペーでしたし、一緒に成長してきたなと思えるところがありますね。音楽活動も一緒に続けていますが(音楽ユニット「Trignal」は江口拓也、木村良平、代永 翼の3人)、メンタルが本当に強いので、すごく頼もしい存在です。
今作と同じ神山健治監督の『東のエデン』(2009年)で、おふたりは共演されていました。約10年経った今、再び神山監督が手がける作品で並んでお芝居をされて、お互いに「役者としてここが魅力だな」と感じた部分などはありますか?
木村 それは内緒です。江口の前では言わないですよ(笑)。
江口 ははは! お酒が入らないとね(笑)。

僕はもう、『東のエデン』のときから良平さんに見せつけられていましたから。当時の僕は声優になりたてで、バイト三昧の日々でしたが…そんななか、主人公を務めていた良平さんを見て、「あ、主人公をやる人ってこういう人なんだな、スゴいな」と思っていましたから。それは今も変わらないです。
木村 俺もいつも思ってるよ、「スゴいな、背ぇ高いなぁ」って。
江口 ははは!
木村 「背が高くて邪魔だなぁ」って(笑)。
江口 いやいや(笑)、「邪魔だなぁ」はいらないでしょ! そこ(原稿で)切ってもらっていいですか?
木村 ははは!

制限がある中でも、芝居の自由度を見出し表現したい

1966年に初めてTV放送された『ウルトラマン』。半世紀を経た2011年、コミック『ULTRAMAN』が登場した。描かれたのは、ウルトラマンが地球を去ったあとの世界。コミック累計発行部数が280万部を超えるヒット作のアニメ化を手掛けるのは、神山健治&荒牧伸志。ダブル監督のもと、木村は新世代のウルトラマンとなるべく奮闘する主人公・早田進次郎を、江口は敵対者には容赦がない戦闘スタイルの諸星 弾を演じる。
アニメ『ULTRAMAN』はどんな作品になりましたか?
江口 映像美が圧倒的なので、もう実際に観ていただいて、感じていただくのが早いと思います。「え? この高いクオリティのまま最後までいくの?」と思うかもしれませんが、安心してください、最後までいきます(笑)。
木村 むしろ上がっていきます。
江口 ですね。一度観始めたら、たぶん止まらなくなっちゃうぐらいスゴいです。
木村 ウルトラマンという、誰もが知っているシンボルを題材にした人間ドラマでもあり、社会ドラマでもある作品なので、流し観はできないと思います。ドカっと正座して(笑)、じっくり観ていただけたらうれしいですよね。
フル3DCGアニメーションとなる今作は、モーションアクターの演技をキャラクターに反映するモーションキャプチャー技術を導入しているそうですが、アフレコの段階ですでにアクターの動きが画に反映されていたのでしょうか?
木村 人間の造形や口は、ほぼできていましたね。
江口 口パクは完全についていて、瞬きとかもついていましたね。
木村 目線とかね。
江口 距離感もわかるような感じでアフレコできました。
実際にアクターが演じたものにセリフを入れていくというのは、普段のアニメーションのお仕事とは違う点もあると思うのですが、どのように感じましたか?
木村 いいところもたくさんあると思うんです。実際に役者さんが演じているので、画のお芝居が生々しく、立体的になる。ただ、実際に身体を使って演じる人が気持ちいいセリフと、僕らが画にあてるセリフって違うんです。

『ULTRAMAN』のアフレコ映像には演じている方のセリフも入っていたので、その口に合わせて演じるのはけっこう大変だったなと思います。すごくありがたい部分と、頑張んなきゃいけない部分があったよね?
江口 そうですね。文字だけでセリフを見たときに、それぞれが受け取る印象って違ってきますよね。10人が同じセリフを見ても、キャラクターの色の付け方って10人それぞれが違うでしょうから。

でも今回は、セリフをどこで切る、どこで伸ばす、どこで尺を使う、早口になる、遅くなるっていうのが明確に画についていて、しかも日本語のセリフとして口が動くので、本当に難しかったですね。
映画の吹き替えのような感じでしょうか?
木村 吹き替えだとそもそも言語が違うので、役者の口の動きとセリフが当然合わないですよね。だからこそ、自分で芝居を生み出すことができるんです。

でも今回は、日本語に対してセリフを合わせないといけないので…。下手すると、演じている方のしゃべり癖をそのままトレースするに近いことになりかねない。
その中でも、芝居の自由度のようなものを見出していくのでしょうか?
木村 やっぱりねぇ…役者としては、表現していきたいよね。
江口 うん。抗っていきたいですね。

「現場に入って、江口が演じる諸星を聞いて安心した」

お互いに掛け合ってみての印象はいかがでしたか?
木村 僕はモーションコミック(『ULTRAMAN』の漫画のコマに動きと音声をつけた動画)でも進次郎を演じていましたが、諸星役は江口ではなく別の役者さんが演じていらっしゃったんですね。

なので今回、江口が諸星をやるって聞いたときに、役に合う・合わないではなく、改めて進次郎を演じるうえで相手役が変わるのは「どういう諸星になるのかな? 印象がだいぶ変わるのかな?」という思いはありました。

でも、現場に入って江口が演じる諸星を聴いたら「あ、これはこれで、きっとすごくいい諸星になるだろうな」って、安心させてもらえたというか。「自分なりの進次郎で江口と掛け合っていけばいいんだ」と思えた感じですね。
江口 僕はもう、安心感しかなかったです。個人的な思いとしても、やっぱり良平さんとお芝居ができるのはうれしいですし。すごくリラックスして芝居ができたと思いますね。
今作は神山健治監督と荒牧伸志監督のダブル監督ということで、監督ふたりの関係性をどのように感じましたか?
木村 最初にダブル監督って聞いたときは、ねぇ? “血みどろ”の制作現場になると思っていましたが(笑)、とてもチームワークがいいですよね。
江口 監督がふたりって…普通はねぇ? ブレーンとブレーンでぶつかり合って、バチバチやる印象がありますからね。

それぞれに世界観や価値観を持っていらっしゃる中で、おふたりのあいだで棲み分けがしっかりできているんだと思います。たとえば「役者のディレクションは神山さん」みたいに。なので、本当にスムーズでした。
神山監督からはどのようなディレクションがあったのでしょうか?
江口 「じゃあ、とりあえず1回やってみて」みたいな感じですよね。それで(神山監督の口調を真似て)「ここはもうちょっとこうで」とかね。
木村 収録も早かったよね。僕らから「このシーンはこうだから、こうしたいんですけど」と提案すると、しっかり聞いてくださるし。原作から内容が多少変わっている部分もあるので、それについてわからない部分を質問したり。
江口 そうですね。アニメならではの捉え方になっている部分もあるので、原作ファンの方も、新たな発見があって楽しめるんじゃないかと思います。
木村 けっこう大事なところで設定が変わっていたりもするので。
江口 変わっていますね。連載中の原作もこれから先が気になりますが、アニメはアニメで気になりますよね。
先ほども出てきたように、『東のエデン』でもおふたりは神山監督とお仕事をされていますが、今作で神山監督らしさを感じるところはありましたか?
木村 『東のエデン』はオリジナル作品でしたが、今回は原作もあるし、ダブル監督なので、そういう意味ではまったく違う環境ではありますね。

僕の個人的な印象としては、どこかしら、「今の日本を捉えようとしているのかな?」と思う部分はあります。『東のエデン』もそうですし、今回の『ULTRAMAN』も。どちらもファンタジーを織り込んで描いていますが、神山さんにはそういった視点もあるのかな?と感じます。
江口 「人間模様を描く」みたいなところは、強く感じますよね。

ウルトラマンなら言わないセリフを…「俺はウルトラマンだ!」

おふたりとも小さい頃からウルトラマンへの思い入れがあったとのことですが、演じているときに「今、ウルトラマンを演じている!」と実感したセリフやシーンはありますか?
江口 良平さんは明確に言いますからね(笑)。
木村 ウルトラマンが絶対に言わないセリフを…。「俺はウルトラマンだ!」って言ってるからね(笑)。
江口 さすがに「あ、俺ウルトラマンだ」ってなりますよね(笑)。
木村 だから逆に、ウルトラマンじゃない進次郎だからこそ出てくるセリフも面白いと思いました。

僕たちが子どもの頃にTVでウルトラマンを見ていたように、進次郎もきっとウルトラマンに憧れていて、でも“別世界の存在”として見ていたんじゃないかと。そういう意味で、ウルトラマンに対して思うところっていうのは、僕と進次郎はちょっと似ているんじゃないかと思います。その感覚が面白かったですね。
江口さんはいかがでしょう?
江口 そうですねぇ…SEVENはそんなに“ウルトラマン感”がなくて。
木村 ははは!
江口 どっちかっていうと…。
木村 キラー?(笑)
江口 キラーですよね(笑)。
江口さん演じる弾は、幼少期のとある事件から異星人に対してある感情を抱いていますよね。戦闘スタイルも、進次郎と違って、敵対者には容赦がないスタイルといいますか…。
江口 原作ではそういった背景について描かれているのですが、“異星人殺すマン”みたいなところがあるので、殺し屋みたいな気持ちでやりました。ウルトラマンと呼ばれるフォルムをしていますが、戦う手段のひとつとしてウルトラマンの力を使っている。

人はそれをウルトラマンと呼ぶかもしれませんが、演じている身としてはそんなに…気持ちとしてはないですね。諸星は、超人ではないので。だからこそ、人間として戦ってる感がすごくあって、人間味があふれていると思いました。
『ULTRAMAN』公式サイトのインタビューで、江口さんは好きな怪獣としてレッドキングやゴモラを挙げていらっしゃいましたが、木村さんはいかがでしょうか?
木村 怪獣図鑑を見ていて、「ツインテールって、なんて不思議な怪獣なんだろう」とずっと思ってたんですよね(笑)。
江口 フォルムが好きだったなあ〜。
木村 顔が下にあるのがおもしろいよね。戦ったら、このツインテールで首を絞められるんでしょ? 怖いなって思いますよね(笑)。あと、機械の…キングジョー! カッコいいですよね。
江口 “みんな大好きキングジョー”ね!(笑)僕は『ウルトラマンレオ』のマグマ星人も印象的だなぁ。仮面みたいな顔に、ワサーって髪の毛が生えてるんだけど、なんかすごく“変態感”があるんですよね(笑)。
口元が見えていて、片方の手がサーベルになっている……。
江口 あー、そうです、そうです!
木村 このあいだ、僕がタオルをもらったヤツかな?
江口 マグマ星人のタオルをもらったんですか?
木村 あ、コレね(スマホでマグマ星人を確認)。コレ、うちにタオルあるんだけど(笑)。
江口 はははは! フォルムも含めてすごく印象に残っていますね。
子どもの頃に観ていたウルトラマンと、今作のギャップは感じましたか?
木村 僕の子どもの頃の記憶だと、「宇宙から悪い怪獣がやってきて、ウルトラマンが退治する」というシンプルなお話だったんです。

でも、『ULTRAMAN』で描かれる星団評議会とかを見て「そりゃそうだよね、向こうにも文化があるよね」と思いました。そういう部分がしっかり描かれているのが、“大人ウルトラマン”って感じがしましたね。

あと、『ULTRAMAN』には“正義”はあるけど“善”がないので、それぞれの正義を見ていくとおもしろいと思います。
木村さんがおっしゃった正義に関して、江口さんはどのように感じていますか?
木村 正義といえば江口さんですから(笑)。
江口 初めて聞きましたよ!(笑)そうですねぇ…SEVENは先程お話したとおり“異星人殺すマン”ですが、彼は彼なりに、家族に関する幼少期のトラウマがあってそうなったわけで。そういった憎しみの連鎖をどのように断ち切っていくのか、どういう答えを出していくのかっていうのは、気になるところではありますね。
江口さんが同じ立場だったら、“異星人殺すマン”になってしまう?
江口 まあ、なるでしょうね。彼のようなトラウマがあったら、ならざるを得ないんだろうなと思います。

収録後はスタッフも交えて飲み会へ。チーム感がある現場だった

ベテラン勢も多く参加されている本作ですが、現場の雰囲気はいかがでしたか?
木村 みんな仲がよくて、収録後に飲みに行ったりしていたからだと思いますが、ベテランの先輩方も「スッと来て、仕事をスッとして帰っていかれる」みたいな感じではなく、居心地よさそうにしていてくださったのがうれしかったです。
江口 よりチーム感が強くなったまま最後までいけたと思います。今作みたいに、毎回のように収録後、先輩も後輩もスタッフさんたちもみんなで飲み会をするって、なかなかないことなんです。それが毎回の楽しみになるぐらいチーム感をもって収録できたのがよかったです。

これまでご一緒したことがなかった先輩方とお酒を飲んだりお話する機会をいただけたのも、とてもうれしかったですね。
ちなみに写真撮影の際に、江口さんが「最近は雑煮を作っている」とお話されていましたが、ほかに最近ハマっていることなどはありますか?
江口 僕は飽き性なので、仕事以外はすぐに飽きてしまうんです。なので…“飽きない”という意味では相変わらずお酒ですかね。すみません、こんな答えで(笑)。
木村 『ULTRAMAN』の現場でも、収録時間よりも、飲みの時間のほうが長かったかもしれないしね(笑)。
江口 ははは! そうですね(笑)。
木村さんはいかがですか?
木村 カメラの「現像」と言ったらいいんでしょうか? 写真を撮って、Lightroom(写真編集ソフトウェア‎『Adobe Lightroom CC』)で最後の仕上げをするのが楽しくて。自分の手で作品のようなものができあがるのがおもしろいんです。やっぱりモノ作りが好きなんでしょうね。
木村良平(きむら・りょうへい)
7月30日生まれ。東京都出身。AB型。3歳より子役として活動し、声優としても10代前半からキャリアを積む。主な出演作に『東のエデン』(滝沢 朗)、『黒子のバスケ』(黄瀬涼太)、『坂道のアポロン』(西見 薫)、『銀の匙 Silver Spoon』(八軒勇吾)、『テイルズ オブ ゼスティリア』(スレイ)など。
江口拓也(えぐち・たくや)
5月22日生まれ。茨城県出身。B型。2008年に『真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝』で声優デビュー。主な出演作に『俺物語!!』(剛田猛男)、『アイドリッシュセブン』(六弥ナギ)、『B-PROJECT』シリーズ(殿 弥勒)、『BAKUMATSU』(桂小五郎)、『バキ』(花山 薫)など。

「2019春のアニメ」特集一覧

出演作品

アニメ『ULTRAMAN』
4月1日(月)よりNetflixにて、全世界独占配信
https://anime.heros-ultraman.com/

©TSUBURAYA PRODUCTIONS ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULT

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