生徒も、甲子園に出ることだけを考えて野球に明け暮れる。親は有望高に子供を入れることに狂奔する。指導者に金銭を渡すことさえある。
要するに、狂っているのである。「甲子園」が学校や子ども、親を狂わせているのだ。

さらにマスコミの「甲子園賛美」も、状況に拍車をかけている。甲子園で活躍する選手を手放しで褒め称え、陳腐極まりない「青春」「汗」「涙」で飾り立てる。
朝日新聞、毎日新聞など大手メディアは、大阪府立桜宮高校の事件報道と同じ熱意で、今回のPL学園の事件を報道すべきだ。その真相を世間に伝えるべきだ。

PL学園が行った「甲子園球児養成システム」は、新興の私立高校が次々と採用した。今、甲子園で活躍している強豪校は、寮をもち、越境の生徒を受け入れ、充実した施設で有望選手を特別扱いして育てるなど、PLと同じことをしている。そのためにPL学園といえども簡単に甲子園に進めなくなってきた。
こういう“ビジネスモデル”を排除しないと、事件はなくならないだろう。野球部寮の廃止、野球部員数の制限、入学特別枠の撤廃。
「甲子園に行けば儲かる」という悪弊を排除すべきだ。

エリート校が苛烈な競争をする一方で、甲子園出場校には「ふつうの高校」も一定数が含まれている。少ない部員数、部費をやりくりし、狭いグランドで練習法を工夫しながら、勝ち抜いてくる学校もなくならないまた、そうした学校から、きらりと光る選手も現れる。
高校野球のスカウトと称する人間の鑑識眼が大したことは無いことの傍証だと思うが、PL学園のような学校がある一方に、こうした学校があることに、希望を見出す。

高校野球を巡る状況は、なんら変わっていない。PL学園がまともな教育機関であるというのなら、野球部を廃部にすべきだろう。

学校、高野連、新聞社などマスコミは、「甲子園」を既得権益化してはいけない。生徒、そして日本の野球のために、勇気をもって改革すべきだ。