
やらない後悔よりやる後悔。僕は逃げたくない――下野 紘、声優18年目の挑戦

下野 紘が実写映画に初出演。しかも主演を務める――というニュースは、ファンのあいだで大きな話題を呼んだ。
2001年に声優デビューして以来、『うたの☆プリンスさまっ♪』や『進撃の巨人』など、数えきれないほどの作品でメインキャストを演じてきた。声優としてのキャリアは十分だが、実写映画の主演となれば、また別の重圧がのしかかる。
不安や戸惑いはあった。自分が前面に立つことに、まったく抵抗を感じなかったわけではない。それでも「オファーを断る」という選択肢はなかった。
「挑戦する前から、できないって断るのは、逃げているみたいで嫌じゃないですか」
「やらない後悔より、やって後悔するほうがいい」
キャリア18年目の下野が挑む、新境地。その意義を語ってもらった。
スタイリング/ヨシダミホ ヘアメイク/尾関真衣(addmix B.G)

社交辞令かと思っていたら…数年越しのオファーに驚き
- 映画『クロノス・ジョウンターの伝説』で実写初主演、おめでとうございます!
- ありがとうございます(笑)。
- 出演オファーが来たときは、どう思われました?
- 「あ、ホントだったんだ」と思いました。
- というのは?
- もともと蜂須賀(健太郎)監督とは、『アリス・イン・ドリームランド』という球体関節人形のアニメーション映画でご一緒して。その打ち上げで「下野さんには本当にお世話になりました。今度映画を撮る機会があったら、下野さん主演でお願いしたいと思います」と言われてたんです。
そのときは「ぜひお願いします」と言いながら、監督には申し訳ないんですけど、社交辞令かなって(笑)。
そしたら数年後、本当にオファーをいただきまして。「マジか!?」と。 - 蜂須賀監督からオファーの理由を聞いていますか?
- くわしくは聞いてないですね…。ただ、『アリス・イン・ドリームランド』のときは、監督自身アフレコ作品に挑戦するのが初めてだったので、「ここはこうしたほうがいいんじゃないですか?」みたいな意見を言わせていただいたりはしてました。
- 監督としては、下野さんと一緒に作り上げた感覚が大きかったのかもしれませんね。
- そうですね。「ここまで協力してくれるとは思っていなかった」とおっしゃっていただいたりして。そういう流れで「下野さんで映画を撮ってみたいと思った」という話を聞いたような気がします(笑)。
- 下野さんが実写映画の主演を務めるというニュースは大きな話題になりましたが、声優仲間の反応はいかがでした?
- もうスゴかったですよ。情報解禁の途端に、たくさん連絡をもらいました(笑)。現場でお会いするベテランの方とかもみなさん知ってくださっていて。「映画で主演、スゴいね」って。
より近しい人には、「あっ、これはこれはハリウッド俳優じゃないですか」「よっ、映画スター!」とか声をかけられたり(笑)。 - いじられている(笑)。
- 「いつ公開なの? 絶対観に行くね! なんなら、みんなで行くから!!」「応援上映ないの!?」「映画はもう撮り終わった?」「メイキングDVD出てるの!? はいっ、今ポチりました!」とか。「やめろー!!」っていう(笑)。もうホント、悪ノリがスゴいですよ。
- それくらい、声優が実写映画の主演を務めるのは、注目を集めることなんだと思います。
- そうなんですかねぇ。先輩からも後輩からも、びっくりするくらい映画の話題をふられるので、うれしいけど少し困ってます(笑)。

挑戦する前から断るのは、逃げているみたいで嫌なんです
- オファーを受けることに、戸惑いや迷いはありませんでした?
- 最初はちょっとね。やっぱり僕は声優なので。映りでの芝居に自信があるわけではないですし、少しだけ悩みました。でも、実写映画なんてなかなかやる機会もないし、せっかくお誘いをいただいたし、「よろしくお願いします!」と。
不安はもちろんありました。何より「実写で俺が主演かよ!?」っていう(笑)。自分が前面に出ることにまったく抵抗がなかったのかと言われると、それは当然、ありましたね。 - もともと実写作品に出たい気持ちはあったのでしょうか?
- ……というよりかは、基本的に「やりたくない」と言いたくなくて。挑戦する前から断るのは、逃げているみたいで嫌なんです。やらない後悔なら、やって後悔するほうがいい。
30代になってから歌を出したり、新しいことにチャレンジさせてもらううちに、何でもやってみれば、声優の仕事にフィードバックできるのではないか、と思うようになりました。 - どんな経験でもプラスになる、と。
- 自分が苦手だと思うことでも、やってみて新たな才能が見つかることもあるし。「やっぱり苦手だった」と再確認もできるし。自分にはどんな力があって、どんな力がなくて、それを克服するためにはどうすればいいのか、とか、得られるものはあるじゃないですか。
役者も声優も、自分と向き合わなければいけない仕事。自分をより深く知ることは大事だと思います。

アフレコの空き時間を見つけては、セリフを唱えてました
- 本作は、梶尾真治氏の同名SF小説の実写映画化。吹原和彦(下野 紘)は、通勤時に通りかかる花屋で働く蕗 来美子(井桁弘恵)に想いを寄せていたが、突然の事故で、来美子を失ってしまう。吹原は物質を過去に送ることのできる放出機「クロノス・ジョウンター」に乗り込み、来美子を救うために過去に戻る。
- 吹原和彦を演じるにあたって、どんな役作りをされたのでしょう? 普段は、スーツを着る機会もあまりないですよね。
- サラリーマンってどういう感じなんだろうな、って改めて考えました。もちろんバイトでスーツを着ることはありましたけど、サラリーマンでもないし、科学者でもないし、さぁどうしようかと。
- ワイシャツ姿、とても素敵でした。
- ホントですか? よかったです(笑)。でも、この歳だからっていうのはあると思いますね。成人式とかでスーツを着ましたけど、まぁ似合わない!!(笑)しかも、暗めのスーツにダークなシャツっていう組み合わせでね。まだ家に残ってるんじゃないかな、あのスーツ。
- アニメでは10代の役を演じることが多いと思いますが、今回は実年齢に近い役。どちらのほうがやりやすいですか?
- アニメーションのときは、「よし、若く!」っていう気持ちがどこかにあることを考えると、居心地のよさはあったかもしれません。実年齢ともちょっと違って、吹原のほうがもう少し若いですけど。
- 監督によれば「セリフが完璧だった」そうですが、声優のお仕事では通常、台本を持ってマイク前に立たれますよね。セリフを覚える作業は苦じゃなかったですか?
- もう、ほんっとに大変でした(笑)。撮影期間がタイトで。
- 5日間で撮影したと伺いました。
- そうなんですよ。しかもアニメのアフレコが終わったあとに撮影、というスケジュールだったので。空き時間を見つけては、ぶつぶつぶつぶつセリフを唱えてました。なんとか口を慣らさなきゃと、必死でしたね。


普通にしゃべっているのに「声を抑えて」と言われ続けて
- 撮影に入ってみて、いちばん苦労された点は?
- 声優としての芝居の仕方とは発声法が違ったので、そこが一番大変でした。自分としては普通にしゃべっているつもりなんですけど、「周りの人たちのバランスを考えると、もう少し声を抑えていただいて。より素の声でお願いします」と言われて。「これが素なのだけれど、どうしよう」って(笑)。
- リアリティを追求する現場において、声が通りすぎてしまう、ということですか?
- そうみたいです。実写とアニメーションとで、違う発声法が必要なんだなって。吹き替えは吹き替えで、また発声法が違うんですけど。
- たしかにこうした取材の場でも、下野さんの声はめちゃくちゃ聞き取りやすいですよね。ご自身では素の声で話しているつもりでも、作った声のように聞こえてしまうという……。
- そうなんですよ。基本的にしゃべるときは「人に伝えなければいけない」という思いがあるので、妙に響いてしまうのかもしれません。で、すっごい抑えるんですけど「いいのかな、これで」と不安になることも。
あとは表情の作り方。ミュージックビデオで撮ることはありますけど、お芝居となるとまた違うので。走るときの姿とか、いろんな状況で動きを撮られるのも、普段ないことでした。 - 走るシーン、多かったですしね。
- そうなんですよ。速すぎたり遅すぎたりしないように、ちょうどいいスピードで走るのが難しくて。かつ、キレイな走り方ってどうすればいいんだ!?と。
監督からは演出をつけられるというより、「下野さんらしさを出してください」と言われました。「俺らしさって何だ!?」って思いながらも、「自分だったらこういうときにどうするかな」って、すっごく考えながら演じました。 - 来美子のことを考えてニヤニヤしているシーンが可愛かったです。あれも普段の下野さんらしさですか?(笑)
- あれは、素ではないですよ!? いや、やろうと思えば、いくらでもやらしい顔はできるんですけど(笑)。作品のテイストを考えると、やりすぎるとダメだよなぁと思って、ちょっと楽しいことを想像しました。
- 苦労された点をお伺いしましたが、面白かったのはどんなことでしょう?
- なんだろうなぁ……。初めてやることが多かったので、それ自体が本当に面白かったですね。こう映ってるのかな?と想像しながらカメラの向きとか動きを見てやりましたけど、自分が思っていた通りにガチッとハマるところもあれば、全然違うところもあって。勉強になりました。
あとは、夜のおかしなテンションのせいか、走ってるシーンがだんだん楽しくなってきちゃって。「下野さん! 勢いがつきすぎです!」って言われることもありました(笑)。

慣れないラブシーンに、おじさんは固まってました(笑)
- 来美子役の井桁弘恵さんは22歳。下野さんとは17歳差ですね。
- ずいぶんと大人っぽい方でした。「俺、22歳のときこんなに落ち着いてたっけ!?」っていうくらい。
ご本人は緊張していると言ってましたけど、芝居に関してもかなり積極的で。「もっとこうしたほうがいいですか?」っていろんな提案をしてくださって。 - 井桁さんとはどんなお話をして、距離感を縮めていったのでしょう?
- 僕、本当は人見知りなんですけど、人見知りがゆえに、沈黙が嫌でしゃべるタイプなんですよ。
だから何を話したらいいかなって考えて現場に向かったんですけど、結局何ということのない、天気の話から(笑)。 - 最初のシーンが、井桁さんを抱きしめるシーンだったそうですね。
- そうなんですよ、「マジか!?」と。
しかも抱きしめる以前に、そのシーンは映画の最後のほうなんですよ。それを撮影の最初に撮るということにも、「はじめまして」の井桁さんを抱きしめるということにも……すごく緊張しました。 - 緊張しますよねぇ……。
- 抱きしめるなんて、声優の仕事ではありえませんから。あ、声優のイベントで男性を抱きしめることは、なんでだかわからないけどよくありますが(笑)。
ただ井桁さんは慣れたもので。監督から「明確に気持ちをたしかめているわけではないので、和彦からはいけないと思うんです。だから来美子のほうから積極的にいってください」と言われて。
僕は「そうなんだ…」と思って固まっていたんですが、井桁さんは「どういう形にしますか? 上から抱きしめるか、下からこう手を背中にまわしたほうがいいですか?」みたいな。 - 井桁さん、めちゃめちゃ頼りになりますね(笑)。
- 「えぇ、抱きしめるってそんなにバリエーションがあるんですね!?」「あたしゃもう、ドギマギしてるよ!?」「おじさん、慣れてないんだよ!?」と固まってしまいました。
「緊張してるんですか?」って聞かれて、「してます」と答えたら、「どうしてですか?」ってちょっと笑われるっていう。「どうして」って聞かれても、それは慣れてないからだよ!!(笑) - 完成した作品をご覧になった感想は?
- 「慣れてないなぁ、下野さん」っていう(笑)。「みなさんスゴいなぁ、俺は慣れてないなぁ」「もっとがんばらなきゃな」って反省しちゃいました。
- 今後も実写作品に出演したいと思いますか?
- はい。映像に限らず「何かをやりたくない」ということは、僕は一切ありません。もし、またオファーをいただけるのであれば……ですが(笑)。



もしタイムトラベルできるなら、過去or未来どっち?
- では最後に、タイムトラベルがテーマの本作にちなみまして、過去と未来、行くならどっちですか?
- 難しい質問だなぁ。過去に戻ることができるなら、今まで失敗してきたところをフォローしたい。そして過去の自分に「このままだと、ホントにダメになるからね」って忠告したいですね。体力づくりだけはやっておけ、と。
- 体力づくりが必要だと実感するように?
- 最近はとくにそう思います。体力づくりを本格的にするようになってから、余計に。昔の自分だとできなかっただろうな、と思うこともできるようになってきたし。それが自信につながっていきました。
- 具体的に何かされているんですか?
- ジムに通ってたときもあったけど、すぐ行かなくなりました。なので家で筋トレです。基本は腹筋、腕立て、ダンベル。
あとは、移動するときにはなるべく歩いたり。階段かエスカレーターだったら、階段をのぼるようにしています。地元の駅前でちょうどいい長さの階段があるので、そこを2段飛ばし、3段飛ばしで駆けのぼるのは朝の日課です。
やらなくなると、どんどん体が固まってきてしまうので。声にも影響しますし。体を鍛えると息の持ちがよくなるというか、息苦しくなりにくくなるんですよ。 - なるほど。そういうことって、若い頃はあまり気にしないですもんね。
- しなかったですね。未来へ行けるなら、地球最後の日に行きたいです。「このタイミングで終わるぞ」っていうところに行って、戻ってくるっていう。何がきっかけで終わるのか、気になりませんか?(笑)
とはいえ、少なくとも今、自分の中ではけっこう充実しているんですね。なので正直に言うと、どちらにも行きたくはないです(笑)。今が、一番いいですね。

- 下野 紘(しもの・ひろ)
- 4月21日、東京都出身。2001年、声優デビュー。2016年、歌手としてソロデビューも果たす。主な出演作に『うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE』シリーズ(来栖 翔役)、『進撃の巨人』シリーズ(コニー・スプリンガー役)、『弱虫ペダル』シリーズ(鏑木一差役)など。今年はテレビアニメ『鬼滅の刃』(我妻善逸役)、『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(河瀬 篤役)、『不機嫌なモノノケ庵 纏』(司法役)、劇場アニメ『薄暮』、『うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEキングダム』に出演。
映画情報
- 映画『クロノス・ジョウンターの伝説』
- 4月19日(木)シネ・リーブル池袋ほか全国順次ロードショー
- https://www.chronos-jaunter.com/
©2019「クロノス・ジョウンターの伝説」製作委員会
DVD情報
- メイキングDVD
- 『下野紘の軌跡 メイキング・オブ クロノス・ジョウンターの伝説』
- 4月2日(火)発売
- 2,800円(税抜)
- 発・販:株式会社ハピネット
サイン入りポラプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、下野 紘さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) 2019年4月18日
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応募〆切は4/24(水)12:00
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- 2019年4月18日(木)12:00〜4月24日(水)12:00
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- 当選者発表日/4月25日(木)
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